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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

昆虫系

私の愛しい肉の揺りかご

作者: アロエ



きらきらと輝く翠玉のドレスで身を装った女は己の華奢な体よりも大きな男の手を取り指を絡めながら笑んだ。



「あなた、あなたがいいわ。あなた、(わたくし)の子を産んで下さらない?」


「………………」



その鼓膜を甘く揺らす魅惑的な声に自分がどう答えたか、覚えていない。






そして気付くと見知らぬ部屋にいた。ずきんと頭と胸が鈍く痛み思わず手をやるが傷はどこにも見られない。……いや、注射針を刺されたような小さな微かな傷口が一つ痣になったかのように褐色の肌の上に存在していた。


酒に酔ってやばい薬でもやってしまったのだろうか。しかし手足ではなく胸部だとかそんな場所に注射などするだろうか。そんな風に思いながら体を起こし、とりあえず何か食えるものでもないかと探し回る。幸いにしてパンが見つかり何もつけずにそれを齧りながら今度は水を求めて彷徨う。なかなか見つからず暫し時間を要した為、口の中がパサパサになって咳き込んだがとりあえずは見つけた為に一気に飲み込み息を吐く。


部屋を彷徨って気付いたが扉も窓も外から閉められているようだ。全く、どこに迷い込んできたんだ俺は。先程夢に見た女が鍵になりそうではあるが、記憶が朧な事から俺がただ単に欲求不満な為に見た都合のいい理想の女との線も十分にあり得る。


あんな派手な外見の女、ここらではなかなかお目にかかれない部類だ。胸は心許なかったが、俺のように地べたを這いつくばるような生活とは無縁そうな高貴な身分の令嬢を淑女らしく調教するってのも乙だ。そう考えれば一度くらいああいった女に手を出すのもいい。


どうせ独り身の気ままな生活を送ってきた男だ。別にここに長く居ようとも特に心配をかける家族もいない。今はそれが逆に俺の首を絞めるがな。誰も俺がいなくなった事に気付かない、と言う事はつまり誰も俺をここから助け出す存在がいないという事に他ならない。



「下手したら女どうこうの前に死ぬまでここに……なんてな」



乾いた笑い声をあげるがマジで洒落にならねえ。がしがしと苛立ち頭を掻き、フケが落ちるのも構わない。これだから女にモテねえとも仲間や兄弟は言うが、知るかそんなもの。



「仕方ねえ。何か扉開けるものでもねえか探すか」



工具の一つや二つ、このだだっ広い部屋ならどこかにあんだろう。そう思いつつ家具を漁る。キャビネット、サイドチェスト、ソファにテーブル、椅子。トイレや風呂等は備わってないがいよいよになればゴミ箱か隅にテーブルクロスでも丸めて受け皿に用をし済ませられる。当然、日数が経てば臭いが恐ろしいことになるが。いずれにせよどの程度ここに缶詰状態になるかにもよるな。


食糧と水が心許ないのが少し不安ではあるも元より底辺暮らしで下手物にも空腹にもそれなりに慣れている。


そうと決まれば下手な知恵を回すのも止めだ。体力もなるべく温存するに限る。


ソファに再び身を横たえ眠ろうかとして腹がぐるぐると唸るような感覚を覚える。おいおい冗談キツいぞ。ここで腹を下すか。何とか抑えようと腹を上から押さえて先程の都合よく見つけたパンのせいかと遅まきながら自分の行動に後悔して何秒か、いや何分か。祈りが通じたのか次第に痛みも薄れて息を吐き出す。


危ねえ危ねえ。盛大に部屋を汚すところだった。


ぐおおおおお……言ってる側からまた腹痛くなってんじゃねえぞチクショウ!


と、数回痛みの波が襲い引いてと繰り返し段々とおかしいと気付き始める。これは、恐らく下痢じゃねえ。



「がああああ……っ、くっそ、ふざけんなッ!チクショウ、チクショウが!」



ああ、薄々そんな気がしてたさ、俺の悪運もここまでだ。一体いつやられた。いつこれを仕込まれた。()で俺の腸食ってる奴がいるんだ。どうやっても逃られるわけがない。


ゲーゲーと食ったもんを吐く。鼻に、気管に逆流したものがいって更に苦しむ。だが泣いても喚いても膨れ上がる違和感と痛みは止むことは無い。気分は最悪だ。死まで秒読みじゃねえか。



「う゛、っぐ……、殺、すなら、もっと、マシなやり方ってもんがあるだろうが」



そりゃ俺の人生まともかどうかなんて聞かれたらまともじゃねえなって答えが返ってくるだろう。厄介者、嫌われものそんな役どころだ。だが俺だって好き好んでこう生れた訳じゃない。くそ、走馬灯とかいうやつか?んなもんいらねえから楽にしてくれ、頼むから。


ミチミチミチと体の中で何かが繊維を裂く音と感覚がある。もう呻きすら出せずに俺はただ悶絶して目を見開いてされるがままだ。








「まぁまぁ、私の子どもたち!」



翠玉のドレスを着た女性は同じような色のドレスや洋服を身に纏った少年少女を出迎える。愛しげな眼差しはとても男を狙い、閉じ込めていたとは思えない母たるものだ。


母として子らを確認した彼女は最後に開かれた扉をくぐり、命尽きた男のもとへと向かう。腹がズタズタに裂けた哀れな姿を何とも思わず、少し汗臭い額に顔を寄せると軽く唇を乗せた。



「有り難う、あなたが私の子ども達の揺りかごとなってくれたから皆元気に生まれたわ。本当に感謝してもしきれない事よ。……そろそろ行かなくては。じゃあね、色男さん。もし今度会えたなら、女性に声をかける時はきちんと見極めなきゃ駄目よ」



するりと頬を撫でて今度は様々なもので汚れた口に口付けを一つ残す。そうして踵を返すと彼女は優雅な足運びで子ども達を連れて姿を消した。



話の都合上、参考にした虫の習性を少し変えている部分がありますのでご了承下さいませ。


寄生蜂には面倒見てた花壇の幼虫をやられてしまい悔しい思いが込み上げた時もありました。小学生くらいの時だったかな。まぁ本来は害虫を退治してくれる益虫なんですが。


ジュエルワスプ、これも好きな虫さんです。検索すると大体台所などで遭遇しやすい有名な黒いあの方も一緒に出てくるので閲覧注意して下さい

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