第五章:止まった時計と夜の疼き
その夜を境に、我が家の時計の針は止まった。
いや、汚泥の中へと深く沈んでいった。
一度、実の兄である僕を受け入れてしまった恵理は、何かが完全に壊れてしまったようだった。
翌朝、恵理はいつものように制服を着て朝食の席に座った。
けれど、その瞳はどこか虚ろで、フォークを持つ手が微かに震えていた。
僕と目が合うたび、彼女はすぐに視線を逸らし、頰がうっすらと紅潮する。
恥じらいと、後悔と――そして、隠し切れない微かな疼き。
昼間はまだ理性が勝っていた。
学校から帰宅しても、恵理は僕を避けるように自室に閉じこもり、ドアの向こうで小さな音を立てて勉強しているふりをしていた。
けれど夜が訪れると、すべてが変わった。
深夜二時過ぎ。
僕の部屋のドアが、そっとノックもなしに開いた。
暗闇の中、恵理が立っていた。
白いネグリジェ一枚。
薄布越しに、胸の先端が小さく主張しているのが分かる。
彼女はドアを閉め、鍵をかけた。
「…お兄ちゃん」
声が震えていた。
まだ理性の残滓が言葉を絞り出そうとしている。
「今日も…佑三さんに、触られたら…嫌だ」
それは言い訳だった。
本当は、佑三さんの手よりも、僕の手に触れられたかった。
その事実に自分で気付いてしまって、恵理は唇を噛んだ。
僕はベッドから起き上がり、彼女に近づく。
恵理は一歩後ずさりながらも、逃げようとはしなかった。
そのまま壁に背をつけ、目を伏せる。
「ごめん…私、おかしくなっちゃったみたい」
小さな声で呟きながら、彼女は自分のネグリジェの裾をぎゅっと握った。
「昼間は平気なふりしてたけど…夜になると、身体が熱くなって…お兄ちゃんのこと、思い出して…」
その告白が引き金だった。
僕はもう言葉を返すことすらせず、恵理の細い肩を抱き寄せた。
彼女は一瞬だけ抵抗する素振りを見せたが、すぐに力が抜けて、僕の胸に顔を埋めた。
最初はまだ、控えめだった。
キスも、触れる指先も、まるで壊れ物を扱うように慎重で。
恵理は目を閉じ、恥ずかしさで耳まで真っ赤にしながら、僕の動きに身を委ねていた。




