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大人でもなく  作者: 松あゆみ
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たとえあなたが忘れても

2000年春

“卒業”という二文字だけで、私達は急に迷子になった様だった。右も左も分からない。進むべき方向さえ、一瞬毎に迷ってしまう。


学生時代、そこには手を伸ばせばその手を受け止めてくれる仲間がいた。頼りになるか?と聞かれれば、そんなコトはない。だけど、当たり前のように、呆れるほど一緒に居た仲間。それだけで、心が少しだけ強くなれた。

私達は、一人一人の一歩を踏み出す不安を打ち消す様に、あの日、笑い合っていたんだ。


1996年春

長野から大学進学の為名古屋に出てきた私は、初めての一人暮らしで、毎日の生活だけでまだ必死だ。母さんが持たせてくれた手書きの『お料理レシピノート』キャンパスノートには、唐揚げ、グラタン、ハンバーグ、きんぴらゴボウ、わたしの好きなもののレシピが、母さんのきちんとした文字で書き込まれている。

「自分だけのために、わざわざ作るのもなぁ」

私はため息と一緒にレシピノートに顔を埋めた。


名古屋の春は長野に比べれば随分温かい。入学式に色とりどりのブルゾンで上級生がサークルの勧誘チラシを配っていた。その華やかさに気おくれしそうだと思いながらも、何枚かのチラシを受け取った。

『新入生歓迎コンパ! 花見in鶴舞公園』

チラシの文字を目で追いながら

「桜咲くの、やっぱ早いなぁ」

思わずつぶやいていた。長野なら4月はまだ雪がチラついているだろう。


友達欲しいし、サークルは入らなきゃだよねぇ。行ってみるか。少しだけ怖いような、でも楽しみなような、春は新しい出会いを前にいつもそんな擽ったいような気持ちになる。

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