78話.後悔と決断
クロムが足を踏み入れた先はいつもの拠点の光景とは異なっていた。
そこは5メートル四方の立方体というべきの狭い空間であり、大きな氷像が立っているだけの空間であった。
氷像の前まで歩み寄ったクロムは、その氷像を解凍し始めた。
次第に氷像の中より何かが姿を現し始め、やがてその全貌が露わになる。
出てきたのはミツルであった。
ミツルの最後の神速の突撃に対してクロムが行ったことの結果、ミツルはこの空間にて氷像とされていたのであった。
あの瞬間のミツルはクロムに突撃する以外の選択肢を奪われていた。
それを自覚していたミツルは神速の突撃という手段で対抗していたのであった。
しかしそうなるように誘導していたクロムは、自分の目の前に不可視のルームの入り口を設置していたのである。
その結果が氷像となる未来であった。
解凍したとはいえ、全身に重度の凍傷を負い瀕死となっているミツルは動くことすらままならない状態であったが、クロムは躊躇うことなくその両手両足を切断した。
そして、声にならない声が響く空間内にてクロムは会話できる程度までミツルを回復するのであった。
「よぉ、ミツルさんよ。
お前は俺の仲間を無残に殺した……」
「あぁ……」
「だから死んではもらうがその前にいくつかの質問に答えてもらう」
クロムの問いに無言で抵抗するミツル。
しかし回復魔術の使い手であるクロム相手にそれは苦しみの時間が延びるだけの悪手であった。
やがてミツルに全ての問いの答えを言わせたクロムはアキナの元に戻り、ミツルがいる空間を圧縮し消滅させたのである。
これによりミツルという存在は肉体も魂も全てが消え去ることとなった。
アキナの元に戻ったクロムは深い怒りと絶望から何も言葉を発することもできずに、ただアキナの隣に座りこむのだった。
そんなクロムに対してアキナは何かを言うわけでもなく、無言のままただきつく抱きしめるのであった。
「……アキナ」
「今は黙ってていいよ。
ただ、私のそばにいてよ……」
何も考えたくないクロムはアキナのそんな優しさに包まれて、その心地よさに流されそうになっていた。
よくわからないまま始まった異世界生活、このままアキナと二人でひっそり暮らすでいいんじゃないかと。
しかし仲間たちの姿が脳裏をよぎり、逃げそうになっている自分の心を引き締めるのであった。
「ありがとうな、アキナ。
俺はこれからもずっと一緒にいるよ、ただ今はやるべきことが残ってる……」
「クロム……」
「今からみんなに今回のことを全部伝えるから、悪いけどギンたちも含めて全員をルーム内に集めてもらえるか?」
クロムの願いを聞き入れたアキナはみんなを集めるべく行動を開始した。
クロムはそんなアキナの後ろ姿を茫然と眺めるのであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
続々とルーム内の拠点の広場に集まる仲間たち。
幹部以外の竜人族たちや鬼族たちも含めて全員が集合し、クロムの登場を待っていた。
そしてそこにクロムがゆっくりとやってくるのであった。
「みんな、急に集まってくれてありがとうな。
どうしても全員に伝えたいこと、謝罪と宣言…… を伝えたいと思っている」
クロムがそう語り始めると、広場が一気に静けさと緊張感に包まれるのだった。
なぜならクロムの表情が今まで見せたことのないくらいに真剣で深刻なものであったからである。
「最初に謝罪……
ソイソとソルトが死んだ……
これは俺の油断と慢心と力不足…… それらの結果だ、本当にすまない……」
頭を垂れ、項垂れながら大粒の涙を零す。
集まった仲間たちは、そんなクロムの姿に衝撃を受けながらもその話の内容を受け止めていくのだった。
「でも……
もう絶対に誰も死なせない!!
そのためにも、力を磨きながらこのまま王都ダインに向かい獣王ダインを倒す!」
さっきまでとは打って変わって力強い口調での宣言とその宣言の内容に驚きを隠せずにいる仲間たち。
しかしクロムはそのことを気に留めることもなく言葉を続ける。
「ダイン獣王国は実力至上主義が行き過ぎている国だ。
国王になんて興味はないが、俺が絶対の強者となってこの国に君臨する。
それが俺が俺の守りたいものを守るための方針だ!」
そんなクロムの宣言を聞いた仲間たちは歓喜の声を上げるのであった。
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