表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある話達  作者: 都築肇
1/4

ある男の話

これは、ある男の話である。


名前はあるが、特に必要性を感じないので述べないでおく。年齢も同様だ。


冴えない男であった。生まれた時から現在まで、男には起伏というものがなかった。


喧嘩をしたことがないのは、友人がいないからだったし、失恋をしたことがないのは、告白したことがないからで、受験に失敗したことがないのは、そもそも受験したことがないからだ。


成功はないが失敗もない。人生がバランス理論で成り立つならば、失敗も成功も経験している者と何一つ変わるまい。


いやむしろ、成功者と呼ばれる人間は若いときにたくさんの失敗をしてきたと言っているし、そもそも成功者の呼ばれる人間がわずかなことを考えると、おそらく人間は失敗の方が多い。


よって自分は正しいことをしている。何もしていないのでやってはいないのだが正しい存在だろう。


だがまあ、これは当然の帰結であるが、男は何か引っかかるものも感じていた。


これだけ合理的に幸せを追求しているのに、自分は何を考えあぐねているのだろうか。ああそうだ、これは味気なさだ。物足りなさだ。


自分が何もしないということは、他人に何もされない。何もされないということは、自分は他人にとってなんでもない。存在ですらないのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ