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二十九壊目「逃がす」

「……準備万端だな。これでいい」


「あんたたち、一体誰なのっ! こんなことしてただじゃ済まないわよっ!」


「や、やぁちゃん……」


「黙ってくれればそれでいいんだよ。俺はあいつに用がある」


「! あんたはもしかして……」


「なあ、ちょっとやっていいかよ〜?」


「いいだろ? 時間もあるんだし、こんなかわいい娘、もったいねえよ」


「くひひひひ……」


「……どうせなら、ヤツが来るちょっと前にしろよな」


「おいおい、じらすなよ」


「違う。あいつに絶望させるんだよ。こいつらを餌にしてな」



あははははははははぁぁっ!



「お、お兄ちゃん……来ちゃだめ……」






 一瞬あれが脳裏を掠める。


「……ふぅ」


 拝見する。前回よりなんだか粗雑だ。ノートを破って書いたようなものだ。現にラインが引いてある。この時点で悩むことはない。

 それに関しては。


「…………」



[お前の大事な大事な妹とお友達を預かっている。マワされる前に来ることだ。学校のどこかにいるからな。それと、警察その他にチクったら命はないと思え]



 これはどうやら口外してはならないようだ。

 俺はあらゆる負の感情を隠せなかった。同時に緊張と焦りが体を支配していくのがわかる。頭が熱いと感じる冷や汗は頬を伝って、床を一点だけ濡らす。

 鍵を掛けた後、源さんに鍵を渡す。そして走り去った。

 俺は全力で走った。しかし……、


「……っぐぅ! ぜぇっ! ぜぇっ! ……ぜぇ……!」


「……む? あっ! おい! いたぞ!」


 見つかった! どうしてこんなところに警察がっ? しかも住宅が多い……。まずい。これでは手に取るようにわかってしまう。俺はポケットに存在感を示しているものを取り出す。


「追うんだ! 追えぇぇ!」


 こっちは八菜が危ないんだ……! 退けえぇぇっ!


「! ……ッ……!」


「? 逃げない! こっちに向かってくる!」


「……凶器を所持している!」


「仕方ない! 応戦するぞ!」


「……こちら間中、第5ポイントに犯人発見! 相手は凶器を所持している! 至急、増援を頼む!」


「……つっ……!」


 応援を呼ばれた……! ここらへんは第5ポイントらしい。ならば移動しながら……殺す。


「くそ! 逃げたぞ!」


「さすがに頭の回転は速いな!」


「今、そこ曲がった!」


「よし!」


 一人目。ちょうど首をかっきった。


「うぐぁぁっ!」


「!」


「なにぃ!」


「野本さん!」


「………………」


 血がごぼごぼと溢れる。倒れて死肉の音を奏でた。


「救急車呼べ! こいつは俺らに任せろ!」


「はい!」


 二対一か。後ろのやつを殺すのが理想的だが、目の前からでも遅くはない。

 俺はまた角を曲がった。流石に同じ手は食わない。一定距離を空けている。わざと足音を数回鳴らした。


「! 逃げたっ?」


 よし、二人目。胸部やや右、すなわち心臓に思いきり突き刺した。切れ味が悪いのか深くなかったが、致命傷は確実。


「ささやまぁっ! てめぇ!」


 俺は拳銃を向けられた。素早く別の道に転がり込む。


「……はぁっ……はぁっ…………ふぅ」


 拳銃相手じゃ……。暗くて視界も悪くなってきた。俺はふと電柱が見えた。


「そこにいるのはわかってる。大人しく投降せよ!」


 俺は息を潜める。間中は道に入ってきた。


「おらぁ! っ?」


 俺はそこにいなかった。


「どこに?」


 意を決して飛び降りる! 気付いた時には、


「ぐわぁぁぁあぁっ!」


 もう遅い。右肩から左脇腹まで深くえぐった。意識はあるが、痛みと出血で残りわずかだ。俺は走り去った。


「……間中さん、意識保って!」


「……っふっ! 俺に、構わずっ行け!」


「! 無理に決まってるじゃないですか! 間中さんを置いていくなんて……!」


「大丈夫だ……。ほら、聞こえてきたろ? 時間がもったいない……!」


「しかし……!」


「大丈夫だって……」


「…………せめて、来たらにしてください。負傷者一人では危険です!」


「わかっ……、っ! 危ねぇ!」


「え?」


 なんてな。間中は男を突き飛ばし、ナイフは腹を食った。


「……三人目」


「うわあぁぁぁあぁあぁっ!」


 まずい! 銃を……! 俺は肉塊を盾にした。パニクってる今がチャンス。履いていた靴を投げ飛ばし、肉塊も押し倒した。その衝撃で銃を放した。


「あっ……ぁぁっ……」


 ノータイムで脳天から切り伏せた。


「……」


 八菜を助けるためには……仕方ない。靴を拾い、履いて走り出した。


「ぜぇ……、はぁ……! はぁ……、はぁ……、ふぅ……!」


 息が苦しい。一呼吸する度に喉に空虚を感じる。別の生き物を動かしているような錯覚に陥っている。それのせいで頭がやけに呆然としていて、判断がしにくい。なのに思考は一つの事に恐ろしく冷めていて、行動は暴力的だった。つまり、理性を保てていない。

 足を見ればひどく汚れ、赤が目立ち始めている。痛みは蚊ほどもない。覚醒してるようだ。

 そして身体はどこへ向かうのか、再び走り出した。






 あまりに真っ暗だ。いや、そう見えるだけ。実際はそうでもない。学校は一層不気味さを醸し出していた。誰もいない。俺しかいない。この世界に取り残されたような錯覚が襲う。そんなわけはない、とわかっていてもだ。

 厚さのない校門を飛び越し、一気に駆け出す。変に足に力が入り浮くように走る。人間の中心から伝わる生の実感はやけに力強く鼓動する。


「くそっ……!」


 持ってきた袋に靴を入れ、上履きに履き替える。直感的に自分のクラスに走っていく。

 2−Aに着いた。


「はぁ……はぁ……」


 息を整えてから、中に入る。中には、


「! や、八菜……」


「おにぃ……ちゃん……」


「せ、先輩……」


 八菜と雛がいた。


「ちっ……、運がよかったな」


 もう遅かった。


「あとちょっとでおいしくいただけたのによぉ……」


 月光が八菜を囲む四、五人の男を照らす。机を退かして一番奥の隅っこにいた。皮肉にも、俺の席が一番近いところだ。男たちは八菜をそっぽ向き、俺にゆっくり近づいてくる。まるで、虎が獲物を狙うように。

 俺はそいつらの間を突っ切る。どうでもよかった。二人が心配だった。


「八菜、雛、大丈夫か!」


「……うん……」


 全く無事じゃなかった。

 八菜の頬や目はうっすらと青く染まっている。何もしなくても激痛が走るのがわかる。それに、制服の上着は完全に脱がされ、そこにも青痣あおあざがいくつか点在していた。そして見られてはいけないモノも露にされていた。しかも、


「!」


 髪が引き千切られていた。

 ふるふる揺れる身体に羽織っていた服を肩からかける。

 八菜は掠れた声で何度も俺の名を呟いている。

 雛は全身脱がされていた。切り傷や擦り傷が多く、口の周りに液体がついていた。それを持ってきたティッシュで拭うと、


「ひ、ひな……」


 股にも……!


「雛、しっかりしろっ!」


「せん、ぱい……」


 意識が薄い……。雛にもシャツを着させた。そんなに着込んでいなかったから……、俺の上半身が露になった。


「ひなちゃんは美味しくいただきましたよーん」


「ホントにびっくりだよ! てめえの妹はヤクザかよっ!」


「あぁ〜あ、後で殺されちゃうな〜!」


「ぎゃははははははっ!」


「腹に刺青彫ってるやつ、初めて見たし!」


「陸奥実家って代々ヤクザの家系かぁ?」


「マジかよぉ〜」


「あはははははははははっ!」


「ぎゃははははは!」


「ははははははははは!」


「あっはははーっはははははは!」


「お前らの目的は何だ?」


「簡単に言えばウサ晴らし?」


「だってその青髪よ、和美殺したんだぜ?」


「!」


「それに生意気だしな」


「上級生に言葉遣いってのを教えてやったのさ」


「あははっははははははあぁあっ!」


「言葉遣いとかマジウケんだけどっ!」


「てめぇが一番できてねぇしなっ!」


「お前が勉強しろって感じだし!」


「ぎゃあははははっ!」


「…………………………」


「お、お兄……ちゃん……」


「なんか言ってみろよ! お兄ちゃんよぉ!」


「……………………」


「ダメだよ……? 平気だから……ね……?」


「………………」


「まったくよ! 頭どうかしてんぜ!」


「…………」


「ロクなもんじゃねえな!」


「……」


「お兄ちゃん……早く帰ろ……お腹減った……」


「お前の家族、どうせみんな腐ってんだろ?」


「!」


「だ、ダメ……」



だめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!






 その時、やっと思考が働き出した。

 振り向く。相変わらずにやけた面が月光で見える。大きく歩み寄って、まず、リーダー格の男を目の前にする。渋い顔で睨むと、口をもごもご動かすが、何を言ってるのかは耳に入らない。視線を逸らすと、馬鹿な男はそちらに向いた。顔がこちらに向くタイミングに合わせて左側の顎を殴った。渾身の力で。一回転して床に強く頭をうち、動かなくなった。

 次はその隣。いつの間にか掃除用具の木の棒を持っていた。それを両手で持って向かってくる。しかし、その瞬間、俺は身動きが取れなくなっていた。もう一人のやつが脇から腕を絡ませ、両手の自由を奪っていた。

 前から迫る男がそれを掲げ、頭目掛けて振り下ろした。俺はわざと膝を崩し、後ろから抱える男の頭を前に差し出す。そこは的のあったところ。後頭部あたりから全身に衝撃が伝わると同時に両手が楽になった。今のうちに抜く。そして背中に乗っている肉塊を前にいる男に放り投げた。むろん、避け切れずにそのまま倒される。

 ちょうどよく、図体がでかかったおかげで挟まれた男はうまく抜け出せない。折れた棒を持つ手は床を何度も叩いていた。……目障りだ。俺はゆっくりと近づき、その右腕を踏み付けた。素早く棒を奪い取る。そいつは俺に何か叫んでいるようだ。聞こえはしないが目障りなので、折れた方を下に向け、思い切り右手に突き刺してあげた。それでも煩く感じたので反対側にいって、前腕を反対方向に直角に曲げてあげた。するとやっと落ち着いた。

 もう一人いたような気がする。後ろを見ると、そいつは八菜を人質にしていた。頭に何やら四角い物体を押し付けている。先端がぱちぱちと光を放つ。まるで勝ち誇ったかのようににやけてやがる。

 馬鹿が……。

 俺にまた叫んでやがる。何を言ってるのかさっぱりわからない。概ね、“動くな”とか“ざまあみろ”とかだろう。

 しかし俺は足を止めなかった。普通のペースで淡々と近寄る。男の面は一気に青ざめていった。大きな口を下品に開け、俺に命令してるように見える。たまらなくなった男は遂に俺に向けてきた。それ当たらないように、スタンガンを持つ手を上手く掴み、その人差し指を奥に反らせた。枝がまた折れる感触がした。痛がった隙に八菜を解放して、どてっ腹を蹴りこんだ。






「むつみ……せんぱい……」


「お兄ちゃん……! もういいよ! 止めてぇっ!」


「ヴヴヴヴヴヴヴヴゥゥァァァ………………」


「な、なんだ、この化け物は……! 半端じゃねえ!」


「つつ、今起きたよ俺は」


「駄目だ! 早く救急車呼ばねえと」


「おにいぃちゃあぁぁぁんっ! やめてよぉおぉぉっ! その人死んじゃうっ!」


「ああっ…………やだ……」


「やっと聞こえました」


「!」


「まさか、生きて帰れると思います? 八菜を傷つけた分と雛を犯した分……一人ずつなぶり殺してあげますよ。この男のように……」


「ぎゃあぁあぁぁぁぁぁあ…………」


「う、うそだろ? ……し、死んじまったのか……?」


「いや、でも、」


「ぎゃ」


「これで死にましたね」


「あ、あわわ……」


「し、しかもなんだよ、てめぇの身体……傷だらけじゃねえかよ……」


「とにかく、全員死んでいただきます」


「もおぉやめてえぇぇっ!」


「何でです? 酷いことされて悔しくないんですか? こいつらは生きて帰すわけにはいきません。達磨だるまにして親に送り付けてやりましょうか」


「お兄ちゃん、もういいよ……。お願いだからやめて……」


「先輩、私も平気ですから……」


「雛が一番辛いでしょう? こんなクズ共に犯されたんですよ? 然るべき復讐が必要なはず。こいつらのナニも生きたまま切断して、生き恥をさらしてもらいましょうか」


「確かにそうですけど……陸奥実先輩の方がクズですよ……!」


「……」






 八菜と雛を抱え、教室を駆け出した。校舎を出て、校庭に出る。そこから体育館に入る扉に下ろした。

 途中、雛や八菜のクラスに寄り、ロッカーから体操着を着せた。入っていたのが幸いした。


「大丈夫ですか?」


「私は平気です。けど……」


 八菜の方を見やる。“わたし”の左腕にしがみついていた。


「二人とも、ごめんなさい……。警察と救急車に通報したから間もなく来ますから……」


「…………」


 震えていて泣いていた。でもそれは安堵のものじゃない。


「何者……ですか……」


「?」


「先輩は何者なんですか……?」


「……それは……」


「どうしてあんなに人殺しに手慣れてるんですか……! 聞いちゃいけないのはわかっています。けど、先輩のあれを見せられて、聞かずにはいられません。しかもその身体中のキズ……!」


 まるで化け物を見るように怯えた目で見る。過去にも経験しているから苦にはならなかった。


「……」


「教えてください……!」


「……」


 “わたし”と対峙する。雛は険しく見つめていた。


「時間がありません」


 俺は雛を体育館の壁に追い込んだ。


「! 私はっ……!」


 そして素早く後頭部を打った。


「う」


 雛は“わたし”の肩に寄り掛かって、意識をなくした。



「雛を頼みます、八菜」


「お兄ちゃん、どこ行くの……?」


 無言で頷く。


「分からない。もしかしたら、もう一生会えないかもしれない……」


 ふと視線を変えると、二つの影があった。“わたし”は夜目が利くからすぐにわかった。


「真乃……棗さん……!」


 急いで去っていく。ということはもう一人、


「……行かないで……」


 八菜もそれを分かったようで、“わたし”の体を掴む。


「……」


 “わたし”は振りほどいていった。もし見られたのなら……やむを得ない。

 “わたし”はまず、下駄箱に行った。


「…………ゃあ、金持ちの家だなっと……っておいおい! 二枚入ってる!」


 とおちゃんは相変わらず緊張感ない。後ろががら空き。ゆっくりと距離を詰める。


「ラブメッセージ贈りすぎだろ! ……ふむ、どれどれ」


 何かを読んでいるようだ。


「……何も書いてねぇ。こっちは……陸奥実用か? 用意周到だな。……んで、こっちは……」


 あと五歩。


「うげっ! びっしり埋めすぎだろ! 読む気失せるわ!」


 三歩。


「つーかよぉ……」


 一歩。


「さっきからてめぇ、うるさっ……」


 咄嗟に首にあてた。



バチチチチチチチチチチチチィッ!



 青白く走る電撃がとおちゃんの首から全身に流れていく。


「っっっ!」


 とおちゃんは呆気なく倒れ込んだ。威力は下げたし、とおちゃんなら死にはしないはず。

 一体何を、


「……!」


 これは……大量の手紙!


「……」


 一枚を手に取る。


「…………」



[お兄ちゃんへ

 お兄ちゃんが生まれた時から酷い扱いをされていたのに、私は何もできなかった。陸奥実家の当主になって、親戚の人達の悪巧みとか陰謀とか、醜い光景しか目に映らない。その中にはお兄ちゃんのこともあったよ。お兄ちゃんを殺す計画もあった。でも私が全力で辞めさせたけどね。

お兄ちゃん、今までごめんなさい。お兄ちゃんに一つだけ嘘をついてた。お兄ちゃんは本当に私のお兄ちゃんだったんだよ? 義理の兄妹じゃない、血が繋がった兄妹なんだよ。私たちはお兄ちゃんの両親、つまりお父様とお母様で生まれて、私が今のお父さんとお母さんに預けられたの。お兄ちゃんが小学生に上がりたての時に。理由は……お母様が家庭の事情って言ってて分からない……。その後、お兄ちゃんがうちのお父さんとお母さんに引き取られた……。辛かったね、お兄ちゃん……。

最後に、ちっちゃい頃からよく遊んでくれたし、宿題も手伝ってくれたね。お兄ちゃんも辛いはずなのに、優しくしてくれたね。お兄ちゃん大好き……本当に大好き。]



「……」


 “わたし”は手紙全てを運んだ。近くにビニール袋があったのでそれに全て入れる。そして八菜たちのところへ戻った。


「お兄ちゃん……」


「ありがとう、八菜」


「……え?」


 もう靴が赤く染まっていた。靴底はゴムなので足跡は残りはしないだろう。


「もう行きます。他の連中が来るから」


「……わたし、どうすればいいの……?」


「真実を言うんです。ありのままを包み隠さず……!」


「……」


「わたしも好き、八菜。八菜が妹で良かった……」






「後少しね……」


「……そうですね」


「しかし、おかしな世界だわ」


「なぜですか?」


「だって誰も私をかまってくれないんですもの……。ウフフフフ……」


「目標は全て達成しましたか?」


「極秘資料はゲットしたし……そうね」


「海外逃亡ですね」


「……ねぇ陸奥実君、その袋は何かしら? クリスマスプレゼントは早過ぎるし……」


「これは学校にあるわたしの下駄箱入ってた手紙です」


「……そうか。あなたが陸奥実君のもう一つの人格ね?」


「……」


「神地先生が言ってたわ。あなたほどの年齢で二重人格があるのは悲しいって……」


「……」


「“あなた”に関しては沈黙ね。……まぁいいわ。それで、その手紙は普通の?」


「分かりません。でも、手掛かりになるんじゃないかと思って持ってきました」


「ふ〜ん……。ラブレターじゃなさそうね、……!」


「どうしました?」


「お母さんからの手紙だわ」


「美浦さんのですか?」


「えぇ。間違いないわ。それに、こっちはおじさんのと、おばさんので……」


「どういうことですか?」


「分からない……」


「えっと……」


「あっ、ヨシ子さんの!」


「……? 瑠璃人に虹さん? なんで……?」


「なんだか年賀ハガキみたいね」


「そうですね。でも何でわたしの下駄箱なんかに……? むしろ郵便とか直接的に届ければいいのに……」


「あら、陸奥実君のガールフレンドからじゃない?」


「ガールフレンド?」


「ほら」


「真乃……? というより家族一同って感じの内容ですね。……それも謝罪ばかり」


「……これは後で検証するとして、最後の仕事をこなしましょっか」


「……」


「……そこの公園に停めてちょうだい。陸奥実君、降りるわよ」


「……」


「あなたはここで寝てもらって、病院に向かってもらうわ。もし、警察に捕まったら、私の情報を探しに行くていでお願いね」


「病院に来るであろう瑠璃人と対決というわけですね」


「おそらく私の仲間を連れて来るわ。大人しく捕まってね」


「分かりました」


「それじゃあお休み」


「はい……」


「“あなた”もちゃんとお休みなさい」


「……」


「私たちも行くわよ……」



……



「……陸奥実 流、あなたはついに抹殺される道を選んだようね。感心しないけど……仕方ない。どの道、あなたを待ち受けるのは、苦心惨憺くしんさんたんを余儀なくされる絶望的な人生。死んでしまった方が安楽なくらいに絶望的な……。しかも避けることのできない定め。果たして打ち勝つことができる?」


「……すぅ……すぅ…………」


「彼女がいるから大丈夫よね? 今度こそ……」


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