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天の瞬き

作者: CLONE

街角に彼女を待つぼくがいた。

でも約束の時間が過ぎても彼女は現れない。

人がどんどん通り過ぎていく。

ケイタイが鳴る。

「ごめんなさい、やはり行けないよ」と彼女の声。

それから沈黙が続く。いつまで続くのかこの沈黙は。

やがて彼女のすすり泣きがケイタイの向こうから聞こえる。

「わかったよ、もういいよ、きみはきみのままでいいよ」。

「ごめんなさい、ごめんなさい、」と言う彼女の声。

電話の向こうで早くケイタイ切るように言っている誰かの声が聞こえる。

ぼくは「一人で行くけど、また、会えるさ」と言う。

本当はこれが最後でもう会えないことはわかっていたけどそう言ってしまった。

再び「ごめんなさい、ごめんなさい、」と言う彼女の声。

「じゃあ、切るよ、元気でね、すぐに連絡するから」と言って切った。

ぼくは一人で地下通路から歩道に出る。

夜空はすんでいて満天のこぼれんばかりの星のせいか外は異様に明るかった。

星に導かれるようにぼくはしばらく独りでさまようように歩いていた。

彼女のことがぼくの脳裏に静かに流れ去って行った。

街の方へもどっていくと今夜北に向かう最後の夜行バスがまさに出ようとしていた。

これから一人遠いところへと旅たつ。この街ともお別れ。

バスに乗客は少なかったが。ぼくは身を隠すように隅の窓側の席に座った。

バスが走り出すと車内の明かりが消え車窓を通して星が見えた。

北斗七星がバスを追いかけて来るように見えた。

ありがとう。きみはそののままがいいよ。ぼくはそれをもう一度言いたかった。

そして、あの時から気が遠くなるような時が過ぎたが、

あの日の夜のように今夜も星は光っている。北斗七星も見えた。

彼女を待って最後にケイタイしたこの場所に立ったとき

どこかの子供が置き忘れたのでしょうか、小さな小熊のぬいぐるみがチョコンと置いてありました。

置き忘れた小熊を見ていたら、彼女もこんな小熊のぬいぐるみが好きで部屋に置いていたのを思い出した。

帰り際に夜空を見上げるといつもは肉眼ではみえにくい5等星のアルコルが2重星としてミザールのそばに認識できた。

彼女もあの星のようにかすかに光ながらもいつまでもぼくのそばにいてくれているような気がした。

今日までありがとう。彼女に逢いたいけど。ぼくは小熊ぬいぐるみをベンチに置くと家路についた。


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