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一話:私は生きていて、でも壊れ始めていた

『■■■か■認■■開始■■■了■■』

『■象■■罪、【暴食】』

『sぃ#”‘+kax.<nusiぉiw?*__asa|usぇdwijw&$%tadrqgsahb』


『ほんのわずかばかりのじごくへようこそ』


 ほんの僅かばかりの浮遊感を感じ、しかしすぐに背中に何かが当たる感触がある、口を開け、大きく息を吸い込む、肺に空気が満たされていくのが分かった、そして僅かに鼻腔を擽るような木の香りが周囲に広がっていた、ここは森の中、だろう。

 目を開いた。途端に視界に入り込む光、それは僅かに暖かく、慣れていない瞳孔が痛むのにずっと目を開けていたいと思ってしまった。

 これが、光。

 もたれ掛かっている木の、地上に隆起した根に手を掛け、立ち上がる、少しだけ体がよろめくが後ろにあった木の幹に手を当て、体を支えた。

 体を起こし動かす知識があっても、赤子の体から急に十七、八くらいの少女の体になったのだからこれは仕方が無いだろう、しかしこれは早く慣れなければならない。

 ……私は生きている。

 現に呼吸を行い、脳に酸素を送り、様々な内臓と心臓を動かし、全身に血液を運ぶことで生きている。

 五感もしっかり機能しているであろう、掌に感じるざらざらとした木の皮の感触と、木々の間を抜け、私の頬を撫でる湿気を含んだ風が心地良い。

 他者が確認するまでも無く、私は生きていた。


「これが、生きている、か」


 いつの間にか呟いていた、そんな自分に不思議と口角が吊り上った。

 私は嬉しいと思っている、これが、嬉しい、ということだった。

 私の頭を撫でる皺だらけで、しかしとても強く優しい何かをもっていた老人の掌が思考の海に浮かび、やはり、嬉しくなった。

 木の幹から手を離し、未だにふらつく体をなんとか正し、自分の掌を見る、あの掌の様に皺も強く優しい何かも無い、白く柔らかい女性らしい掌だった。

 そんな自分の掌を見て、少しだけ、虚しくなって、それから、あの掌の様な、強さと優しさが自分にもあったら、なんて思った自分が居た。

 要するに、私は羨ましいと思っていた。

 何故だかまた、少しだけ、嬉しくなった、色んな感情を経験しているからだろうか。


「うん、これから、だね」


 私は掌を強く握り込み、拳をつくる、こうすれば気合が入るという知識があったからだ。

 恐らく入っただろう気合を糧に、さぁ歩き出そうと握り拳に落としていた視線を上げて――

 槍の様な武器を大きく振りかぶり、私を貫かんとする全身に鎧を纏った何かが居た。


「――っ!?」

『【■■崩壊】、開始』


 一切の音も、気配も無く現れたその鎧の襲撃は、あまりにも唐突であったが故に、


「ぁっ――」

『【暴食】及び、■■■■、開放開始』


 未だに慣れきっていない体では、回避することなどできる筈も無く、


「――」

『k#akdーdn$sj_nefid!!!」


 槍が的確に急所を貫き、破壊する


『まだじごくははじまったばかり』

 ―――ことはなかった。



「こんな所で、死ねない、死んでたまるか」


 自然と口が動いて、言葉を紡ぐ。

 あぁ、その通りだ、死ぬにはまだ、早すぎる。

 急所である心臓に狙いを定め、今にも突き出されるだろうその鋭利な穂先が、酷くゆっくりと動いているように見えた、私は咄嗟に体を槍の攻撃から逸らそうとして、ゆっくり動いていた筈の穂先が――

 消えた――

 私の動体視力を軽く超越した速度で突き出された穂先が、すぐ後ろの木に突き刺さり、木片を撒き散らす。

 私は更に嫌な予感を感じ、しゃがみ込みながら地面を全力で蹴り、前転――

 まるで台風のような暴風圧が、私の体を塵屑のように吹き飛ばした、そして吹き飛ばされた方向にあった木に背中からぶつかる、衝撃が全身に行き渡り、肺から空気が抜ける、しかし意識は途切れることは無く、私は呼吸を整えながら、何とか立ち上がり、鎧がいるほうを見て、自然と息を呑んでいた。

 鎧が槍を薙ぎ払ったその先にあった筈の木々は穂先が触れてすらいないにも関わらず、幹の半ばから折れ、抉れ、千切れた根の残骸がのぞく地面に、無残に転がっていた。

 背中に嫌な汗が流れ、悪寒が全身を走り抜ける、回避し損ねていたらどうなっていたか――

 私は咄嗟に頭を振り、悪い思考を振り払う。


「私は生きるんだ」

 

 呼吸もすでに整ってきていた、さっき吹き飛ばされたお陰で、鎧とは距離が開いていた。


「逃げるなら、今しかない……!」


 まさに好機だった、いくらなんでもあの鎧を倒せるとは思えない、故に逃げの一択だった。

 鎧に背を向け、全力で地面を蹴り、木々の間を抜けていく、まともに呼吸が出来ず苦しくなるが、そんなことは気に留めている余裕は無かった。


―――ォォオ………


 ふと、唸り声のような音が聞こえた、私はつい、顔をその音が聞こえてきた方へ向けて――


―――ォォオオオオオオオ!!


 ――鎧が投擲したであろう槍が、一直線に私を貫かんと迫ってきて、背中に突き刺さ――


 いつの間にか私は木にぶつかり密着していた、前方不注意というやつだ―――

 そんな訳があるか、ある筈など無い、現実逃避をしている暇など無いだろう。

 下腹部に感じる熱と激痛、どろりとした何かが、腹を伝って流れ落ちていく。

 木を押し、動こうとするが、上半身は一切動かなかった、足は地面に着いておらず、木と密着しているせいで胸が圧迫され、呼吸がうまくできない、私を背中から貫いた槍は貫通し、磔刑にするように、私と木を縫い付けていた。

 体が痙攣を起こす、木を押していた腕には力が入らなくなり、震え始めた全身は、自分でも分かるくらいにとても冷たかった。

 死ぬ、死ぬのか、私は、死ぬ?

 いやだ、いやだ、私はまだ、一時間も生きていないのに、いやだ、いやだ、いやだ。

 ――嫌だ。


はい、狸親父です。

さて、早速瀕死です、地獄です、はい。

とりあえず今日は一気に二話分投稿して、終わりです。

二話分できたら投稿するって感じでいいですかね?ってこれ書き溜めの意味……

まぁ、これからも頑張りますからね!

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