表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十二章 『堕ちた神父と血の接吻 ― Die Geschichte des Vampirs ― 著・譚月遊生季』
107/126

作品で六割伝えたい事が伝われば良い話

「人を追い込むのが人であるように、また人を救うのもまた人でありんすな? コンラートは神父というまさにその任についていたけれど、辛い事があって忘れていたかや」

 

 どこにでも不思議な事に出来た人というのは存在する。修道女マリア、年の功というだけでは説明ができないような人生を送ってきたのかもしれない。

 ヴィルが盗賊であった事も見抜いているかもしれない、またコンラートがどういう存在かも同様に、されど許し……いやこの場合は神に仕える彼女に二人を裁く権利はないと言ってもいいかもしれない。

 聖書の精神を形にしたような修道女である……が、

 

「マリアさん、これがBLだとかそういうの全部抜きにしても死亡フラグ立ちまくりっすね」

 

 そう、こういう作品において善人はあまり救われない。

 何故なら本作において既に絶望している善人が一人いる。そう、本作のみんな大好きコンラー神父である。

 

「まぁ、あれやの。コンラートは現実が見えすぎるタイプなんやろな? これ、一番疲れんねん。まぁ、ワシもそのタイプやけど見えてる物も見ぃひんようにして、臭いもんには蓋する時もある。せやけどコンラートみたいな奴はそういう器用な事できひんねんな? 不器用や!」

 

 面白い事に不器用なコンラートと器用なヴィルの関係は歪ではなく、なるようにハマるようにそうあったのかもしれない。お互いの足りない部分を合わせることで埋まるように、アヌさんの言葉を使うと、ヴィルもある程度現実は見えているように思われるが、彼は分かった上でちょけて見せる。思った事を口にして、コンラートを楽にする。

 

「だからこそ、ウケがいて、セメがあるんじゃないか? まぁ世の中の読者にはアヌバスやバスアヌのようにその役割が変わる事もあると思うが……」

「なんやそれ! ばっすんとワシとかい? 気色悪い事いいなや! まぁ、それはそうと、ヴィルとコンラートの役割はコンラートが人外になってから変わったけどな、最初は幼少のヴィルの怒りや悲しみを受け止めるウケやったけど、今はヴィルの愛を受け止めるウケに変わったもんな」

 

 お互いの人生のどちらが酷な物だったか? と言うのは計り知れないが、多くの人と出会ってきたコンラートの方が失う物が多かったと容易に考えられる。

 そういう意味ではヴィルは借りた物を返している関係とも取れる。

 多くを失った中で残ったのがヴィルだったわけで、そこに依存してしまうのは自明。

 

「それにしても、本作のエクソシストという職業の人はイロモノなんすかね? 一応、悪魔祓いをする時は教会側でも可能でその際には許可がいるんすけど、許可がおりると悪魔祓いの儀式を行うみたいな流れなんすよ。今はパフォーマンス的にそんな事をしている国もあるんすけど、実のところ昔は大変で精神カウンセラー的な感じなんすけど、まぁ大概悪魔つき認定した人は死ぬっすね。本作のエクソシストは悪魔祓いというよりは、化け物殺しを生業にした別業種ってところっすね。今回やってきた人はバイセクシャルなのか、コレクターなのかまぁ、変人っすね。ヴィルさん、嫉妬の炎で激おこぷんぷん丸っすね」

 

 最初と二番目のエクソシストはタイプは違えど化け物殺しを生業にする万人がエクソシストだろうと思われるタイプだったが、今回やってきた男は対物性愛趣向を持ったど変態がやってきた。

 異常な女性好き。

 

「ふふっ、この店のオーナーのトトさんといい勝負をしそうなエクソシストだな。ここにきて緩急を入れてきたが、なにやら飼っているらしい。そして他のエクソシストより教会に属しているような事を語っている。神父らしいからな。今までの二人との差別化もしっかりとできている」

 

 正直な話、また刺客がやってくるのはリアルなのだろう。教会組織のしつこさはいつの時代も変わらない……が、それは現実の話であり、物語的にまたしても命の奪い合いを展開されたら読み疲れる。

 

 またか、という作品に対しての興味が薄れる。要するによくない方のストレスを読者にかけるわけで、雑誌連載などではテコ入れが入るルートに入る。

 そして読者も、またエクソシストがやってきたが、どうやら今回は少し安心して読めそうだという先入観がつく。

 

「このエクソシストの男もなにやら化け物を飼ってるらしいでありんすよ。ネタキャラかと思いきや、展開を裏切られるというパターンもあり得るかや! でもそれはとても良いストレスと言えるでありんすな?」

 

 読み疲れる、所謂飽きたり魅力を感じなくなるストレスと違い、伏線や予想を裏切られる時、こちらも読者にストレスを与える反面、次を読ませる切っ掛けになりやすい。こちらを当方では良いストレスと呼んでいる。

 文章作品は、いかに自分が伝えたい事を飽きさせず興味を持たせ続けて読ませ伝えるかにある。

 伝えたい事の六割程が伝われば万々歳だと思っていいだろう。

 それが、ストーリーが面白いでも、キャラクターが好きでも、なんでもいい。全てを伝える事、読者も全てを読み理解することは不可能である。


 何故なら……

 

「読者と作者は別人やからなぁ。こうして遊びとガス抜きの話を入れる。ここでも二つの読者がおるわな? この拍子抜けの展開、そしてBL作品に高確率で出てくる伊達男、もといチャラ男系の登場。作者と性癖が近い読者は楽しく読めるやろうし、いや。この作品はこうじゃないだろう。もっと暗く貪り合う二人と容赦ない教会のやりとりを読ませろ! とか思う読者もおるやろう。万人ウケする作品は作られへんけど、どっか一つ好きになってくれるところ、読んで理解してくれる事を考えて表現するのが簡単そうで難しいんやで!」

 

 アヌさんは所謂編集系の仕事をされているので、割とこういうところを読む。

 

「テオドーロ、ヴィルの恋のライバル出現なのですか? なんとなくこういう奴が出てくる展開って新章って感じがするのですよ」

 

 お腹いっぱいで、アイスティーにも手をつけずにマフデトがそう言い。店長の汐緒は店内の様子を確認しながら朗読を続ける。次の頁の考察あたりで本日は閉店だなと時計も確認しながら木人とアヌにアイコンタクト。

 

「人の愛と神の愛の違い、皆様は分かりますか?」

 

 機械じかけの腐女子こと、メジェドが店内全員にそう質問する。これは彼女が“愛“という不確定な物へのアンサーを出せないでいるから、友人に“愛“を連呼する少女がいるがメジェドにはもっと多くの愛の情報が欲しかった。

 

 店内にいる同志腐女子達が様々な愛について語ってくれた。そして蘊蓄大先生、欄が一つの解を述べる。

 

「神はなにもしてくれないっすよ。触れてもくれないので清浄と無、人間は業が深いのと比例して愛も深いっすよ。だから汚い部分もあり、その愛の深さは無限大っす。言い換えれば不純と欲。お互いが求め合う事に終わりはねーっすからね。さらに分かり易くいえば、神は見えないし触れない、人は見えるし触れるってところでどうすか?」

 

 当方に駄菓子を貪る神様がいるが、あれは触れることもできるし見えるが、あれは信仰対象になっていないので当てはまらない。

 

 要するに人間から神への愛も神から人間への愛も一方的な片思いに過ぎないといったところだろうか?

 

「コンラート神父はこのタイミングでえらくヴィルにデレるでありんすな? ヴィルは天然なのか理解していない感じかや、でも……なんかあざとさを感じ、かつコンラート神父の方がなんか、馬鹿っぽく感じてしまうのはあちきだけではないでありんすな?」

 

 ぱたむと本を閉じるようにiPadをケースに閉じると汐緒は店内の客を見渡す。大体満場一致と言ったところだろう。

 彼の心情的には、ヴィルを心配し、されど手放してやれない自分との葛藤、まさに頭の上に天使と悪魔がいる古典的な状態に陥っているわけで、気の利いた言葉の一つや二つを出そうとして、これまた不器用なので出てこないと……実に面倒臭い男であり愛らしい。

 婚期を逃したり、意中の相手にここぞの告白ができない人間の心理や心情は案外こんな感じなのかもしれない。

 

「伝えたい事、言っておかなければならない事は言える時に言っておかないと二度と伝えれなくなってしまう。言ってしまえなくなるかや、その後悔は伝えた後や言った後にくる後悔よりも大きくなるのは天の理にもにてるでありんすな? ましてやコンラート神父もヴィルもいつ自分を損なうか分からない状況、ヴィルは拙い語彙力を持ってしてコンラート神父への愛を語るでありんすな? 物語であるという事を差し引けば、目の前にあるパンは今食べてしまわなければなくなるという究極の幼少期時代を生きてきた彼は後悔するという事をしぅているのかもしれないでありんすよ」

 

 閉店を告げるミュージックが店内に流れる。コロナウィルス蔓延時より三時間早い閉店、深々とお辞儀する木人と汐緒、友達相手のように手を振ってお見送りをするアヌ、店内満席だったお客さんも帰って行き、怒涛の1日が終わった。

 

「今日は助かったかや! 二人とも何か一杯作るでありんすよ?」

 

 バーカウンターに入る汐緒に木人はウィンクをしてこう言った。

 

「非常にありがたいが、今から次のバイト先である新聞配達がある。時間までウーバーイーツの配達で時間潰しをするので次回ご馳走になろう。ではお先に失礼する」

 

 神保町のバイト戦士、木人はそう言って次のバイト先へと向かう。いつ寝ているのかは誰にも分からない。カウンター席にドカンとアヌは座ると後ろに並ぶ銘柄を見て注文。

 

「ワシとばっすんのボトルキープ、メーカーズマークのロック、ダブルでもらえるか?」

「自分も便乗でそれをアヌさんの奢りで」

「私も同じものを、アヌさんの奢りで」


 アヌさんの両隣に一度退店して戻ってきた欄とメジェドが座りたかりの如く同じ物を注文する。

 

「マフデトさんもなんか頼みぃ! ワシの奢りやぁ! 続き夜通し話そかぁ!」


 猫みたいな目でマフデトはカウンターに向かってくると汐緒に人差し指を上げて注文。

 

「牛乳、ロックで! ガムシロ付き」

『堕ちた神父と血の接吻 ― Die Geschichte des Vampirs ― 著・譚月遊生季』さて、紹介も後半戦ですね! 皆様はもう読み終われた方もたくさんいますね! 連載物特有の読ませ続ける流れについて今回はご紹介しましたが、万人受けを狙うより、万人に一つでも好きになってくれる要素という考えであればできるかもしれないですね! 次回は、夜ふかししながら皆さんが話明かしますよぅ! 私はどこにいるんでしょうね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ