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何度でも、君に恋をする  作者: 脇汗ルージュ
3/5

置き去りのメモ

夕方。

悠は頭を抱えながらソファの上で目を覚ました。

「……う、最悪……」


帰宅してからそのまま寝てしまったらしい。頭がガンガンしている。

目の前にあるコップの水に手を伸ばしながら、ぼんやりと昨夜の記憶をたどる。


「……凪、怒ってたよな……」


重い体を引きずってキッチンに向かうが、そこに凪の姿はない。代わりに、テーブルの上にメモが一枚、置かれていた……はずだった。


風の吹き込む窓がわずかに開いていて、メモはそのまま、床へ――いや、風に吹かれてどこかへ飛ばされてしまっていた。


悠は気づかないまま、ソファに倒れこむように座り込む。


「……気持ち悪……」


ポケットからスマホを取り出し、凪に電話をかける。


「んー? どしたー? ?」

「……だるい……」

「やだもう、飲みすぎー!しょうがないなー。今、帰るよー胃に優しそうなもの買って帰るから!」

「んー……ありがと……」

「えー? なにそのテンション? もっと甘えていいのにー!」


ふたりの笑い声が交差する。

その瞬間だった。


電話越しに、

ブレーキ音。

クラクション。

そして、鈍い衝突音。


「……凪?」

スマホを持つ手が、震えた。


「凪!? おい、凪っ!!」


通話は途切れなかった。

ただ、もう返事はない。



ーーーーー



病院の白い壁が、やけに冷たく感じた。

悠の手の中には、落とされたスマホが握られている。

画面には、通話終了の文字。


頭が真っ白だった。

自分の体温がどこにあるのかわからない。

走って、走って、何度も信号無視して、それでも病院の前で足が止まった。


医師に呼ばれた。

ベッドに横たわる凪。

シーツが首元までかけられていた。


「即死でした。……ご家族の方を……」

声が遠い。頭の中で何度も繰り返すのは、最後のやりとり。

『今、胃に優しそうなもの買って帰るから!』

あの声が、まだ耳に残ってる。


膝から崩れ落ちた。


「……うそだろ……」


その晩、部屋に戻った悠は、ぐちゃぐちゃのテーブルの上を片付けもせず、床に倒れ込んだ。

吐くことすらできないほどに泣いた。

涙が枯れたあとの虚無の中、ふと――


飲み会の神社の話を思い出す。


「願いを叶える代わりに、何かを奪う神さまがいるんだってさ」

「生き返らせることもできるってよ」

「でもな、代償は……」


その時、悠の目がかすかに光を映した。


「凪を……返してくれるなら……なんでも……なんでもいい……」


翌朝、悠はふらつく足取りで、ひとり、あの神社へ向かっていた。

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