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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

選挙

作者: 木本 六人

軽く読めるショートショートです。

そういう作品をちょこちょこ載せていければと思っています!

インド洋の外れにポツンと浮かぶ芥子粒のような大きさのルジョング島では、今まさに全島民を挙げて初めての大統領選挙が行われようとしていた。 

 

 

候補者の3名は、これまで第二次世界大戦はおろか世の中の戦争という戦争に少しも影響される事のなかった、謂わば世界から置き去りにされたような時間が流れるルジョング島に人が始めて足を踏み入れて以来、ずっと村オサを排出しているンディカ家の長男ンドガ氏と、四男ンドュバ氏と五男シュビドュバ氏であり、いまや総勢48人の島民すべてがンディカ家の縁戚の者である事から、選挙は否応なく家庭内で行われる様相となった。 

 

 

選挙運動とはすなわち家族の人気取りであり、順当にいけば家長で長男のンドガ氏有利となる筈なのだが、島で一番太っているンドガ氏がまだ幼少の頃、各自に分配されたタロイモの量をめぐり次男のンダビュ氏と口論した次の日、不幸にもンダビュ氏が島唯一の入り江ダバダバ湾で謎の水死体となって発見されるという事件があった。

それ以来なぜかどうも家族からの信頼を失ったようで、その後も食べ物についての諍いには必ず絡む食い意地のはった長男を疎ましく思っている家族が多数を占めている為、状況は芳しくない。 

 

 

四男のンドュバ氏は島の原始宗教の絶対的指導者であり、年若を差し引いても肩書き的には最も初代大統領に近い存在の筈だったのだが、去年の暮れの大漁祈願の祈祷の際、祭壇の火を誤って母屋に誤って燃え移らせ、全焼した母屋から両親をはじめ、当時の島民の約半数近くの42人の焼死体が発見されるという大惨事を引き起こした。

本人はいたって気にする様子もなく元気だが島の者の彼を見る目は厳しい。 

 

 

五男のシュビドュバ氏は島一番のハンサムで、島の女性全員と関係を持っている。

島の過半数を超える女性票だけ集めても当選は間違いない筈であったのだが、3ヶ月前ニッパ椰子の下で島一番の美しい娘とまぐわっていた所を洗濯帰りの彼女の二人の姉に目撃され、その後姉妹三人がお互いを刺し貫くという猟奇事件に発展した為、少なくなった島の人口の約6%がさらに失われた。

いまだに島の女性全員と関係はあるものの、心は通い合わない冷たい空気が流れている。 

 

 

島民全員が文盲の為、選挙の公平を期す意味もあり長男支持者はバナナを、四男支持者は椰子を、五男支持の場合ヤシガニを投票箱に入れる事となったが、投票方法を決める会議の時に島にはヤシガニが48匹もいないと言う五男の主張は無視された。 

 

 

いよいよ、島のオキテにより3日間厳重に封印された投票箱を開ける時がきた。 

 

 

島の長老オイル氏の監視のもと、開けられた投票箱を見て島の連中は頭を抱えた。 

 

 

なぜなら、そこにはヤシガニによってバラバラにされ原形をとどめていない椰子の実と、死んだヤシガニ、さらに黒くドロドロになったバナナが混ざり合った、何が何やらわからないグチャグチャの混合物があったからだ。 

 

 

投票結果をどう判断していいか判らない島民たちは持ち前の楽観主義も手伝って、とりあえず選挙を延期する事とし、投票箱の中身を全て大きな鍋に入れ各自持ち寄った食材と一緒にグツグツと煮込み、そこにさらに島特産のサトウキビで作った地酒などが加わり、全島民飲めや食らえの大騒ぎで大宴会を始めた。 

 

 


次の日、投票場改め宴会場となった島の広場には、食中毒で死亡した48人の島民が折り重なり、ルジョング島は420年ぶりに無人島となった・・・。

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