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EACH STORY

「陽先輩、まだ復帰できなそうですか?」


「そうね……」


「二度とあんなこと……しないでくださいよ!」


「……」


「すみません……。調子に乗りました」


「いいの。ありがとね、楠波」


「……」


「私も自暴自棄になったわ。颯が死んで数ヶ月しないうちに……山奥で練炭自殺しちゃったものね」


「私が止めたから未遂ですけどね」


「そのせいで私、ほとんど脳死だったんでしょ? 止めなきゃ安楽死できたのに……」


「う……」


「でも、颯がね、こっち来るなって言ってくれたのかもって思うの」


「先輩……?」


「……死人に励まされるっていうのも変だけど……」


「……」


「私、決めた」


「? 何を?」


「颯が果たせなかった夢……看護師になるわ」


「!」


「颯はこの世界にはいないけど、私の心の中にきっといる。あの子の夢を……私が叶えたい……」


「……私も先輩についていきます!」


「あはは」


「死からの復活を成し遂げた奇跡の看護師、美浦 陽を、これからも見させてもらいますよ」


「なんか恥ずかしい」


「でも先輩はまず、頭をどうにかしないとダメですよね〜」


「ぎくり」






「……」


「虹晴……」


「久しぶりだな、しん。お前くらいだよ、そう呼ぶの」


「……しおりさんとかおるさん……陸奥実さんのご両親と、光衛さんの墓参り?」


「そうだね。で……何の用だ、心?」


「私、あなたのことが好きよ」


「やめてくれ。栞の前で……」


「まだ引きずってるんだね」


「大切な人が何人も亡くなれば、無理ないよ。心には分からないだろうけど」


「……確かに私は全然面識ないし、虹晴の苦しみを感じるのは難しい。けど……」


「けど?」


「……あなたの苦しみ、少しだけでもいいから私に分けてもいいんだよ?」


「!」


「全部背負わないで……? 苦しみは抱えるためにあるんじゃない。みんなと分かち合うためにあるんだよ……」


「し、心……」


「……ごめんなさい、栞さんの前で……」


「いや、いい。……教師の道に進むと説得力が倍になるよな」


「べ、別にあなたを説得してるわけじゃ、」


「分かってる。でもさ……心?」


「なに?」


「自分……馬鹿だからさ、そういうの信じちゃうよ?」


「……私はあなたを信じてる」


「! ……ありがとう、心」


「うん」


「……親御さん、香さん、光衛さん……そして栞。陸奥実 流君を責任を持って預かるよ。いや、預かるっていうか、一緒に生活していくよ。……あと、栞。お前を裏切るわけじゃないんだけど、隣に旧友の平田 心がいる。栞のことはすごく好きだし、今でもずっと栞を見ていた。でも、それって無い物ねだりなわけで、こうして想いを馳せても、何も起こらない。だからさ……少しずつ前を向いて歩こうかなって思ったんだ」


「虹晴……」


「心は悪いやつじゃない。だから……見守ってくれないかな?」


「……」


「……」


「…………」


「行こう」






「やぁやぁやぁ、気分はどうだ?」


「まだ……頭が冴えない、かな」


「そうかそうかそうか。しかし、本当に助かってよかった。あと少し遅れていたら、三途の川を渡り切るところだったよ」


「少し見えたけ、どね」


「あっはは。だいぶ顔色も良くなったし、身体はどうだい?」


「おかげさまで、もう歩けるよ」


「そうなると、ジュースも買いに行けるようになるね。ほどほどにしてくれよ」


「あそこのコーラが美味しいんだよね。炭酸がシュワシャワって!」


「実は私は大のコーラ好きでね。わざわざ東北方面から取り寄せてるくらいさ」


「? なんで?」


「あっちの方が水が美味しくて、炭酸がノリやすいんだ。だからこちらより炭酸が強いしうまい」


「神地、中々やるぅ〜」


「あっははは。先生つけなさいって」


「先生って感じしないもん」


「せめて“さん”付けで、」


「神地さあぁぁぁぁぁぁん……? お仕事、サボって何してるんですかねえぇ?」


「ふ、婦長さん……! い、いやぁ、私はただね、コミュニケーションして体調をだね、」


「コーラそんなに好きなら、点滴静注してあげましょうかぁぁっ?」


「いや、それじゃあ味分からないし……」


「つべこべ言ってないで仕事しろおぉっ!」


「ごめんなさあぁぁぁぁぁぁあいっ!」


「あはははははっ!」


「全く、困ったものですよね。神地先生の子供心は……。はい、昼食でーす」


「お! お昼タイムだっ!」


「はい、どうぞ」


「ありがと!」


「目覚めて一週間でこの回復力……。若いっていいですね〜……」


「婦長さん、気を落とさないでよ。婦長さんだって若い時あったんでしょ?」


「まぁ、ね」


「こんにちは」


「あらま、こんにちは」


「久しぶりだね〜」


「毎日来てるでしょ?」


「そうだけどさ、さすがに飽きてくるよね」


「あ、じゃあ明日から来ないからっ」


「えっ? やだやだ、ごめんなさい……」


「……ぷっ、うそうそっ! お姉ちゃんかわいぃなぁ」


「あ! お姉ちゃんをからかったなぁっ!」


「じゃあ礼ちゃん、また来るわね」


「え、あ、うん!」


「あ、また美浦さんはっ……! 美浦さぁんっ! あなた、また髪の毛そんなにしてぇぇっ! 墨汁で染めてあげましょうかあぁぁっ?」


「地毛なんだから仕方ないじゃないですかっ!」


「だからあなたは、ガミガミガミ……」


「……美浦、大変そうだな〜」


「? お姉ちゃん、知り合い?」


「うん。金髪にエメラルドグリーンの瞳の外国人のナースさんだよ。しかもボンッキュッボンだしね」


「へぇ〜」


「もう何年も付き合いになるなぁ」


「え? お姉ちゃん、そんなにここに来たっけ?」


「だってこっちに引っ越してから、……?」


「お姉ちゃん、引っ越しって何のこと? それに、ここに来たのも初めてのはずだよ? しかも、意識戻ったの、一週間前じゃない?」


「! ……そうだ。じゃあ何で私……」






「……残念ですが、お亡くなりになられました……」


「ど、どうして、兄貴……」


「か、和美……」


「うぅ、うぅ……!」


「原因は、原因は何なんだ!」


「息子さんは脳幹という生命維持を行う部分で脳梗塞が発生しました。梗塞は治療したのですが、肝心な部分が障害を受け、お亡くなりになられました……」


「……仕方ないな。治せないものもあるんだから……」


「大変申し訳ございませんでした……」


「先生、気負いなさらないでくださいね……」


「あにきぃぃ! あにきいぃぃぃぃぃっ!」


「早夜……」


「お父さあぁん! なんで兄貴死んじゃったんだよおぉぉっ!」


「早夜……今のうちにいっぱい泣きなさい……」


「かずみ……」


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