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蠱毒の鬼 -シンギュラリティオブオーガ-  作者: 高美濃四間
第六章 新型の脅威
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強奪

 湯芽林に続いて蒼が会議室に入ると、既に他の課員たちが揃っていた。縦長の白い部屋で長机が前から綺麗に並べられ、奥には大きめのスクリーンがある。最前列には技術課、武装補修課、調査課らの課長や副長に、この拠点の支社長、次長と、そうそうたる顔ぶれが席に着いていた。緊張感ある場のはずだが、戦闘員たちはざわついていた。

 蒼はその異様な空気に息苦しさを覚えながらも席に着き、置いてあった資料に目を通す。


「……新型、鬼穿?」


 その資料は、新型鬼穿についての取扱や構造、仕様などについてまとめられたものだった。蒼はようやく周囲の落ち着きのなさの原因が分かった。

 湯芽林と蒼の着席を確認した調査課の主任が立ち上がる。


「それでは皆様お揃いのようですので、ミーティングを始めます。まず、お手元の資料についてですが、新型鬼穿とは本部がある目的のために極秘に開発を進めていたものです。すべての検査を終え、後は実戦配備と量産を進めるのみでした」


 会場がざわつく。「そんなの聞いていないぞ!」という心の声が聞こえてくるようだ。蒼も驚きはしたがは、この状況下においても新兵器開発の余力を残しているムサシに、頼もしさを感じていた。


(人類はまだまだ戦えるんだ)


 蒼は微かに頬を緩めながら拳を握る。


「で、この鬼穿は隣県の群馬中央部にある工場で保管されていましたが……今から三十分ほど前に『強奪』されました。三機とも」


 その場にいたほとんどが絶句し、途端に静まり返る。


「犯人は傭兵の三人組です。この三機の試験運用を行うために雇われた者たちですが、最後の最後に裏切られました。彼らは施設に侵入後、警備員や整備士たちを殺害したのち、新型鬼穿『大蛇』、『鬼童』、『阿修羅』を奪取し逃走。今は北上し、新潟の研究施設へ向かっているものと予想されます。彼らの目的は不明ですが、新潟の研究施設では新型鬼穿の量産が検討されており、それらの整備体制も整っています」


 調査課の主任は現状の説明を終えると、スクリーン横の席に戻り武装補修課の副長へマイクを手渡した。


「バカなっ! 獣鬼と戦うための貴重な戦力が、こんなことで散らされるだと?」


 呟いたのは技術課長だった。筋肉質な初老の男は、いつも自信に満ちた顔で指示をだしていたが、今は顔を憤怒に歪め拳を強く握りしめていた。まるでその身に熱気を宿しているかのようだ。周囲の管理職、特別管理職の人間たちも一様に険しい顔で腕を組んでいる。

 小柄ながらに筋肉の鎧を纏った武装補修課・副長が、スクリーンの前に立ち新型鬼穿について説明を始めた。


「まずは『大蛇』についてです。これは殲滅力を持たせるために『大型のガトリング砲』を装備しています。かなりの重量ですが、これによって鬼穿の特徴である機動性を落とさないよう、バーニアも大型化しており、ガトリング砲内蔵の操作器によって掃射と推力走行を並行して行うことができます。こいつの銃口にはくれぐれも注意してください。次に『鬼童』です。これは突破力を持たせるために噴射機構付の大型鉄球を装備しています。手元の操作器と鉄球を高強度のケーブルで繋ぎ、各方向に設けられた噴射口によって自由自在に操ることができるのです。これには高い貫通力を誇る『トゲ』が付いているので、くれぐれも近づかないでください。最後に『阿修羅』です。これは機動力を持たせるため、高出力の大型バーニアに換装しています。近接戦闘メインで設計されているために、銃などの中長距離武装はありません。ただ、逆手持ちの双剣は操作器にもなっており、柄のボタンを押すことでバーニアが噴射。それも、右の剣が右のバーニア、左の剣が左のバーニアと連動しているために、片噴射で高速旋回、両噴射で前進加速というように接近戦は無類の強さを誇ります。しっかりと距離をとった戦闘を心がけてください」


 武装の概要については終わった。少ない説明ではあったが、新型鬼穿の性能はとんでもなかった。他の戦闘員たちや上層部も苦い表情で頭を抱えている。本来であれば、人類が獣鬼を倒すために使われるものだ。無理もない。

 蒼には勝てるイメージが湧かなかった。今まで経験したことのない戦いになる。相手はガトリング、有線式誘導兵器、高機動力と、戦術すらも検討されていない武装を有しており、どれだけの被害を被るのか不安で仕方ない。

 最後に、技術課統括班の主任が作戦の説明を始めた。


「北上中の敵は群馬北部に展開する技術課運用班により足止めをしているところです。各班は奴らの背後から追いかけるのではなく、新潟の南部へ回り込んでください。我々が配置についてから、群馬勢が敵をあえて素通しし後ろから追いかけます。そして、我々との挟み撃ちにするのです。新型鬼穿は極力綺麗な状態で回収したいとの本部からの通達ですが、最悪の場合は損傷させても構いません。ただ、犯人の傭兵は一人以上は生け捕りにしてください。出撃は十分後、事態は一刻を争います。各位、ご武運を」


 現時点を以って、新型鬼穿の奪還作戦が開始された。

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