F3000レース
門をくぐると、そこには受付があり、そこで目的地への切符を買うことになる。モータースポーツアイランドへの切符は9540ヌーベル(天国での通貨単位)であった。そして、その切符を係員にチェックしてもらうのだが・・・
そこで思わぬ遭遇があった。
「切符を拝見いたします」 切符を差し出したセナは、係員の「正体」に気づいた。「ヴィルヌーヴさんじゃないですか!」
「おお、アイルトンじゃないか!どうしてここに?」
「それは、イモラで事故って・・・って、そうじゃなくて!なんでまたあなたも、切符の受付員やってるんですか?」
「イベントだよ。天国に来て最初の頃、この列車の運転手をやったことがあって、その誼で招かれたってワケだ」
「そうですか。で、僕たちの乗る電車は?」
「そこに書いてある。16時10分発、レズモ新幹線「銀傘・山波」9号。18時40分着だ。」
「ちなみに、この3と3分の1番線というのは・・?」
「ああ。どうやらここの社長が某魔法小説に衝撃を受けたらしい。そんなことより急げ。発車はもうすぐだぞ。」
見てみると、時計は16時5分。まずい!セナはラッツェンバーガーと共に、「3と3分の1」番線にむけて猛然と走り出した。
「まもなく、3と3分の1番線の電車が発車いたします。」鳴り響くアナウンス。セナとラッツェンバーガーはすんでのところで列車に乗り込んだ。
幸い、忘れ物もなく、やっと胸をなでおろした。ガッタン、ガッタン。プラットホームを離れていく列車の窓から、セナは思いにふける。
これから先、僕達はどうなっていくんだろう。また、レースの世界に行けるんだろうか。僕達の目指す場所には、どんな人、どんな街、どんな風景が待っているのだろう。
ああ、日が暮れる。車窓から眺める夕焼けは、美しく、希望に満ちているようで、なお且つ無常を感じさせるように沈もうとしている。
じっと窓の外を眺めているうちに、時間は18時30分になろうとしていた。セナは隣で舟をこいでいるラッツェンバーガーを起こし、降りる準備をする。
「モータースポーツアイランド、モータースポーツアイランドでございます。お降りの際は、足下にご注意下さい。」
「いよいよだな。」
「いよいよですね・・!」
ついにセナ達は、新しい世界に足を踏み入れたのである。 「モータースポーツアイランド 入り口」と書かれた門の向こうには、マンションや一軒家が立ち並び、いかにも「普通の町」という感じがした。そして、門には門番がついており、切符を見せると、通してくれた。驚いたのは、
門番がカルロス・パーチェ(インテルラゴス・サーキットの正式名称に名づけられたドライバー)だったことである。
そして何より驚いたことには、各々が自分の家に大なり小なり、自分の車を走らせるサーキットを持っていたことである。
それはさておき、セナとラッツェンバーガーは、晴れて互いの住所を確保し、仕事も見つかった。
セナは国際F3000の、ラッツェンバーガーはイギリスF3のドライバーである。
そしてセナの住居は、インテルタウンの3の9、「エクセレンツハウス・マクラーレン」、ラッツェンバーガーはモンツァカントリーの「ユーハイム・ザクスピード」ということである。両者のもらった書類の中には、「天国の掟」というものもあった。
1、決して人間界に、人間の姿で現れないこと。
2、決して道にゴミを捨てないこと。(路面コンディションの悪化などを防ぐため)
3、F1マシンの公道走行を許可する。
というものであった。
ただし、幽霊姿ならば人間界に降りて、知人と話すのもよい。と書いてあった。
それから、セナは近くの「フォーミュラカー・ドライブクラブ」でフォーミュラカーに乗った。
そして、いよいよレース当日。セナは素晴らしい走りを見せてポールポジション、隣にはヨッヘン・リント。70年のチャンピオンである。
フォーメーションラップも終わり、レースが始まろうとしていた。
シグナルがレッドからグリーンに変わり、音速の貴公子の天国初レースの幕が切って落とされた。
1コーナーにはセナが先に飛び込んでいった。
セナは独走態勢に入り、15周の段階で2位との差は30秒に。
39周目にはタイヤ交換も済ませ、トップでコースに戻ることに成功した。
一方レースは荒れ始め、29周目にはリントがエンジンブローでリタイア。
レース残り5周の時点では、残っているマシンは僅か8台というサバイバル・レースになった。
しかしセナは終始完璧な走りを見せ、遂にファイナルラップに入った。
1コーナー、シケイン。1速に落とし、右に左に曲がっていく。
2コーナー、高速カーブ。6速で駆け抜けていく。
そして、長いバックストレート。7速全開、350kmで風の様に突っ走っていく。
3コーナー、ヘアピン。レースでのパッシング・ポイントでもある。2速で慎重に曲がっていく。
そして最終コーナーは、バンクのついた高速コーナー。一気に立ち上がり、ゴールへ向かう。
そして遂に、歓喜のチェッカーフラッグ!
セナにとっては、93年、マクラーレン・フォードを駆りオーストラリアGPを制したとき以来の「チェッカーフラッグ」であった。
かなりグダグダ感がありましたが、何とか見ていただけるレベルの作品になったと思っています。なにとぞ評価をお願いします。