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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十一章『創造世界の道化英雄《ジェスター・ヒーロー》著・帯来洞主』
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ウチの子は果たして作者をどう思っているか分からないが、終わりよければ全てよし

「もしかして、オボロ・カーズとヒューマンティスの熱量の差も伏線なのですか?」

 

 月の光だけを受けてマフデトの生っ白い肌が妖艶に目立つ。牛のパジャマを着たマフデト、ジンベイザメのパジャマを着た神様、火星人のパジャマを着たハチドリ、お客様用パジャマになぜ火星人という物があるのかは分からないが、皆で雑魚寝しながら作品について語る。

 

「吾輩は……このオボログルマという危険兵器をかつて南の銀河で対処した事があるのだが……」

「あらあら!」

「……ハチドリ、戻ってこい! 確かに本作『創造世界の道化英雄ジェスター・ヒーロー 著・帯来洞主』は一部の世代や考えを持つ者には夢中になれるだろうが、貴様。あまりにも流されやさすぎるぞ! 本作はあくまでWeb小説だの」

「だーかーら! 吾輩は宇宙捜査官である!」

 

 マフデトは可哀想な奴を見る目でハチドリを見つめ、セシャトはただ微笑む。否定はしないが無言であるという事の結果。

 

「まぁ、もう眠くなれば眠るだろうし、今回の“世界の眼“についてまとめを兼ねて語ろうではないか、自分達の生み出したキャラクターに創造主側はどう思われているのか……これは少し皮肉がすぎるとは思わぬか?」

 

 眠る前に新しい情報を頭に入れるのは良いとも言えるが悪くもある。今回、神様、セシャト、マフデトは新章に入るのを我慢して復習の時間とした。

 ちなみに寝る前の読書が趣味の人は相当本を読んできているのだろう。そういう人はガンガン寝る前に読めばいい。なんせ頭に入るのだから、しかし今回はハチドリという読者初心者がいる。

 故に今までの読み直しがいい。

 わかりやすく微睡の中、訓練すれば夢の中で続きを同化できる。

 

「おぉ! 予習も大事だが復習はもっと大事だからな! かなめパイセンが言ってたぞ!」

「おぉ、小岩井かなめか?」

「神様殿、知っているのか?」

「おぉ、私のマブダチの一人だの!」

「ハチドリさん、かなめさんであれば当方にも何年か前に来られましたよ?」

 

 神様とセシャトは今更になり宇宙人、宇宙人と自らが名乗っているハチドリが本物なんじゃという気分になってきた。

 ※小岩井かなめ氏は2018年か2019年の紹介小説の聞き手側キャラクター、興味があれば調べてください。宇宙に旅立っていきました。

 

「誰なのですよー! そんな知らねー奴の話じゃなくて作品の話をするのですよ! 邪神の言う皮肉ってのはなんなのですか?」

「邪神ではなく神様だと言っておろうが! どちらかと言えば貴様の母親の方が地域によっては邪神であろうが……まぁ、あれだの。自分の作品のキャラクターを作者は愛ておる。時にはウチの子とか言いよる連中もおるな」

「とても素敵な事ですよねぇ! 自分の作品を自分が一番大好きな証拠です!」

 

 まぁ、基本的にはそうなのだろう。

 が……

 

「そのウチの子からはどう思われているか分かったものじゃないがの」

 

 本作のように自我を持ち、かつ自分がどういう作品の誰なのかまで知っていたとしたらどうなるだろうか? きっと自分の作ったキャクターだから仲良くなれると思うだろうか? それとも……コンプレックを取り除いた理想の自分(主人公)がコンプレックスだらけの自分(作者)を見て嫌悪しないとも限りらない。

 

 本ライター個人的な意見ではあるが、自分の作品のキャラクターがもし自分に会いにきたとしたら落胆されるだろうと思う。

 

「そういう物なのか? 喜んでお互いハグでもしそうな物だが?」

「ハチドリ、テメェみたいにお気楽な読者ばかりならキャラクターも歪まねーのですよ」

 

 本作のキャラクター設定から考えると、人気や知名度が創造世界の住人に関与するのであれば、アンチという連中の評価もまたキャラクターの形成に左右されるのかもしれない。

 

「不思議な事に作者が良かれと思って力を入れられたキャラクターよりも思いもよらないキャラクターが人気が出たりすると前にお話ししましたよねぇ! スピンオフなどで主人公になったとしたらその方はきっと英雄、ヴィラン共に高次のところにいらっしゃるでしょう! どう考えても現実世界の方々よりも高いところおられ、あらゆるステータスの高い創造物のキャラクターさん達。そんな方々と違いに大きなスパイスを持った方が、本作の主人公・道化英雄こと真城創伍さんです! 彼は真っ白なキャンバスです! まず評価されていませんからね」

「そうなのですよ! さすがセシャト姉様なのですよ!」

「まぁ、そうだの。こやつだけが評価書き換えのユニークスキルを持っていると言っていい」

 

 要するに設定がないのである。ややこしいので創造世界観の中でという事であるが……シロという悪戯好きなドラえもんと責任感がとても強いのび太くんと言ったところだろうか? 創伍単独であるとどうしても限界があるのでシロと言うお助けキャラが創伍に自らの白いキャンバスを描き、描かせることを教えていく。シロだけに……失礼。

 まぁ、メインヒロインの一人の為問題ないとは思うが、この手のキャラクターであるが退場する危険性を孕んでいたりする。

 

「確かに、創伍については謎も多いがなんとなくこういう奴なんだろうなと言う事は分かるのだが、シロに関しては二章まででは何も分からないな! シロが退場すると言うのが吾輩にはいまいち分からないが……そう言う物なのか?」

 

 シロの明確な立ち位置を予測していくと一番ベターな物が幼少期の創伍のイマジナリーフレンドとして創造された完全無欠のキャラクター、創伍の負の感情から生まれたアバター。または創伍が書き記した落書き帳。

 創伍の未来の子供。

 まぁ色々と想像ができるが、いずれにしても別れがやってくる未来しか感じない。役目を終えた時、あるいは創伍にとってシロという存在が必要なくなった時。

 

「創伍が完全な主人公になったときか!」

「まぁ、そう言う事だの。道化英雄はシロとニコイチで成り立つが、もしシロが最初に言っていた創伍を主人公にする願いを叶えてしまったら、いつの日か道化英雄という物が英雄として認知された時、どうなるのかだの。まぁ、個人的には創伍は英雄や主人公なんて肩書きよりもそこにいる人々を取るだろうがな」

「そうしようとして全てを失って闇堕ちするパターンだってあるのですよ!」

 

 真城創伍は普通に見るとやはり物語の登場人物らしくイケメンで割とリア充に思えるが、作品の中の少年キャラクターとしてはベタを煮詰めたような生活をしている。できる限り、どこにでもいる主人公を造形したのだろう。

 いい意味で彼は何もない。なんなら記憶もない。そしてめちゃくちゃ良いやつである。そんな良い奴はすぐに自己犠牲になろうとしやすい反面、他者犠牲を心から嫌がる。

 

 刑事二人が異品に狙われた時なんかが顕著だっただろう。幼馴染のプロレス少女の安否が気になって仕方がない時なんかすくような気持ちになる。

 

「要するに真城創伍がめちゃくちゃ良い男。と言う事なのだろう? 諸君らが言いたいことと言うのは!」

 

 ハチドリが呆れて言うが少し違う。本来物語は主人公中心に動いていく。もちろん創伍もそうなのだが、そのベクトルが違う。主人公を中心に事件に巻き込まれたり、事件に首をつっこんでいくのだが、創伍に関しては全て元々、自分が関わっていた事象であるという事。

 お前のせいで世界滅ぶから、とか言われて責任を感じない人間はまぁ少ないだろう。

 そしてこの作品のタイトルが“創造世界の道化英雄“

 

「この作品は一つの大きなお芝居位、その語り部を行なっている道化師とかであると一体何が本物で何が嘘なのか、織芽や創伍が学校に通っているその世界も実際リアルなのか怪しんでしまう程にな、まぁこのあたりは次の章を明日にでも読むとよかろう!」

 

 神様がそう言って寝ようとした時、ガバッとハチドリが布団から立ち上がった。いちいち大袈裟なのはあのヘカの関係者だからだろうと三人とも驚かない。

 

「どうしたのです? もう寝るのですよ」

「マフデト殿、どうやら吾輩の休暇が終わったらしくてな、迎えの便が早めに到着したらしい!」

 

 夜中であるハズなのに、外が異様に明るい。窓を開けてセシャトは目が点になる。

 

「あらあら! 宇宙飛ぶ円盤ですねぇ!」

「なんだと! むっ、空飛ぶ円盤だの」

 

 マフデトは何を言っているのだと思って外、そして空を眺めて、絵に描いたような空飛ぶ円盤が眩い光を放っているその様子を見て慌てる。

 それにハチドリはとても満足したような表情をする。ほらな! ほら! 吾輩宇宙人だっただろう? と……

 

 そしてハチドリはペンライトのような物を取り出した。

 

「神様殿、セシャト殿、マフデト殿。実に世話になった! とても『創造世界の道化英雄ジェスター・ヒーロー 著・帯来洞主』は楽しかったぞ! ヘカ殿に会えなかったのは残念だが……そろそろお別れの時間がきたようだ! これを見てほしい!」

 

 ペンライトをピカっと光らせる。そして少し悲しい顔をしてハチドリは荷物を持って古書店『ふしぎのくに』を出た。

 

 しばらくしてから、神様は片目を開ける。そして同じく片目を開けているセシャトとマフデトと目があった。

 

「貴様ら、目を瞑ったか?」

「えぇ」

「当然なのですよ」

 

 きっとあのペンライトは記憶を消したりするようなベタベタな装置だったのだろう。

 

「まさか、ハチドリの奴。本当に宇宙人だったとはな……というかまさかあんなベタな記憶抹消装置に引っかかる奴がこの令和の時代にいると思うのか」

「…………」

「あらあら、では私たちは『創造世界の道化英雄ジェスター・ヒーロー 著・帯来洞主』の第三章を明日の朝にお話し、しましょうか!」

『創造世界の道化英雄ジェスター・ヒーロー 著・帯来洞主』今回を持って本作のご紹介を一旦終了させていただきます。今月ご紹介の作品はいかがだったでしょうか? こちらですが、5、6年近く前に連載が開始された作品となります。そうは思えない程に斬新で面白いと思いませんか? 創作活動の姿勢として帯来洞主さんは非常に見習う部分が多くあると思います。この場を借りて、『ふしぎのくに』一同御礼を申し上げます! 一ヶ月間ありがとうございました!

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