第一章:崩壊の序曲
「ただいま…」
深夜、重い玄関の扉を開ける。
星野純一22歳の耳に届くのは、静まり返ったリビングの空気ではなく、卑俗な、それでいて絶望的な「音」だった。
一年前まで、この家は希望に満ちていた。
母・由美46歳が再婚相手の藤原佑三45歳を連れてきたとき、僕らは彼を「新しい父」として温かく迎え入れた。
母の勤務先の役員である彼は、物腰も柔らかく、父を亡くしてから苦労続きだった僕たちを救ってくれるヒーローに見えた。
だが、僕が彼の紹介で入社したグループ会社で「あの不祥事」を起こしてから、すべては一変した。
僕のミスは佑三さんの派閥争いの火種となり、彼の職場での立場を致命的に狂わせたのだ。
「…っ、や、めて…お母さんが、起きちゃう…」
キッチンの奥から、妹・恵理18歳の震える声が聞こえる。
僕は動けない。足が床に縫い付けられたように動かない。
僕が起こした不祥事の尻拭いには、莫大な金が動いた。
それを肩代わりし、僕を解雇から救い、警察沙汰を揉み消したのは佑三さんだ。
僕も、そして母さんも、彼に一生逆らえない「負債」を背負っている。
「いいじゃないか、恵理。お前の兄貴が作った借りだ。君が代わりに返すのは当然だろう?」
佑三さんの低く、粘着質な声。かつての誠実な面影はどこにもない。
そこにあるのは、支配欲と歪んだ情欲にまみれた獣の顔だ。
キッチンのカウンターに押し付けられ、受験勉強の参考書が床に散らばる。
恵理が抵抗すればするほど、佑三さんの呼吸は荒くなり、その手つきは卑猥さを増していく。
彼は、恵理が嫌がる姿にこそ、歪んだ興奮を覚えているのだ。
「…っ…ああっ!」
恵理の小さな悲鳴が、夜の静寂を切り裂く。
僕は拳を握りしめ、爪が手のひらに食い込む。
血が滲むような痛みが走るが、心の痛みはその比ではない。
佑三の太い指が恵理の制服のスカートの下に滑り込み、柔らかな内腿をゆっくりと撫で上げる。
彼女の肌は震え、抵抗しようとする足がカウンターにぶつかって鈍い音を立てる。
彼のもう片方の手は恵理の胸元に忍び込み、ブラウスを無理やり押し開いて、発達途上の小さな膨らみを鷲掴みにした。
指先が硬直した先端を摘み、捻るように刺激するたび、恵理の体がビクビクと痙攣し、抑えきれない吐息が漏れる。
「んん…やめ…て…」
と彼女の声が途切れ途切れに響くが、佑三の息遣いはますます熱を帯び、唇を彼女の首筋に押し付けて湿った舌を這わせる。
汗と涙が混じった恵理の味を味わうように、彼は低く唸りながら腰を押しつけ、硬くなった下半身を彼女の下腹部に擦りつける。
空気が重く湿り、卑猥な水音が微かに聞こえ始める中、恵理の目は虚ろに遠くを見つめ、抵抗の力が徐々に失われていく。
「純一、そこにいるんだろ?」
突然、佑三さんが暗闇の中から僕を呼んだ。
恵理を背後から拘束したまま、彼は勝ち誇ったような笑みを浮かべてこちらを見ている。
「見ていなさい。お前の無能さが、妹をどう変えていくのかを…」
僕は、声も出せないまま、ただ地獄のような光景を見つめることしかできなかった。




