遅すぎる帰り道
その日の夜、悠は仕事の飲み会だった。
営業部の同量が転勤になるということで、ちょっとした送別会。
居酒屋で騒ぐ同僚や先輩たちの中、悠はグラスを傾けながらも、スマホを何度もちらちら見ていた。
「おまえ彼女に怒られんじゃね?」
「……まぁ、わかってるんだけどさ。たまにはな」
すると、向かいに座った東雲先輩が、ぽつりと話題を変える。
「そういやさ、うちの地元に不思議な神社があるんだよ。願いがひとつだけ叶うってやつ」
「……くだらないっすよ」
「いやいや、まじだって!ただ願いを叶える代わりに、何かを奪う神さまがいるんだってさ」
「生き返らせることもできるってよ」
「でもな、代償は……」
マジでくだらねー、と笑いながらも、悠の脳裏にはなぜか凪の「もし私が死んだらどうする?」という言葉がよぎった。
その頃——
家では凪が、何度もスマホを見ていた。
「何時だと思ってんの、もう……」
ぶつぶつ言いながらも、どこか不安げな表情で、玄関のドアを見つめる。
日付が変わってから2時間経ってようやく悠が帰ってくる。
顔は真っ赤で、千鳥足。
「…バカ、心配したんだからね!」
「……ごめんって。ちょっと飲みすぎた」
「もう……大丈夫?」
「……ちょっと気持ち悪い」
凪は溜息をつきながらも、水を用意し、胃にやさしい"何か"を探すが何もない。
凪はキッチンで小さな紙にメモを残した。
「おはよ!明日お休みだよね?優しい優しい凪様が仕事帰りに二日酔いに効果的なものを買ってくる!今日は寝てなよー」
静かに置かれたその紙は、悠が目覚めると同時に風に吹かれて舞い落ちた。




