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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十二章 『堕ちた神父と血の接吻 ― Die Geschichte des Vampirs ― 著・譚月遊生季』
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読者の特権は背景を勝手に想像する事で、作者の特権は作品の神になる事。

「悪魔の根源という物を知っているかや? なんならあちき、妖怪の根源でもいいでありんすよ?」

 

 文化、風土、現象、気のせい、そしてなんらかの障害や精神病を患った人々。

 ミノタウルスなどは背景を考えると中々にくるものがある。

 色々政治的な問題で神より怒りを買ったミノスという人の奥さんが産んだ子供が頭が牛のミノタウルスだったわけで、化け物なので迷宮に隠したというお話だ。

 人身御供の少年少女を食わせていたとか……歴史研究家は迷宮はここだ! 迷宮なんてない! とかくだらない構想を立てているが、当方のリアリスト達の予想は中々ありそうだ。

 

 ミノタウルスは迷宮ではなく、地下牢など日本でいうところの座敷牢的な物に幽閉されていたのだろう。何故か? 王族であったと考えられるミノタウルス、正直見せられない容姿、あるいは精神状態だったのではないか? 今は人権という物があるが、かつての日本でもそういう人間は穀潰しと呼ばれてすぐに絞められるか隠蔽される。

 人身御供の少年少女達は性処理か動かなくなるまで玩具として与えられていたのか、日本では狐憑きなどと呼ばれ、海外では一括りに悪魔憑きなどと呼ばれる。


「染色体異常や精神病の人はそれがその人の普通なので、一般の普通になる事はねーっすからね。結果として一般の人からすれば治らない症状にしか見えねーっすから今の時代でも稀有な目で見られる事もあるので、それを理解できない物として生まれたのか悪魔や妖怪というのは一番有名な話っすね。そして悪魔払いをする方々はしっかりと人間っすね」

 

 脱線するので、多くは語らないが、精神病は生涯治らない。精神病と自分で言っている人はエセ精神病であり、あれは精神病ではない。正直、実際に見て語ると想像を絶する程にゲシュタルト崩壊を起こす。

 

 さて、欄がこんな話をしたのはテオドーロというキャラクターについて。彼はまさに隣人を愛する事ができる本作二人目の聖書の精神を形にしたような人物であるという事。

 

 神父という徳の高い身分では多くを救えないと判断したらしい。もちろん、神父という象徴的立場にいるだけで人々の支えになれるような人物もいるだろうが、テオドーロという男は、ある種リアリストであり、またロマンティシストの両面を持っている。

 

「ただし、最も美しい物、“普通“に性欲を感じないという部分、彼は世界が歪んで見えているんすかね? 昔、そういうエロゲあったっすね? しかしというべきか、マルティンの造形には不自然は感じねーっすね。この子もめんどくせー女という意味っすけど」

 

 キャラクターの造形という物は正の感情か、負の感情かでできている。こんな人が好きだ。こんな人になりたい、こんな友人が欲しいなど夢想し作り出し、方や、こんな奴は大嫌いだ、関わり合いになりたくない、気持ち悪いという感じで負の感情で生み出される二極端でできている。

 

 前者は主人公やレギュラー、ヴィランなど、後者は大体ヴィランなど敵対する相手でもモブに用いられる事が多い。

 そんな中で、どうしても理想を上げて生み出した時、男性から見て、こんな奴いねーよ! という少女漫画の王子様的キャラクターや、女性から見てこんなビッチやべーだろう! という男子向けに作られたラノベ等のラブコメヒロインに遭遇した際読者は強烈な違和感、あるいは嫌悪感を感じる。

 逆に、読んでいてなんの気にも留めない位自然に入ってくるキャラクターという者も存在する。物語というか、読者の思考に完全に合致している造形とでもいうべきか?

 

 本作で言えば、この修道士マルティンなどが相当する。

 

「マルティンとテオドーロの二人の話は多分、万人受けしやすいのですよ。役割がはっきりしていてすっと入ってくるのです! テオドーロが首を突っ込む型で、マルティンが巻き込まれ型なのです。この話でコンラート神父の兄貴がぶち殺されたという事がわかったわけなのですが、コンラートのジジイを処刑した時に難癖つけて一家全員処刑するという考えはなかったのですかね?」

 

 マフデトが何気に残酷な事を言うが、教会であれ軍警察であれ、疑わしきは罰せよで全員処刑かあるいは収監してしまった方が後が楽ではある。

 

「人間というのは、恐ろしく残虐になれる反面、恐ろしく心弱くもなるでありんすよ。実際の社会主義時代のドイツならやりかねないかもしれないかや、物語である以上、流れという物もありんすな? あるいは、監視対象にはなっていたとか?」

 

 まぁ、一つ当方が本件について補足を入れると、この時期、ステイツの方で疑わしきは罰せよで無実の人々を処刑しまくった事件があった。

 おそらく世界一有名な冤罪事件、セイラム魔女裁判。この話が教会経由で耳に入っていたと仮定するといかにヴァンパイアの血族であれ理由のない処刑に閉口していたのではないか?

 と、本作の作中で一切語られていない話を勝手に想像し説明した当方の歴女がいた。

 物語の読み方は勝手にこういう想像も中々に面白い。

 

「しっかし、接客モードや無くなると、この全然関係ない脱線した話になるのが、ワシら身内やなぁって思うな?」

 

 東京の古書店『ふしぎのくに』、姉妹店のブックカフェ『ふしぎのくに』、そして大阪の古書店『おべりすく』。店舗は違えど、そこの従業員が集まると深読みどころか、書いていない内容まで想像し始める。

 

「作品外考察もいいですが、そろそろ第三章に入りませんか? 私のオフは、本日の午前7時までなのです」

 

 機械の瞳をぱちぱちさせながら次のページを読みたいと自己主張するメジェド。

 

「機械人形がそういうので、ここからは私が朗読してやるのですよ!」

 

 のど飴を舐めながらマフデトが高い声で物語を読み始めた。

 

「新聞で自分の家族の死を知るって、昔はこんな感じだったんすかね? 死に目に会えないってよく言ったもんすよね」

 

 神という存在はどれだけコンラートに試練を与えるのだろうかと、まぁ……この場合の神は作者という事になるのだが、コンラートは兄の死を受け入れながらも、修道女マリアの体の心配をできる程度には神父メンタルが回復している。

 

「コンラートの奴、修道女マリアとの出会いで少しばかり精神的な安定を取り戻したんやろな。このおばちゃん、ほんまええ人やな。読んでて気持ちよくなれる人物像って何気にすごい事やで」

 

 脇役の仕事は主役を引き立てる事なのだが、その脇役の行動や言動で主人公の動かし方をどう決めるのか、今回は修道女マリアとの出会いがコンラート、及びヴィルに安息を与えた。

 当方のペシミストであるレシェフさん曰く。

 

 コンラートとヴィルが最期の時、いくつか思い出せるだけの楽しかった思い出を集める期間なのだと、そういう思い出がいくつかあれば死が二人を分つ時、覚悟できるではないかと縁起の悪い事を語る。

 そう思わせる程に彼女との出会いのシーンは読んでいる側も少し安心できたところがある。

 コンラートとヴィルが身体を重ね、自らを損なわないように一つ一つ暗黒の夜を超えていた日々の中で灯りの付いた暖かい場所を提供してくれたのが修道女マリアだった。

 

「確かにそうでありんすな。年の功とはいつの時代も中々に侮れないものかや。このシーンでヴィルがコンラートは兄だと思っていたという言葉に対して思うところは?」

 

 正直、面倒見の良い神父であったコンラート、弟とはいえ兄でもあったわけだが、ここは難しいところで、面倒見の良い弟や妹もいれば、判断力の乏しい兄や姉もいるわけでその人の育った環境や持った性質によるのだろう。

 統計的には弟や妹の方が要領が良いとは言われているらしいが……。

 

「でも、二人の関係やったらヴィルがアニキやんな?」

 

 アヌさんの一言にしばし笑いが漏れる。

 

「自分的には、ヴィルへの依存。甘えん坊なところが弟なんだろなーって思ったっすよ。妹や弟は下に行けばいく程上の行動を見ていたりするので要領よくなっていく反面、甘えや逆境に弱い傾向にあるっすからね。これが弟や妹はワガママだ! なんて言われる所以っすよ。まぁ、生物としてはそういう意味では後で産まれている方が完成度が高いとも言えるんすけどね」

 

 ヴィルを兄のようだと思う読者はもしかすると弟や妹なのかもしれないし、いやいや彼は紛れもない弟だよ! という方は兄や姉なのかもしれない。

 きのこの山とたけのこの里くらい、兄弟のお互いの主張は半世紀以上平行線を辿っているので読者はどう思うのかは自由であろう。

 

 時計を見ると深夜は3時を回っている。あと二時間もすれば日の出、本日は看板を上げるつもりはないのでここの集まった連中が気の済むまで付き合おうかと汐緒は売り物ではない自分の日本酒を取り出すとグラスになみなみと注いでそれを煽る。

 

「かぁあああ! 今の時代の大吟醸は美味いかや! 仕事後の一杯はとりあえず日本酒に限るでありんすな。おや……誰か来たでありんすな? ちょっと見てくるかや」

 

 一番最初にホラーに遭遇する人物のセリフを残して汐緒はシャッターが閉まった店の入り口へ裏口から回って確認しに行く。

 

 ぎゃああああ! という汐緒の悲鳴に一同に不安が走る。何者かが店内に侵入してきて、大人組は冷静に何が来ているのか待ち、メジェドは既に何者であるか理解したらしく、マフデトのみ牛乳の入ったロックグラスをぎゅっと握り緊張している。

 そして登場する呼ばれざる者。

 

「何か、飯を所望するん! 気づいたら誰もいないん! ジャンジャン持ってくるん! 支払いは欄ちゃんがするんな!」

 

 いつも変わらないおかっぱのゴスロリ、BLフェスタが終わった日にやってきた。日の出までイケメンを愛する少女が参加し最後の読み合いが始まる。

『堕ちた神父と血の接吻 ― Die Geschichte des Vampirs ― 著・譚月遊生季』こちらのご紹介もいよいよ次回が最終回となりました。本作の紹介ミーティングの5月最終におはぎを作ってマフデト兄様とお話をしたのですが、マフデト兄様は少食で2個位しか食べられなく、残りのおはぎを私がほとんど食べてしまいましたよぅ! そろそろ暑くなってきましたので、甘いものを食べてバテないように夏を迎えましょうね!

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