プロローグ:赤子の死
「ごめんね」
そんなこえがきこえたきがした
今、生まれて数ヶ月程しか経っていない赤子の、命が終わりを迎えた。
狭く、冷たく、暗い何処かへ閉じ込められ、不安と空腹に苛まれ、何時も傍にいてくれた母を求めて泣き叫び、しかし母は来ることは無く、もはや泣くことすら出来なくなったその赤子の最期は、哀しい静寂に支配されていた。
そんな赤子に同情した者達がいた。
『死んでしまった』と言えば同じであるが、歩んだ道は全く異なる者達はその赤子にこう言った。
ながい時を過ごした博識な老人は言う、
「私の知識を君にあげよう、これは君が生きていく中できっと役に立つ」
何故、と赤子は老人に問う、
「なに、気にすることなど無い、私は君よりもずっとながく生き、やりたい事をやれた、故に幸せであった
し悔いなど無かった、君にもやりたいと思ったことをやってほしいだけさ」
そう言って、老人は微笑みを浮かべながら、赤子の頭を優しく撫でた。
とある普通の少女は言う、
「私の体をあなたにあげる、健康ってことくらいしか取り得なんて無いけど、とにかく健康だよ!」
何故、と赤子は少女に問う、
「え?何で私の体をあなたにあげるのかってこと?」
「う~ん、私ってさ、後悔することいっぱいあったと思う、でもさ、それ以上に幸せだったもん、家族も友達も親友だって居た、けど、あなたには家族すら無かったように思えて……まぁ、とにかくさ、あなたも私みたいに、後悔した以上に幸せだって思えるようになってほしかったんだ、えへへ、なんか恥ずかしいね」
そう言って、少女は満面の笑みを浮かべると、赤子をぎゅっと抱きしめた。
生まれ持った病のせいで外に出ることすら出来なかった男は言う、
「僕の決して途切れることの無かった意識を、君が最期を迎えるそのときも、誰かの温もりを傍で感じられ
るように」
何故、と赤子は男に問う、
「ん、いや、別に君の意識を僕の意識で乗っ取るとかじゃないよ?」
何故、と赤子は男に問う、
「ん~?あぁ、そう言うことか、うん、僕はね、生まれてから死ぬまで一度も外に出たことが無いし、自分の足で歩いたことも無かった、君もだろう?でもね、二十四時間ずっとではないけどね、いつも誰かが僕の傍にいてくれたんだ、それは家族がほとんどだけど、看護師さん達だとか、お医者さんも僕の寝てるベットの近くに来て、手を握っていてくれたり、話しかけてくれたりね、最期は、とっても苦しかったけど、皆、傍にいてくれて、温かくて、嬉しくて、幸せだった、だから、君も最期まで幸せであってほしい」
そう言って、男は笑っているのか泣いているのか判らない、けれど、とても幸せそうな優しい顔で、赤子の小さな手を自らの掌で優しく包み込んだ。
■■■■は言った、
「あまりにも不幸だった君に、新たな人生を、しかし、新たな人生を歩み始めても、君は様々な困難に見舞われるだろう、そして、その先は君次第だ」
何故、と赤子は問う。
「はは、好奇心旺盛だね」
「なあに、至極簡単なことさ、チャンスを与えられることすらなかった君にチャンスをあげたんだ、ね?とっても分かり易いだろう?さ、そろそろ行かなければならないよ」
そう言って、■■■■は赤子に手を振った。
「いってらっしゃい」
どうも、はじめまして?おはこんばんちは、狸親父です。
さて、前から書いているものをほっぽりだしての投稿でありますが、まぁうん、そこらへんはどうでもいい、かな?
新しく書きたいから書いた、そんな感じ、不定期になると思うけど書き溜めしていく感じでやっていきます。