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蠱毒の鬼 -シンギュラリティオブオーガ-  作者: 高美濃四間
第七章 教団決戦
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葛藤

 それから一週間が過ぎた。

 辺りの景色が薄暗くなってきた頃、人ひとり住んでいない放棄された田舎町で悲鳴が上がった。


「――救出対象を確認。急接近する獣鬼たちを駆逐します」


 淡々と言い放った蒼は田舎町の上空から急降下する。そして、着地点にいる獣鬼一体の首を着地と同時に刎ね、その横にいた獣鬼の胸を振り向きざまに貫く。

 すぐに辺りを見渡すと、他の個体が怯え後ずさる避難民に襲い掛かろうとしていた。バーニアを噴射していては間に合わないと判断し、ブーツの側面から数回噴射。瞬く間に獣鬼の背後へ迫った蒼は、腰から内蔵のコンバットナイフを抜き獣鬼の横顔面から突き刺した。そのまま横へと押しのける。


「ひっ、ひぃぃぃ……」


 獣鬼の返り血を浴びた気弱そうな中年男性が尻餅をついた。その後ろには十数人の老若男女がいる。彼らは体を震わせ顔を恐怖に歪めながらも、その場から動こうとしない。

 蒼は彼らに背を向け言った。


「全員、そこから動かないでください」


「――蒼!」


 上空から叫び声が響いたと同時に、一般人たちの周囲を歩いていた獣鬼たちへ銃弾の雨が降り注いだ。すぐにアンドレと千里、そして技術五班の新班長である竜道が降り立つ。


「蒼くん! 危険だから単独で突っ込んだりしないで!」


 珍しく千里が感情的になり蒼へ詰め寄った。蒼は複雑そうに眉を寄せ彼女から目を逸らす。千里は陣形を乱したことに対して怒っているのではなく、蒼の身を心配しているのだと分かってはいたが、蒼にはそれが悔しかった。

 蒼がなにも言わずに目を逸らした直後、銃声が鳴り響きアンドレがインカム越しにささやいた。


「お二人さん、今は話してる場合じゃなさそうだぜ」


「その通りだ。俺が左側面、アンドレが後方、鈴宮が右側面、蒼が前方の敵を排除しろ!」


「「了解」」


 蒼も遅れて返事をし、獣鬼へと迷いなく斬り込んでいった。

 

 今回、技術五班が助けたのは鬼敬教の教徒たちだった。教祖の郷田が新潟の中心地『審脳しんのう』を占拠して以降、全国各地の教徒たちが審脳へと向かっていた。彼らは獣鬼の活性化する夜だろうと関係なく、人のいない町を転々としながらゆっくりと進んでいた。彼らは鬼を崇め、鬼化を救いとする者たち。故に、獣鬼と遭遇するのもまた運命と考えている。もちろん、貴重な人類をむざむざ獣鬼の餌食にするわけにもいかないムサシ側は、周辺巡視を強化し教徒たちを発見しては保護していた。

 あとはどうにか説得……拠点によっては暴力による屈服や人質をとることによって、彼らを教団へ渡さないようにしていた。


「――おい蒼、さっきのはなんだ? なんで勝手に突っ込んでいったりしたんだよ」


 甲柴の拠点へ帰還後、蒼はアンドレに詰め寄られていた。会議室で五班のミーティングを終えた直後だ。竜道と鈴宮も真剣な表情で蒼をじっと見ている。

 蒼は感情を抑えるように声を震わせながら答える。


「あの人たちを助けるには必要でした」


「だからって、お前がやられちまったら元も子もないだろうが」


「その通りです。なんのためのチームだと思ってるの。あんなことをしていたらすぐに――」


「――やられませんよ。俺は絶対に」


 蒼がムキになって言い返す。アンドレと鈴宮は表情を硬くし沈黙。今にも喧嘩が始まりそうなピリピリとした雰囲気の中、竜道がやれやれと彼らの間に入る。


「蒼の気持ちも分かるよ。俺もよく勝手に動いてはそのときの班長に怒られていたからね。それでも俺を側においてくれたのは翼ぐらいさ」


 竜道が急にしんみりとした雰囲気で語り始めた。彼も単独行動で力を発揮できる実力者だ。蒼に共感できるのも頷ける。とはいえ、それを他の班員に理解しろというのも酷である。


「竜道さん、そんなこと言っても仕方ないでしょう。蒼は、あんたとは違ってまだまだ新米だ。無茶させるには早いですよ」


「っ! ……俺の心配なんて、いりませんよっ!」


「あっ、蒼くん!?」


 蒼は悔しそうに顔をぐしゃっと歪め、会議室から出ていった。


「難しいお年頃だなぁ」


「あいつがなに考えてんのか、さっぱり分かんねぇ……」


 竜道は苦笑しアンドレは首を傾げ、蒼の出て行った入口扉を見つめていた。

 鈴宮は僅かに柳眉を逆立て扉へと歩いていく。


「あの子は繊細なんです。もう少し言葉に注意しないと……」


 それは後ろの二人に言っているようで、自分に言い聞かせているようでもあった。

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