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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十二章 『堕ちた神父と血の接吻 ― Die Geschichte des Vampirs ― 著・譚月遊生季』
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断言しよう! BLとは国産の文学ジャンルである。

「コンラートが穢れているかどうか、どう思うかや?」

「穢れてるに決まってるのですよ。一番やってはいけない事、殺しをした時点でコンラートは自分と吸血鬼という存在を穢したのです」

 

 世の中、たまに頭悪い方がなぜ人を殺してはいけないのか? 

 という頭の悪い質問をする人がいるが、動物の摂理から外れた人間はルール、法に従う事が生きる事であるとされる。

 まして聖職者であったコンラートがやっちまった感は計り知れない。

 が、自分を殺そうとする相手を殺した時どうなるのか? この法律は一応正当防衛という名で存在するが、証明の難しさと無罪になったその後も殺人をしたという事実は残る。

 要するに、人間の作るルールも人間も不完全なのだ。

 

 しかし、マフデトのように辛辣に考えるBL愛好読者は少ない。穢れているかどうかという言葉はただのパワーワードに過ぎず、人間大概SかMくらいの思考で読んでいる。

 肉体の強靭さに反して心の方は障子紙くらい弱くなったコンラート、甘え、縋る相手としてヴィルがいてそんな二人の様子を読み妄想する事を楽しむ一面もあるのだが、

 

「コンラートめんどくさいやっちゃのぉ! 殺ってもうたなら、神さん、殺しに来たから殺してもたわ! ノーカンでよろしゅう! くらい祈っとけばええねんて! なぁマフデトさん」

「さすがアヌ兄様なのですよ! 殺っちまったもんは仕方ねーのですよ! でもこの状況下におかれてコンラートの奴は本質的な神という物に近付いてるのですよ」

 

 マシュマロの入ったココアをうまそうに飲みながら足をぶらぶらさせているマフデトの突然の魔球にメジェドと欄、そしてアヌは頷き、女性客や木人、店長の汐緒ははてな? という顔を見せる。

 店長の顔を立ててここは木人が質問した。

 

「マフデト、それはどういう意味だ?」

「神とは駄菓子を貪る役立たずの金髪ではねーのですよ。自分の中にある信念のようなやつなのです。自問自答して、コンラートはヴィルとの愛を、自分の立場を受け入れる準備に入ったのですよ。神の試練から許しの段階ってところなのです。タイトル通り、堕ちるところまで行ったら行ったで、新しい信仰神が芽生えるのですよ。案外、コンラートはメンヘラ故かストレスに強ぇ男なのですよ」

 

 ちなみに、コンラート達の逃避行であるが、ヴィルとの会話からあの有名な珍事件が起こったシュツトツガルドあたりにいることになる。お隣のヘッセンに行くと、より危険なので、エルザス地方、黒い森やら棘姫とかで有名な、ドイツからするとフランスとスイスのお隣になり、まぁまぁここも寒い。

 ちなみにご飯はあまり美味しくないとトトさんがおっしゃっておりました。

 コンラートが吸血鬼であるという事を隠せば、神職者であるという身分でどちらかの国に潜り込むことはできるかもしれないが、次に襲ってくるのは彼も言っている通り、人種差別だ。

 人の業は深い。

 

「なるほどなぁ、マフデトさんは賢いなぁ? 一致団結して神に挑もうとすれば塔を壊されて、人種を分けられ、言葉も分けられ、それでも尚人は同じ神を信じ、祈りの対象にしようとするもんなぁ。しかし、ヴィルの異様な腕力は単純に人間水準としての力っちゅー事を証明するシーン侮れんな。これは読者にコンラートが本当に化け物になってしまったという意味と、コンラートが自分が化け物になった事の再確認をしっかりと感じれるで、で次は獣になった者どうしてでちちくり合うと」

 

 この関西弁の男は一体何者だ? という女性客達と目が合うと細い目をさらに細めて軽快にフライパンを振る。

 誰が頼んだのかチキンライスを作るとその上にオムレツを乗せてナイフでスッと切り込みを入れる。オムライスにケチャプで“おべりすく“と自店の宣伝をして注文したお客さんの元へ、手際よく盆に乗せて運ぶ。

 

「はい、おまっとさーん! 本作には絶対でてこーへん、軽そうなワシの特性! オムライスやでぇ!」

「あ、りがとう」

「お楽しみタイムが描写されるかと思ったら、またエクソシストの登場や! 本作は読者にお預けプレイをするのが好きみたいやなぁ?」

 

 アヌがそう言って犬みたいな癖毛を指でツンと触ってカウンターに戻っていくので、女性客はクスクスと笑う。彼も西の古書店『おべりすく』で一応テラーをしていたりする従業員。系列店の楽しませ方は熟知している。

 

 そう、またしてもエクソシスト登場、今回は多分前回とは違い強力なエクソシストなんだろうとひしひしと伝わってくる。

 どうやら教会は色々と人外に対しての戦力を持っているらしい、それ故本作においては政府からも一目置かれているのかもしれない。

 

「十字軍然り、宗教勢力はなかなか目をみはる物だからな。私の、故郷の大陸でも政府を転覆させようとしているのも宗教だからな」

 

 フレアバーテニングをしながら、木人が汐緒の朗読に感想を述べる。マルティンなるエクソシストとの攻防は一応コンラートに軍配が上がる。両者痛み分けと言ったところかもしれないが、超回復があるコンラートと一応普通の人間であるマルティンとなる為実際は分からないが、

 

「マルティンが言うには次々により上位の者が派遣されると言っているでありんすな? 要するにもう逃げられないという宣告かや、自分が死んでも次が来る。数の暴力こそあらゆる組織で一番強く、宗教が得意とする事でありんすよ」

 

 戦争だって突き詰めていけば、国同士の政治問題に巻き込まれ、上手く祖国防衛の信仰心という物に煽られて立ち上がった者達によっておこる政治問題の最終決着方法なのだ。

 ウクライナとロシアの戦争だって今年地上戦が行われてしまったが、実際は八年程前から始まっていたのにメディアは今年の戦争しか取り扱わない。

 日本国民の大半もメディアという数の暴力で先入観を変えてくる宗教に踊らされているのだ。

 

「まぁ、ちょっとやそっと頑丈になった程度のコンラートさんははっきり言って人間っすからね。そりゃ、各地いや、全世界の信徒に狙われるとなればひとたまりもねーっすね。エクソシストの次はクルセイダーでもやってきそうな勢いっすからね……」

 

 エクソシストの武器には何らかの仕掛けを施してあるらしく、コンラートの傷の治りが遅いらしい、前述した鉛中毒の影響なのか、本当に銀の弾丸やら清めた水と塩を足した物が悪魔に通用するのか定かではないが……。

 機械人形メジェドさんの見解を述べると、

 

「教会側、あるいはドイツは吸血鬼または人外に対しての何らかの研究成果を持っているのかもしれないと予想されます。この当時のドイツは間違いなく世界最高の技術を持っていました。パンツァーを戦場に初めて開発出撃させたのもドイツ帝国です。コンラート神父の祖父の件然り研究データを持って、いかにして吸血を破壊するかという邪悪な実験が行われた可能性も考えられます……あと本作はBL作品ですから」

 

 一部のマニアックな人々は拷問による極Sプレイを好む人もいる事だろう。人外のそれも超回復や不死身などの使い勝手が性的表現と恐ろしくマッチしている事は言わずもがな。


「永遠に壊れない玩具やな」

 

 攻めは美形から醜悪な存在、あるいはリアル獣でもいいだろうが……が……

 

「その場合、受けは基本的に一定以上の美形であるというのが前提やんな? まぁ、汚いオッサンが汚いオッサンにそういうプレイするのもほんまのごく一部に需要はあるかもしれへんけど、実際どS系のBLって何か? って言うと耽美的な嗜虐趣向な文学というだけであって綺麗な花愛でるようなもんやねん。綺麗な物は壊したなるってやつやな?」

 

 一応古書店員、そして出版業界で働くアヌは、かつて“やまなし・おちなし・いみなし“と呼ばれたBL作品の一ジャンルに対して文学作品として論を持って話を展開する。

 皿洗いをしながら綺麗に洗えた皿を見て笑うアヌ、そんなアヌを店内の女性客、木人に蘭とメジェドも見つめ考える。

 BLに限らず百合もそうだが同性愛をモチーフにした作品群はどこか後ろめたい何かを引きずる傾向にあるが、文学の一ジャンルであるとアヌが断言するとそれを好きである者からすれば悪くない気持ちにはなる。

 

 正直な話、そこまで考えてBLなんてやらねーよとは思うのだが、書籍畑にいる人たちは様々な方面からアプローチして作品を研究考察する一例だと思ってもらえればいい。

 

 善人である修道女の厚意を受けたコンラートとヴィルは傷の手当てを受けるのだが、そこでコンラートの傷が治っている事を見られたシーンで欄がこう言った。

 

「自分なら吸血鬼だから傷の治りが早い……のではなく、生まれた時からこうなのだとか言って神の加護なのでしょう! とかで丸く収めちまいますけどね。洗脳されている信徒なら一瞬で取り巻きにできるっすよ!」

 

 これが悪人の考え方である。

 そして下の句をマフデトさんが語る。

 

「そうやって信徒集めて、夜な夜な血を吸う相手に困らねぇ生活を送ってるといつしかエクソシストがやってきて欄がぶち殺されて終わりっつーつまらねぇ物語になるのです。コンラートは馬鹿正直だからそういう事考えねーのでしょうよ」

 

 これが神父という人間と世界中で誰かを騙して生きてきた人間との考え方の差であり、宗教という物も教えをしっかりと実践していれば普通に正しい真人間になれる物であるとここで一言記載しておこう。

 

 夜もふけ、営業時間も残り二時間程となる。それでも未だ満席、立ち飲みカウンターも急遽特設されメジェドと欄は他の客に席を譲りそっちに移動する。

 現在のBLジャンルの人気というものは日本で確立され世界中を羽ばたいている。

 そして皆、黒髪おかっぱの彼女がまだやってこないなと頭の片隅で留保しながら次の場面を読み始める汐緒に集中する。

『堕ちた神父と血の接吻 ― Die Geschichte des Vampirs ― 著・譚月遊生季』さて、皆様。読み終わりましたでしょうか? 当方は紹介作品として決定した時に再度読み直し、ミーティング前にも読み、ミーティング時にも読みます。各自ライターさんからいくつか雛形を読み合い形になっていきますよぅ! その際あらゆる分野の方々の意見を勉強させてもらいます。BLという文学ジャンル、深いですねぇ!

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