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三十壊目「終わる・下」

「……もしもし? ……たった今、陸奥実君を捕まえました。……陸奥実君を捕獲しましたっ! …………さっきから言ってるじゃないですか……。病院前です。それと、着替えを三人分持ってきて下さい……」



…………プッ



「……これであとは待つだけですね、陸奥実君」


「…………」






 病院の入口、俺は手足と一緒に身体をぐるぐる巻きにされていた。瑠璃人と謎の男が俺を見張る。


「陸奥実君、先に返しておきます」


「! ケータイと財布……」


「陸奥実君の脱走後に、回収しておいたんです。心配しないでください。中身はそのままですから」


 ずぶ濡れの服に、携帯電話と財布を入れてくれた。

 もしやと思っていた。


「先手を打たれていたってわけか」


「そうですね。……それで、一つ聞かせてください」


 瑠璃人は左拳で、


「!」


 俺の顔を殴った。


「新戸! 何をしている!」


 謎の男が瑠璃人を押さえ付ける。右の頬から全身へと激痛が走る。


「虹にぃを殺すつもりだったのかっ!」


「……」


「答えろっ!」


 激昂していた。無理はない。虹さんを刺したのは確かだからだ。

 殺す気はないと言っても信じないだろうな……。


「……」


「新戸、大人しくあいつらを待つんだ。尋問はそちらに任せた方が、」


「虹にぃは死にかけたんだ! なのに、どうして平然としてられるんだよ! 僕らは陸奥実君と特に親しかったのに、“手紙”なんかの嘘っぱちのせいで簡単に殺しちゃうのかっ!」


「……」


 瑠璃人が我を忘れている。そのせいでミスを犯した。俺を悟らせてしまったんだ。俺を使って“手紙”の犯人をあぶり出そうとしたことを……。

 落ち着いてみれば、皆は俺を利用していた。気付かない俺も悪いけど……、物心ついた時から変わらないな……。


「新戸! 右腕の止血……早くしろ!」


「……分かりました」


 男が瑠璃人の応急処置をしている間に、パトカーとワゴンがやってきた。パトカーから警官数人が下りてきて、病院周辺を封鎖していく。

 もう一台には、


「瑠璃人君! こっちに来てくれ!」


 神地先生と虹さんがいた。虹さんがこちらに走ってきて、瑠璃人と目を合わせてからやってくる。男が拘束を解いてくれた。

 瑠璃人はワゴンの方へ走り去っていった。


「…………」


 虹さんは途中から歩いてくる。でも、足取りがよくない。俺が負わせた傷が虹さんの体力を奪っていた。


「……陸奥実……君」


「……」


 男は何も言わずにワゴンの方へ去っていく。


「……虹さん」


「……なんだい?」


「……すみません……でした」


「?」


「虹さんにいつもに増して迷惑をかけてしまいました……。遂には同僚まで……」


「………………いいよ……。もう過ぎたことだしね……」


「……」


 虹さんは俺の目の前に来る。何とか俺は立ち上がった。


「君がこんなになってしまったのは自分の責任だ」


「……なぜですか?」


「……覚えていないと思うけど、君は一回精神を壊されたんだ」


「……!」


「それはきっと美浦が君に何かをしたんだと思う」


「……」


 それは合っている。でも真実を言うことはしない。


「もっと早く助け出せれば、こんなことにはならなかったはずだったんだ」


「…………虹さん」


「……」


「違いますよ。それこそあなたのせいじゃありません……」


「……!」


「……美浦さんのせいでもないし、誰のせいでもないです」


 俺のせい……。

 俺はズボンのポケットから“N”の手紙と謎の手紙を渡した。


「それは中で見つけた手紙です。いろいろあって二枚しかありません」


「これは陸奥実君の……」


 首を横に振った。

 虹さんは頷いて、胸ポケットに折り畳んで仕舞った。


「それで美浦さんを助けてください」


「! なんだって!」


 虹さんは目を見開いて怒声を放つ。

 もう……俺は……生きていても……、


「……助けてください」


 仕方ない。そう思うと、逆に気持ちが晴れていく。


「全ては“手紙”のせいです。美浦さんも俺と同じように苦しんでいます。その恐怖から自分を見失っているだけなんです」


「自分を傷つけた犯人でも庇うつもりなのかい!」


「……」


 虹さんが滅多に見せない怒り。

 俺はナイフを虹さんに突き付けた。


「! ……陸奥実君……!」


 もう、いいんです。


「どうせ俺には先はない。だから同じ境遇に立たされている人間を救いたいんだ!」


「……!」


「……この意味、わかりますよね……虹さん……」


「…………」


 生きていてもどうせ死ぬ。なら、少しでも……人になりたい。


「…………」


「……わかった」


「!」


「……美浦を助けるよ……」


「……ありがとうございます」


 生まれた時から物としてしか扱われなかった。でも、最後に人になれた……。


「これで思い残すことはないです」


「……えっ……?」


 突き付けていたナイフを自分に向けて、両手で持ち直す。


「陸奥実君っ! やめろっ!」


 ……さようなら






「止めて下さいっ!」


「!」


 俺の手は寸前で止まった。いや、止められた。


「…………」


「何を考えてるんですか!」


 後ろから聞こえた。滅多にない怒号だった。


「どうしていつも一人で思い悩むんですか!」


「……」


「…………」


 察しはついている。最も会いたくなかった人だった。

 振り返った。


「何か言ってくださいよ! 流さん!」


「……」


 づかづかと近寄っては胸倉を掴んでくる。相変わらずらしかった。

 彼女の瞳は少し揺らいでいて、ちょっとでも擦れば溢れかえってしまいそうだ。それを怒りやらなんやらでなんとか抑えている状態だった。

 栗色の髪が激しく踊る。


「……私たちがどんなに心配してたか……」


「…………」


 口は簡単に言葉を出させてくれない。俺が一言でも発したら、精一杯抑えているのが一気に崩れるだろう。そして、目の前の女の子がそれによって穢れるかと思うと、嫌で嫌でしょうがなかった。俺と真乃の間にはもう境界線が敷かれていた。


「……流さん、あなたの声を聞かせて……」


「…………」


 俺のはやけに頑固だった。


「流さん……」


 真乃の手がぱっと離れた。と思った瞬間に……、


「…………!」


「…………」


 抱きしめられた。頭の中のもやもやが一瞬にして晴れたような気がした。難しいことを振り回していたのが馬鹿らしく思える。


「…………ま……の」


「……やっとっ、聞けましたね……。りゅっうさんの声……っく……」


「……真乃……」


 直に触れた。まるで我が子との再会を果たすように頬を擦り合い、吐息に当たり、彼女の嗚咽に近い囁きを一方的に聞かせる。信じられないほど温かかった。少しだけ……触れていたい……。

 それが濡れてきたとき、初めて本当に“真乃”なんだと気付けた。“真乃”がすぐ側にいてくれたんだ……。



……辛かったですよね……?



「……!」



こんなにぼろぼろになって、酷いことされて……



「真乃……」



救いを求めてるのは寧ろ自分なのに、周り全員が敵で……!



「……」



私は会いたかった……救いの手を差し延べたかった……



 何だろう? この頭の中に直接入り込む言葉の羅列は? 耳から入ってきているわけではない。かといって眼からでもない。人間の感覚とは違う何かが、頭の中で文字と化して理解されていく。ごく自然と、当たり前のように。

 少し青い表現だが、真乃が直接俺に語りかけてくれたのかもしれない。その……何かで。


「……悪かったな。お前にこんな苦労かけて……」


「……まったくです……。女の子を泣かせるなんて最低ですよ……」


「……そうだな」


 真乃の声に漸く力が戻る。でも、まだ濡れていた。そんな真乃をそっと引き離す。そろそろ……。


「真乃……。俺、行かなきゃ……」


「……!」


 罪悪にはその分の然るべき裁断が待っている。これらは常に表裏一体だ。俺は大罪を犯した。だからそれに等しい罪を償わなければならない……。しかし、真乃はまた抱き着いてきた。俺を見上げて拒否の意志を連呼する。この時ほど苦しいことは今までなかった。

 それでも俺は真乃を諭す。納得したかを確かめて、ゆっくり引きはがした。反抗はなかった。これで、俺は“期限”を迎えることになるのだろう。

 その時、虹さんが手錠を持ってやってきた。その傍らに瑠璃人もいる。


「よし、後は自分に任せてくれ。瑠璃と東條さんには部下が送ってくれる」


「! 僕もですか!」


「そうだよ。大人しくしてなさい」


「……個人的にはありがたいです……」


 そして、虹さんは銀色を俺に見せ付けて、はめた。


「……ごめん。本当はしたくないんだ……」


「構いません。……殺人犯ですから」


 俺と星とかいう男は虹さんの車に乗り込んだ。この人は確か瑠璃人と一緒にいた。なのになぜ……? なんにせよ、反したには違いない。

 二人が外から見詰めている。はっきりと違う空間だ。一枚しか隔てていないのに……。我ながら不思議だ。きっと、テレビとかの犯罪者もこんな気持ちなのだろう。まぁ、まさか体験できようとは思いもしなかったが。

 やがて、エンジンがかかる。なんだか口の中に苦さが広まっていた。そして間もなく発進していった……。


 その時だった。


「待って下さい!」


「!」


 虹さんが慌ててブレーキを踏みながらハンドルを鋭く切る。金切り声を上げながら擦れていき、やがて止まった。後少しで虹さんも刑務所行きだった。

 それよりも、目の前に釘付けにされた。


「待って下さい!」


「真乃!」


 真乃だった。両手を一杯に広げ、車を無理矢理止めたのだ。なんて無茶な……!

 真乃は運転席の窓を開けさせた。


「行かせないで下さい!」


「……真乃……」


 正直な話、哀しかった。俺の今までの行動と独りで暴走していたのが混ざり合って、出来たものが後悔だった。これを考えて動いてきたのに、それ自体が後悔に繋がっていたのだ。つまり、最初から……。

 ……こんな思考を張り巡らせたって無駄だ。

 虹さんは真乃の肩に触れた。


「…………。東條さんの気持ちは痛いほどわかるよ。でも、ダメなんだ……」


「……どうしてですか……?」


「……」


「……流さんは被害者なんですよ! 流さんをめちゃめちゃにした犯人をほったらかしにして、被害者の流さんを逮捕するのは不自然じゃないですかっ!」


「…………」


 真乃、いいんだ……。たとえ被害者だろうとなんだろうと、俺が殺人を犯したのは代わりない。揺るぎない事実なんだ。わかってくれ、真乃……。


「違う。彼は警察官四人を猟奇的に殺害した極悪犯だ。そこに不自然も理不尽も何もない。……何もないんだ……」


 虹さんだって好きでやってるわけじゃない(そうなのかはわからないが)。肩にのしかかったモノが、自分の中にある正義を貫き通してるだけだ。けれど、それは無視できない。無視したら成就されないし、背くことになる。


「……真乃、わかって……」


「ちょって待てやあぁぁぁぁぁぁぁっっ!」


「!」


 この声は……まさか……!


「黙ってきいてりゃ、理不尽がどうのこうのだって?」


「むっちゃん! 久しぶりやなぁ!」


「棗さん……! ……とおちゃん!」


 後ろを見ると、懐かしい顔があった。それだけでもう……。いや、必死で堪える。

 二人は車の両側に回り込んで、虹さんを挟み撃ちにする。棗さんは真乃の方へ。とおちゃんは反対側からドアを開けて睨み付ける。虹さんはさほど驚かずに冷静な態度をとっていた。面識はあるようだ。

 これから何をするつもりなんだろう? 隣に座る星さんも眺めていた。


「おっさん」


「な、なんだい……?」


 おっさん……?


「陸奥実は人殺しなんてできる度胸なんかねぇっすよ。こいつはアリすら踏めないんすよ」


「それは自分だって分かってるよ」


「…………」


 なんだか複雑な心境だ。


「だから、むっちゃんなんかシカトして、誘拐犯見つける方がえぇと思うんよ!」


「今、捜している最中だ」


 なんか馬鹿にされてるようで気持ち良くない……。


「君たちがどんなに訴えても無理だ。頼むから道を空けてくれ……!」


「いいよ、三人とも。ありがとう。その気持ちだけですごく嬉しいよ……」


「いや、よくありません」


「……!」


 また別の声が今度は車内から聞こえた。これは一人しかいない。思った通りそいつは助手席に座っていた。いつの間に……。

 珍しくご機嫌ななめのようだ。


「質問があります」


「……な、なに?」


「一つ、陸奥実君を捕まえたのは誰でしょう?」


「……!」


「二つ、僕を疑ったのは誰でしょう?」


「……ぅっ……」


「三つ、刑事としてあるまじき行為をしたのは誰でしょう?」


「!」


 ……卑怯だ。こいつ、人の弱みを握っている。これは完全に恐喝に値する。瑠璃人も現行犯逮捕できる。しかし、そんなことをしたら……、きっとばらすつもりなんだろうな……。兄弟なのに容赦はしない。

 しかもハッタリだとしても、やがては同じ運命を辿ることになる。なぜなら……。


「へぇ〜! あの刑事殿が不祥事を起こしてるんですかぁ〜。気になりますねぇ……」


 この女がいるからだ……。なんでこいつらは計画も立ててないのに、こんなに息が合ってるんだ……。

 虹さんは結局、重圧をかけられてあえなく降参した。きっと本人もこうなるように仕組まれたと思わざるをえないだろう。

 しかし、これは犯罪者に加担しているわけで、そちらの方が問題だ。よって、非常事態の尋問という名義で一先ず丸く納められた。ただし、警備員は必ず二人以上は同行しなければならないと条件を付け加える。ところが、それも強烈な重圧によって撤廃された。全ては誰かさんの計算通り。

 謎の男はその一部始終を見て、豪快に笑い続けていた。


「嬉しいのやら可哀相なのやら……」






 虹さんたちが乗ってきた車に神地先生と瑠璃人が乗っている。この車はうちへ向かっている。


「まさか、二人いるとは思わなかった」


「ふふふ……、陸奥実君はまだ甘いですね。でも僕もでした。こちらの作戦をやり返されるなんて、思いもしませんでした」


「お前の方が一枚上手か……」


 手にはめられていた手錠も外してくれた。


「……つっ……」


 瑠璃人の腕に包帯が巻かれていた。神地先生が処置はとったらしい。でも、傷は軽くないはずだ。


「……悪かったな。大丈夫か? 腕……」


「大丈夫ですよ、もう……。痛くないですから……」


「……だけど……」


 そんなの嘘だ。

 俺は虹さんだけじゃなく、瑠璃人や他の人達も巻き添いにした。俺のせいで一体何人死んでしまったんだ……? 俺のせいで……、あの時死んでしまえば……、


「僕は忘れてません」


「?」


「“大富豪”、やりましょうね」


「……!」


 瑠璃人……。


「……ぅ……」


 思わず窓の外を眺める。

 涙が止まらなかった。


「陸奥実君……」


「うっ、うぅ……」


「……」


「……るりと……」


「“あなた”ですね?」


「……わたし、いきててもいいの……?」


「陸奥実君……」


「あの時、死んじゃえばっていつも思ってた……。こうして他人にめいわくかけるたびに、自分なんかいなければって思ってた。やなにもいっぱいめいわくかけて、もう……」


「確かに、亡くなった方はいました。それは忘れちゃいけませんし、どんな結果でも償うべきです。でも、僕や虹にぃ、東條さんや八菜さん、皆は受け入れてくれたじゃないですか」


「……!」


「それは陸奥実君を信じていたり、好きだったり、友達や親友だと思うから受け入れてくれてると思いますよ」


「……うん……」


「陸奥実君がいなくなって嬉しい人なんていませんよ。僕らを信じてください、頼ってください。陸奥実君は独りじゃないんですから」


「るりと……」


「僕もかつては陸奥実君と同じでしたけど、好きな人にそう教えてもらったんです。陸奥実君も気づくことができるはずです」


「ありがと……」


「いえいえ」


「これで、わたしは安心して眠れます。この子をよろしくお願いします……」


「! 陸奥実君っ?」


「……」


「……今のは、徹さん何ですかっ?」


「……言っただろう? 陸奥実君のお姉さんのような人格だって。二重人格じゃなく、憑依だったのかもしれないな」


「陸奥実君のお姉さんは陸奥実君のことを心配していた、ってことですか?」


「そうだな」


「……どんな人だったんですか?」


「お姉さん、陸奥実むつみ しおりさんは享年二十六歳。虹の婚約者だった」


「!」


「お兄さんが陸奥実むつみ かおるさん。享年三十歳で虹と私の先輩にあたり、虹は香先輩の後継者だ」


「……あの事故で婚約者と先輩を亡くした……?」


「陸奥実君は私たちの形見だ。だから私たちは死んでも陸奥実君を守るのさ……」






「陸奥実君」


「うん?」


 肩を叩かれて目を覚ました。


「俺、いつの間に……」


「陸奥実君家に着きましたよ」


「あ、あぁ」


 俺は車を降りた。

 目の前にマンションがあった。こうして眺めるのも最後。何だか懐かしい……。

 ふとして空を見ると、日の入り時だった。ゆったりとした橙色が太陽から放たれ、周辺の雲を染める。そちらから反対側へ青から紺色になっていく。


「……俺ん家……」


 瑠璃人が神地先生を乗せた車を見送った。あっという間に小さくなるのを、消えるまで見続ける。

 その後、棗さんととおちゃん、真乃が別の車で送ってもらい、到着した。


「さて、どうする? 時間なら全然あるぜぃ」


「そうやなぁ……」


 妖しく微笑む。


「遊びたいし、いっぱい話したいです!」


「……僕もです」


「…………多分、権限はないんだろうな……」


 まったく、こいつらは……。仕方ない。


「行くぞ」


 マンションの敷地に入ると、源さんの庭があった。花壇に植えられた白百合が咲いていた。そして、鉄板を張り付けたような階段。マンションは新しいくせにここだけ古い感じがした。


「久しぶりかもしれない」


「そうですね……」


 二階の真ん中のドアがうちだ


「……!」


 鍵がかかってない。少し急いで奥に進む。


「あ……お、お兄ちゃん……?」


 や、八菜……。


「お兄ちゃん……」


 八菜、俺を待ってたのか……? ここにわざわざ布団敷いて、ずっと……?


「八菜、ごめんな。ずっと一人にして……」


 ほろりほろりと涙を落とし、やがて大粒となった。


「おにぃぃちゃあぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁんっ!」


 ごめん、八菜……。本当ごめん……。


「うわぁあぁぁあぁぁぁっ! おにぃちゃあぁぁぁんっ!」


「ごめん、八菜、八菜……」


 心配させて、迷惑かけて……ごめんな……。


「さて……何する?」


「そりゃあモチロン」


「大富豪に決まってるじゃないですか!」


「え?」


 ……軽く流されたような……。


「って軽っ! 兄妹の感動の再会なのよっ? もうちょっとうるってこないのっ?」


 八菜が涙目で言い放つ。


「何でワイが泣かなあかんねん。しかも青髪ツンデレ美少女ごときに」


「何ですってえぇぇっ!」


「ワイはただ、むっちゃんをみんなでハメて地獄に落としたいだけやで!」


 何だその個人的な意見っ?


「聞き捨てならないっ!」


「っばっ、」


 八菜に腰から投げられた。確かこれ、柔道の体落しって技だったような……。


「……あの、僕は結構ですので……」


「ダメだ!」


「ぅわっ!」


「やつを倒すには、お前の力は絶対必要だ!」


「はっ、はぁ……」


「ということで、新戸君も強制参加や」


「う、うわぁ!」


「ま、まあ瑠璃人、とりあえずやろう。やりたいって言ってただろう?」


「……わかりました。やらないと殺されそうですからね……。それと、頭から血出てますけど……」


「気にするな。死にはしない」


「僕のより、物凄い勢いですよ?」


 見事にクリーンヒットしたのだった。


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