星降る夜
たまたま集まったサークル仲間たちと過ごす時間は、私の心を元気づけてくれる。
バカな話をしながら過ごす放課後。傷付いた恋も仲間に笑い飛ばされると、真面目に凹んでいる自分がおかしいのかもと思えてくるから不思議だ。
元気のない私を気遣って、19歳の誕生日を祝ってくれると言う。
傘をさしかけてくれた彼の下宿先は、びっくりするくらい昭和な長屋で、お邪魔するとおじいちゃん家の様な懐かしい匂いがする。
大学から少し離れている事もあり、家賃は安いのに6畳間が2つ。シャワーはないが、たまにネズミに会えるキッチンは広い。
大学生がわいわい飲んで、その後雑魚寝するには最高の会場だった。
炬燵にみんなで足を入れて、誕生日を祝ってもらったあと、飲み物を買いに行こうとジャンケンで負けた私と彼が12月の寒い風の中を歩き出した。
決して言葉数が多いタイプではないけど、いつもはもう少し会話が弾むのに、何も喋ろうとしない彼。
(でもまぁイイや)
こんな沈黙もあまり気にならなくなった仲間って最高。
話もないから2人で空を見上げた。冬のオリオンは誰が見ても主役だ。
その瞬間、オリオンのベルトを対角に切るように光る星が流れた…
彼「流れたっ! よね? 今、見た?」
私「うん。流れたっ! 名古屋来てから初めてかも」
彼「誕生日 19歳 おめでとう。
きっといい歳になるよ。
流れ星からスタートだから。」
私「一緒に見てくれる人居てよかったぁ。
一人で見つけるよりずっとずっと嬉しい!
こんなに嬉しい気持ち久しぶりな気がする!」
はしゃぐ私のテンションとは180度向こう側にいるような低い声で彼が話しだした。
彼「聞いてもいい?」
私「何?何? 願い事はできなかったよ。
スピード早すぎ! でも嬉しい。」
彼「…社会人の彼氏ができたって…聞いた」
彼に聞かれて、いたずらが見つかった子供みたいな、バツの悪い気持ちになる。大して好きかどうかもわからない人と寂しさを紛らわす為に付き合い始めたとは言えない。
気持ちをごまかすみたいにわざと軽いトーンで返す。
私「そうそう。バイト先のファミレスで合った人。」
彼「好きなの?」
私「そっ そりゃぁ、彼氏だもん…」
怒られるのかな?と思うくらい冷たい風が重く感じた次の瞬間だった。
彼「俺も 好きだから」
正直、嬉しかった。
私の魅力でなくて「隙」だとしても、(今は)の前置詞が付いていたとしても俯瞰できないくらい嬉しかった。
けど、その感情を悟られちゃいけないと、平気なふりして言葉を選んだ。
「ありがたい。 ほっんとにありがたいけど、
ごめん…」
あのね、せっかく見つけた大切な仲間だから、恋はしないほうが良いよ。だって永遠なんてないんだから。
(今は)の見えない前置詞が終わった時、せっかくそこにあったはずの友情も無くすよ。
またまた集まっただけ。でも、とっても素敵な仲間達との時間に、どちらかが来られなくなるなんて嫌だよ。
だから…
「ごめんね。 友達でいたい」
星が降ったあの夜、君が伝えてくれた“好き”を大切にとっておけたらよかったね。
自分に自信が持てずに、向き合う事に逃げたあの日の私は…
まだ 19歳。