表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

twist

ここは?

俺は事務所で心臓を撃たれたんじゃなかったか。

胸を触るが血の跡はおろか、服に穴も空いていなかった。

辺りを見回すとシネマで見たようなオリエンタルテイストな建物が並んだ一本道だ。

山沿いにかなり遠くまで続いており、山頂に鳥居が見えた。

ここに居てはいけない。鳥居を目指さなければならないと思い足を進めた。


1時間ほど黙々と進むがまったく人気が無く、だがなぜか誰かに見られている様な薄気味悪さがあった。

振り返れば確実に登っている実感があるのが唯一の救いだった。

所々に筆記体らしきなにかが書いてあるが読めない。


更に1時間ほど歩いてやっと山頂に辿りついた。

鳥居をくぐると中には一軒の赤い木造の家らしき建物があった。

左側には手を洗うらしき所、右側には紐にたくさんの紙が縛られている。

正面の玄関上部には太い縄が結んで飾ってあり、神聖な雰囲気を醸し出していた。


おれは夢を見ているのかと思い、腕をつねってみるが痛みはある。

だが、こんな状況はありえないと常識で知っている。

やはりここに居てはいけないと強く思い、建物の中に入った。


畳張りの部屋があり、先に進むには襖を開けないといけなかった。

恐る恐る開ける(止めろ)と更に部屋と襖があり、慎重に進んでいった。

先に進むほど焦燥感が募り、胸を焦がしている。

段々警戒心が薄れ、また奥に求めるモノがいるという確信が襖を開ける(ダメだ)動作を乱暴にし、歩みを早くさせる。


7部屋目の襖を開け(止めてくれ!)、終わりが無いんじゃないかと思い始め、

8部屋目の襖を開けると女が居た。


大きな二重の目、小ぶりでふっくらとした唇をした少女だった。

長い白銀の髪を後ろに結び、巫女服に身を包んでいる美しい女だ。


俺はこの女を知っている。俺が最後に話し、俺を殺した女だ。

姿形は多少違っているが確信した。そして俺は気づいてたはずだ。

ここに居てはいけないんじゃない。ここに来ては行けなかったんだ。

なぜ来てしまった?俺がずっと行くなと言っていたじゃないか。わからない。


恐怖に固まる俺に少女は語りかける。


「運が悪かったね。中途半端な才能で野心なんか描くからこんな事になるんだ。せめておやつ位には腹の足しになっておくれよ」

「ああああああああああああああぁあぁぁぁ!」


俺は震える足に活を入れる様に叫び、一目散に来た道を駆け戻った。

おかしい。こんなに部屋は広かったか。襖は開け放って来たはずだ、なぜ閉まっている!

なんとか最初の部屋へ戻り外に飛び出し、背後を振り返ると少女は不自然に蠢いていた。

まるで少女の皮を被ったなにかが飛び出してくるように…


その想像はその通りになった。

少女の頭を突き破り天井をも突き破らんと、蛇のような何かが飛び出した。

しかもそれは1匹ではなかった。


「いいいいいいいいいいいいいいいいいぃいぃぃぃい!」

もはや何を叫んでるのかわからないが、とにかく声を出さないと走れないと思った。

なんとか階段を駆け下っていると奇妙な、擬音を発声している様な声が背後から聞こえ、

走りながら背後を確認すると巨大な蛇が迫ってきていた。


「かぶかぶかぶかぶかぶかぶかぶ」

「ふざけるんじゃねえええええええぇぇ!」


俺の懸命なダッシュを嘲笑うかの様に右腕を噛みつかれ、そのまま空中に放り投げられた。

なんとか状況を把握しようと首を振ると、巨大ななにかが見えた。あれはまるで…


「ドラゴン」


そして俺は一つの頭に食われた。






俺達は白い空間にいた。

一緒に仕事をしている仲間も居たし、全然知らない奴もいた。

体を動かそうにも動かず、声も出なかった。

だが思考は働いていて、なぜか昔の事を思い出していた。


いつも一緒に遊んでいた友達とテーマパークに行った事。その友達が俺の初恋の子と付き合った事。その友達をいじめた事。初恋の子を寝取った事。社会に出て上司に褒められた事。その上司の娘と婚約し彼女を捨てた事。上司の不正の証拠を入手し追い落とした事。独立してからもすべてが思うように動き、全能感に酔った事。


これまでの人生の様々な悪事が思い出されては消えて行った。

思い出が消えていくと同時に消化されているかのように体の輪郭が保てなくなってきた。


その内に空間の中心部分にある捻じれに吸い込まれていった。

そうなると俺の知らないオレの思い出も頭に入っては消えていく。

様々なオレの私の儂の僕の俺の思い出が混ざっていき…


「ご馳走様でした。」

耳元で誰かの声が聞こえた気がした。


そして俺も白くなった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ