第41話 Call
名前を呼ぶ声に、ジェシカの意識が浮上し、重いまぶたをゆっくりとこじ開けた。
ぼやけて徐々に焦点の合ってきた視界の向こうから三つの知った顔が覗きこんでいる。
「ジェシカねぇちゃん大丈夫?」
ラングが心配そうに尋ねた。
大丈夫、と言おうとしてジェシカは激しく咳き込み、背中の痛みに呻き声をあげた。
泣きはらした顔のアリー・メイスンがオロオロとしながらジェシカの髪をなでる。
「動かないでください! レヴィ、お水を……」
レヴィは首から下げていた水筒をジャバっとジェシカの顔にかけた。
「うえっ、うぷ! ゲホゲホ! 殺す気か!!」
「ああ! 違うのレヴィ! そういう意味じゃなくて……」
「でも、げんきになった」
「ここどこだ……?」
街はずれの河の土手だ、他にも逃げてきた街の住人が何十人もいた。
「何、なんであたしこんな所にいるの? だって火事で……先生は?」
どこにも見慣れた赤毛の姿が無い、一緒だった筈なのに。
「薬をとりにいくって」
口を尖らせてラングが言った。
「俺たち、早めに逃げたんだけど、やっぱり先生が心配で探しに行ったんだ、そしたら先生がジェシカねえちゃんをひきづってて、頼むっていわれて、ここまで頑張ってひきづってたら、この人が……」
アリーが泣きはらした顔でうなづいた。
「家が襲われて……、変な人に助けてもらってたら、中途半端なところで置き去りにされてたところに、この子たちがジェシカさんを運んでいるのを見つけて」
「おもかった」
レヴィが神妙な顔つきで言った。
「ねえちゃん、もうちょっと痩せたほうがいいぜ」
「うるっせ……いっ!」
起き上がると、背中がズキリと痛んだ。
顔をしかめながら、背中に腕を回すと、ざらついた生地が包帯として巻かれていることに気づく。
ロザリタの白衣だ。
「あの、バカ医者……」
立ち上がろうとする巨体を三人は一斉に止めた。
ラングが怒ってさけぶ。
「動くなって!」
「じゃあココに怪我人をつれてきな!」
アリーがギョッとする。
「で、でも……」
「先生は薬をとりにいっちまったんだろ?! じゃあ、あたしがやることは、患者をあの人に渡すことだ!」
頼まれなくたってそうしてやる。
そして、今度こそ思い知らせてやるのだ。
ロザリタ・コフレドールには、自分が必要なのだと。




