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蠱毒の鬼 -シンギュラリティオブオーガ-  作者: 高美濃四間
第五章 意志を継ぐ者たち
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飛鳥の生き残り

 警備会社『ムサシ』。生物災害以前は大手の民間企業として名を馳せていた。今では様々な組織と統合し、『国家防災局』お抱えの国防組織となった。かつては小グループによって秘密裏に獣鬼を排除していたが、組織統合を機に『生物災害対策本部』を設置し、組織の全戦力をもって獣鬼の排除に当たっている。

 その部の中に、獣鬼対策のプロとして特別対策グループ『飛鳥あすか』が設置されていた。その本拠地はここ、『山梨県』の南西にある街『即鉄そくてつ』のとあるビル。山梨周辺地域の統括という役割を持つ山梨中央支社の三階に居室があった。そのグループ員は十数名程度だが、本部の中でも特別強い権限を持っている。

 G長である『成田清悟』は会議室で部下の報告を聞いていた。年齢は四十七歳。オールバックに厳つい表情を崩さず、その鍛え抜かれた肉体もあり歴戦の戦士という迫力がある。その会議室は比較的小さい部屋で少人数による密談に向いていた。

 長机の奥に座っている清悟の向かいに立つ男は『萱野かやの』。『飛鳥』の課長だ。主に極秘調査や作戦立案等の指揮をとっている。五十一歳の初老の紳士で、その白と黒の入り混じった髪は短く体は痩せ細っており、高い知性を感じさせる鋭い眼差しが知能派の雰囲気を醸し出している。


「……調査の結果は?」


「『大山志郎』についてですが――彼は三年前に『死んでいた』ようです」


「なに?」


 萱野は努めて冷静に報告したが、清悟は信じられないというように目を見開き立ち上がった。


「彼は三年前、山口の最西端にある砂浜に打ち上げられていたそうです。DNA鑑定の結果、大山志郎と判明しましたが、彼は生物災害より前から九州で行方不明になっており、九州が陥落した今では珍しくもないために話題にも上がらなかったそうです」


「そうか……大山先生の推理が外れたとは思いたくないが……」


 清悟は重苦しい表情で溜息をつき肩を落とす。今回の調査は大山が最後に残したメッセージを元に、清悟が急遽指示したものだった。

 数ヵ月前、大山は原因不明の研究室爆発で死んだ。だが、その直前に清悟へとメールを送っていたのだ。『オニノトキシン』を生み出した黒幕『大山志郎』について。そのメールの内容は途切れ途切れで、かろうじて彼の息子の大山志郎が黒幕だということだけが分かった。本文を打とうとした直後に何者かから襲われたであろうことは想像に難くない。


「しかし、大山先生が亡くなった直後に獣鬼たちが活発化したことは偶然だと思えません」


「それは私も同じ意見だ。で、あれば……大山志郎の研究は何者かに乗っ取られたか」


 清悟が険しい表情で顎に手を当て呟いた。萱野も同じ考えらしく、清悟の目を見ながら黙って頷く。


「獣鬼の活発化が黒幕判明によるものではなかったとしても、重要な繋がりがあるに違いない。引き続き彼の研究について調査を進めてくれ。それと、例の作戦についても並行して頼む」


「承知いたしました。例の作戦については順調です。もう間もなく準備が完了するかと」


 萱野は報告を終え、会議室を出た。


「大山先生の犠牲があってやっとこれか……だが、私が生きているうちに必ず決着をつけてみせる」


 清悟は目をギラギと光らせながら人知れず呟いた。

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