第27.5話 I didn’t mean that.
乱暴に、縫合を終えたロザリタは深く息を吐いた。
「……お互い、人助けなんざコリゴリだな……? 女先生」
荒く息を吐きながら、オスメニヤが皮肉に笑う。
「喋らないで、じきに痛み止めが効いてきますから……眠ってください」
「朝になったら街をでろ、ヤツらドンパチはじめる気だ……アンタに、なにかあっちゃぁ、死んだ女房に殺されちまう……」
半年前に亡くなったオスメニヤの妻は、肺の病気でこの世を去った。
最期まで見捨てずに手を尽くしてくれたのはロザリタだけだ。
「大丈夫ですよ」
オスメニヤをベッドに寝かしたロザリタは、死んでいるスキンヘッドの男をズリズリと引きずって、裏庭に運で、汚れたシーツで彼を包んでやった。
空には月がかかっていて、東の空のまぶたはまだとじたまま。
(葬儀屋に連絡を……あと、薬……)
やることがたくさんある、抗争が始まるのなら、あらゆる物資をかき集めておかないと、間に合わない。
(いえ、私さえ……しっかりしていればそもそも)
グルグルと診療所のなかを徘徊しながら、必要なものを確認していると、不意に窓に映る自分の姿に気がついた。
「酷い顔……」
疲れきって、涙のあともそのまま。
おまけに血が白衣のところどころにこびりついていて、お世辞にも絶対綺麗とは言えない。
「花なんて、似合うはずない……」
華やかな薔薇なんてなおさら。
目頭が熱くなって、涙がとめどなく流れていく。
(泣きたくなんてないのに……)
他のやりかたを知らない。
感情の傷口が縫合できない。
彼から貰った花を綺麗だと思った。
(とても嬉しかったのに……)
小さな花弁を揺らして、その色がまるで彼のようだと思った。
『僕を助けてくれてありがとう』
自分を大事にしてほしいと願った。
生きて欲しいと、でもーー
「こんな事を、望んだわけじゃない……」
『明日も生きて先生に逢いたい……だから、それを邪魔するモノをすべて滅ぼそうと思う』
そんな事を言わせたかったわけじゃない。
窓の向こうに浮かぶ月を見上げて、ロザリタはひとり、泣き崩れた。




