95話.交わらぬ想い
優しい笑顔で向き合うクロムとバロン。
アキナはこの状況にこのまま和解に向けた一歩を踏み出すのかという考えが脳裏を過った。
だが、そんな想いが現実となることはなく……
クロムとバロンの表情は徐々に曇ってゆき、いつしか二人の放つ殺気がこの場を支配する状況へと変貌していたのだった。
「バロンさん、話せて楽しかったよ」
「私も楽しかったですよ。
しかし…… そろそろ本題を…… ですね」
「望ましい展開ではないけど……
ただ、予想通りではあるし、お互いに引けない想いがあるからね」
「そうですね、そしてそれが交わらないことははっきりとしてしまいましたね。
ただ……
個人的にはあなたに興味があります、ですから……
1:1の決闘で勝敗を決めませんか? 負けたほうはそのままこの場から撤退するということで如何でしょうか?」
「数で不利なのは俺たちだからね、それは願ってもないことだけど……
最初からずっと殺気全開の守護騎士さんたちはそれで納得するのか?」
「悪魔の主従関係は絶対なのですよ、たとえ主が死んだとしてもね。
なので、私がこう約束している以上この子たちが手を出すことはありませんよ」
クロムが持つ悪魔への知識は前世からのものしかないが、悪魔とは契約が全てであり契約を違えることはあり得ないというイメージや知識と一致しており、バロンの言葉は素直に腑に落ちるものであった。
「その提案をありがたく受け入れるけど、場所は変えよう。
この街を破壊するのは、どちらの意図にも反すると思うしね。
…… アキナは俺のことを見守っていてくれ」
「クロム……」
クロムはアキナの手を取ると、バロンからの返事を待たずに先ほどギンが立ち止まった小高い丘を目指して歩き始めた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
丘まで到着したクロムとバロン。
互いに背後からアキナ、守護騎士たちに見守られている二人は静かに対峙するのであった。
「それでは…… はじめましょうか」
「そうだな」
クロムの返事に笑みで答えたバロンは腰に携えた長剣を抜き、左手をクロムに対して突き出すような構えを見せた。
二人の間を突風が吹き抜けたその瞬間、バロンはクロムの目の前には居らずにクロムの頭上から長剣を振り下ろしていた。
そしてその刃がクロムの頭を捉えると思われた時、クロムはバロンの背後から姿を現すのだった。
「甘いよ!」
クロムはそう言いながら、無数の氷の杭をバロンの背後より放った。
クロムを斬るべく放った斬撃を空振りさせている最中のバロンには回避が間に合うようなタイミングではなかった。
しかしバロンが氷の杭を被弾することはなかった……
なぜなら被弾するかと思われた時、バロンはその姿を完全に消し去ったからであった。
「まさかそんなことまでできるとは思わなかったよ、バロンさん」
クロムが驚嘆を言葉にすると、バロンはクロムの背後にゆっくりと姿を現した。
「それはこちらの言葉ですよ……
あなたは本当に人族…… なのですか?」
「たぶんそうだと思うよ
そんなことより……
バロンさん、あなたの本来の戦闘スタイルって隠密タイプですよね?
なぜ真正面から攻撃をするのですか?」
「あははは、やはり気づかれてしまいましたか。
確かに私の本来のスタイルは隠密、暗殺を得意とする悪魔です」
クロムの指摘に驚いた様子を見せるバロンであったが、特に隠すことも否定することもなく、クロムの指摘を肯定するのであった。
そんなバロンのことがクロムは嫌いではなかった。
「私は自分が気に入った相手、認めた相手と決闘する場合、必ず正面からのぶつかり合いをすることに決めているのですよ。
気に入った相手を暗殺で殺すというのは、私の美学に反するのです」
クロムはバロンが優雅な見た目とは裏腹の脳筋な発想をもっていることを意外に思ったが、それ自体は嫌いではない。
嫌いではないが、真剣勝負としては気にいらなかった。
「その考え方を理解はするし、嫌いじゃない発想ではあるけど……
自分の本来のスタイルと真逆である正面からのぶつかり合いとか……
なめすぎだよ」
落ち着いた口調で淡々と告げるクロムは、ものすごい殺気をバロンに向けて放っていた。
「気にいったもの同士が闘わないといけないならさ、一切の遠慮なく得意なスタイルで100%の力で相手を殺しにいくのが礼儀なんじゃないか?」
クロムの殺気を正面から受け止めながらその言葉を聞いていたバロンは、不敵な笑みを浮かべていた。
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