AFTER STORY1
新学期を迎えて、はや二週間。平穏な日常生活を送っていた。
「ふぁあぁ……」
夏休みの宿題テストも無事終わった。学校のイベントとしてあるとすれば、
「ヤロウども、ダンボールを持ってこい!」
「イエッサー!」
文化祭だ。
2ーAはなぜか知らないけど、メイド喫茶をやることになった。文化祭は十六日の月曜祝日にやることになっている。今日が十五日だから、もう本当に期限が迫っている。土日を返上して、ようやく片が付く。
教室は女子の装飾のおかげか、ピンク一色になっていた。電灯さえピンク色のシートを施し、座席にもピンク色の装飾を付けるなどの徹底ぶり。そこまでこだわらなくてもいいと思うけど……。
席は四人席五つに二人席五つになっている。
「陸奥実!」
「なんだとおちゃん!」
「今、物品組が買いあさった物と機材あるから運んできてくれ!」
「それこそ、とおちゃんの仕事だろ!」
「オレは忙しいんだよ!」
くいっとねじり鉢巻きを整える。体操着にねじり鉢巻き……、似合う。
「仕方ないな……。瑠璃人、行くぞ」
「ぼ、僕ですか!」
なぜ僕を巻き添いにするっ!
僕はダンボールに描いた絵に色を塗っていた。
「す、すみません。東條さん、波多野さん、物品運んできますっ」
「任せてくださいっ!」
「行ってらっしゃい!」
僕は陸奥実君と廊下に出て、階段を下りていく。他のクラスも準備をしていて、混雑していた。
「どこにあるんですか?」
「多分、校門あたり」
「えぇっ? そんな遠くに?」
普通なら気にしないが、物によってはしんどくなる。
「筋トレだと思ってさ」
「分かりました」
にこりと笑う。
下駄箱で靴に履き変えて、外に行くと、
「あれ、陸奥実先輩じゃない……?」
「ホントだ……」
「新戸先輩もじゃない……」
ヒソヒソ……
ヒソヒソ話が聞こえてくる。陸奥実君も感じ取ったようだ。
「最近、変な噂流れてるんかな?」
「考えすぎです。早く行きますよ」
特に女子に多い気がしなくもなかった。
校門に行くと、確かにうちのクラスメートがいた。
「西原君、これがそうですか?」
「ホント、台車なかったら死ぬから!」
学校の中じゃ台車はあまり使えないから……心配だ。
「何買ってきた?」
「えっと……飲み物はソーダとオレンジとコーヒーとウーロン茶といろいろだな。食べ物はアイスクリームとクッキー、チュッパチャップスとか」
「いろいろあるんですね」
その中にタバスコがあるのに、誰もツッコミを入れなかった。物品担当の西原君からレシートを見せてもらった。……20センチくらいはある。
「ちょっと待て」
「どうしました?」
陸奥実君が珍しく物申すらしい。
「なぜウーロン茶の500ミリリットル25本入りが二千円なんだ?」
「え? 近くの所で買ってきたけど……」
「そこじゃなくて、もう少し奥にあるスーパーなら、1本六十円で売ってたんだぞ? 25本なら千五百円じゃないかっ!」
「い、いいじゃん五百円くらい」
「西原君、君は五百円をナメている。五百円があれば家族四人での一日分の食事が賄えるんだぞ?」
「そうなのか?」
「しかも、マックで照り焼きチキンとか、」
「なんか、陸奥実めんどくせーよっ! いつもの陸奥実じゃないし!」
彼の主夫魂が燃えてしまったか! そこまでやるなら、物品担当は陸奥実君の方がよかったんじゃないか?
「陸奥実君、抗議は後にして運びますよ」
「え、あぁ分かった……」
その直後、僕らは荷物の重さと量に絶句したのであった。
「し、死ぬな、確かに……」
結局、予想以上の荷物に応援部隊がかけつけることとなり、二人で一つの配役となった。それでも重い。
やっと校舎に運び込めた。今日は快晴だが、そんなに暑さを感じない。それでも汗が滲んでくる……。
ここからが勝負……、
「あれ? どうしたの? お兄ちゃんたち」
「や、八菜か」
後ろから八菜さんがやって来た。
「僕らは荷物運びしてます」
「見れば分かるわ!」
まぁ、確かに。
「わたしも手伝うよ」
「いやいやいや、大丈夫だ。というより、自分のクラスやれよ」
「終わったもん」
「出し物は何ですか?」
「えっと……確かラーメン屋じゃなかったかな?」
うろ覚えか……。
「食べに来てね」
「はい」
「……んじゃ、瑠璃人行くぞ」
謎のダンボール箱を二人で持ち、
「?」
何か軽い……?
「ほら、サクサク行くよ二人とも!」
え? と思った瞬間、
「うりゃあぁぁぁっ!」
「ぶほっ!」
「ぐはっ!」
ものすごい風圧で床にたたき付けられた。
「いたたたた……ってあいつ、一人で持っていきやがったっ!」
「僕ら、置いていかれたんですね」
「暢気なこと言ってないで早く行くぞ!」
僕ら二人でやっとの重さを……。もはや怪力と言わざるをえない。あんな小さな身体のどこにそんな力があるんだ……?
僕らは走って自分のクラスに向かった。
「はぁ……はぁ……」
クラス前の廊下に着くと、
「お兄ちゃんたち、遅い」
彼女が仁王立ちしていた。荷物はきちんと傍らにある。
「ったく……」
陸奥実君は自尊心があるから、悔しいかもしれない。
「ありがとうです、八菜さん」
「!」
なぜか赤面した。
「べ、別にあんたのためにやったんじゃないんだから! お兄ちゃんのためだし!」
「は、はぁ……」
本当に素直に顔に出るなぁ……。
かくして、何とか荷物を持っていくことに成功した。
「前橋君、持ってきましたよ」
「サンキュー! 端っこに置いといて!」
僕らは邪魔にならなそうな隅っこに置いた。
「ところで、先ほどから前橋君は何をしてるんですか?」
「……いやぁ、ミュウツー捕まえるのに奮闘したぜぃ。めちゃくちゃ強いんだもんな、こいつ!」
「……」
「…………」
「あれ? 二人とも、何でそんな怖い顔してんだ? いやいやいや、何で絵の具セット手に持ってんの? いや、フデをつけん、絵の具ついてるし! 塗るな塗るなあぁっ! オレはダンボールじゃ、ちべたい! やめい、やめてくれえぇぇっ!」




