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長柄武器

 この種類に入れるにはちょっと強引な武器もあるかも……とか思ったりして。

 長柄(ながえ)武器。

 棹状(ポール)武器(ウェポン)とも。

 単純に長物(ながもの)なんて、乱暴に言われる場合もよく見かけます。


 ()(つか)と呼ばれる、持ち手(取手(とって))から長く伸びる棒があり、その先に攻撃を相手に当てる部分が付いている武器の総称。


 (やり)をはじめとして、普通の剣より間合いを長くとれるのが特長で、その長さを()かして立ち回れば剣を相手にして完封出来るのが強み。


 歩兵の剣では不利になる馬上の相手にも簡単に届き、近接戦で大きな優位性をもっています。


 なお、六尺棒や金砕(かなさい)棒や如意棒(にょいぼう)などの、長い棒その物が武器となる物も、この範囲。


 打撃武器の項目で紹介していたモールも、本当はこの種類の武器です。


 長い木の枝に、ナイフ等の刃物を縛ってつけてやれば、即席の槍も作れる。


 それと、この項目では柄が折れにくいような工夫の話は省きますので、そこはご承知ください。



歩兵用槍


 (スピア)

 徒歩(かち)で使うのが基本となる槍の総称。


 歩兵用の槍は実に便利な武器です。


 地上では剣より長い攻撃範囲を持ち、普通の攻撃にも防御目的の牽制(けんせい)攻撃にも使え、刃のついた穂先(ほさき)とは反対側、石突(いしづき)で突けば打撃武器にもなる。

 それだけじゃなくて、投げても使える万能っぷりを見せる。



 スピアはその基本型。

 長い棒と持ち手、それに穂先を付けた物。

 ファンタジー世界では町や街の入り口や城の入り口等を守る、門(ばん)・門(えい)・門(ぺい)等と言った複数の呼び方は有るけど、そう言った人達が持っているイメージの武器。


 片手にとても長い槍、もう片手に大盾をもって重い鎧を着込んだ兵士達が、隊列を組んだファランクス戦法はとても有名。


 攻撃的な使い方なら、槍を片手に持って牽制しながら近付いて、もう片手に持った剣で斬りつけるなんてずるい方法もある。


 もちろんファンタジー世界の冒険者にも槍持ちは沢山存在し、槍による(あざ)やかな戦い方で()せるベテランは、とても頼りになる人がとても多い。


 槍のシルエットは基本一直線な上に槍=突くイメージなので、一本気で実直(じっちょく)な人が持っていると、とても似合う。


 なお日本の槍は穂先の刃はかなり大きく、槍の柄が折れて槍として使えなくなっても穂先近くを持てば、小柄(こづか)や脇差しなどの短刀にも見えて面白い使い方が出来るかも。


 と言うか長い槍だと木の()()()()()曲がる。 それを利用して陣形を組んで()()使い方が主流とかって見たことが有るけど、本当にそうだったのかは知りません。



 西洋で軍用の歩兵槍にはパイクと呼ばれる槍がある。

 別名にサリッサやピケとも。


 これは針みたいだけど長い穂先の槍で、ほぼ万能に使えるのが特徴。


 対騎馬兵用の槍で、対歩兵にも有効な長さだった為か、かなり便利に使われていた様子。


 前述のファランクス戦法に使う槍も、パイクだとも言われている。


 近寄ったら刺してやる気満々の大きくて太い針が威圧感を生む。


 とにかく牽制力が強く、槍の壁として理想的だったとか?


 なので銃が登場してからも、装填の時間を確保する護衛として使われ、装填の時間が短くなり銃剣(バヨネット)と言う銃に装着する近接武器が登場して、お役御免の日が来るまで長く頼りにされたとか。



 他にも穂先だけでなく、柄の途中まで金属製のピロム。


 投げやすく作られた投げ槍(ジャベリン)


 水中用の(もり)として使われる三又の槍、トライデントなども有る。



 どれもこれも攻撃するならとても強い。


 基本は突くだけの武器なので、使いこなす訓練が必要な時間も短くて済む。


 とても頼りになる武器だけど、弱点がもちろんある。


 狭い場所では、つっかえてしまって使えない。


 槍の木製の柄で相手の攻撃を受けてしまえば、すぐに折れてしまう(もろ)さ。


 金属製の柄の槍では、丈夫だが重くて思うように振り回す戦い方は非常に困難で、かつ燃えている物の近くでは火で熱くなりすぎて手が火傷したりする。

 革製のグローブでは熱は防ぎきれず、金属製の小手ではむしろ手全体……鎧まで着込んでいるなら下手すれば全身火傷まであり得る危険性。

 逆に極寒の地でも難があり、現代でも素手で金属を触ると手がくっついて、無理に剥がそうとすると手の皮が剥けるヤベー事が起きる位に危険。 まあこの現象はゆっくり少しづつ温める事で対処が出来るとか聞きますが。


 なので槍が使えなくなった時の備えとなる、補助武器の携帯が必須となる所。


 柄が木製の槍自体は必要になる金属が剣より少なくて安く大量に作れて、しかも強い武器。


 単体より集団で使うと、とても恐ろしいものになる。


 でも防御面では不安が残る事を、忘れてはならないのです。


 少人数で行動する冒険者なんかが使う場合は、特に。



馬上槍(ランス)


 ランスの当て字は、突撃槍の場合もあります。


 基本になる形は、人間2~3人分の長さを持つ長さと丈夫(大体金属製)な柄、それと流線型のシルエットにカップ状の護拳(ごけん)(ナックルガード)。


 かなりの金属を使うために重すぎて振り回すのには向かないけど、槍を突き出して突撃(ランスチャージ)する基本用途からすれば、振り回す必要は無いですね。


 騎兵が馬上でランスを小脇に(かか)えて集団で突撃する姿は、人馬の質量と駆ける馬の速さと馬の(ひづめ)による轟音とあわさり、恐怖の対象ともなったそうな。


 と言うかランスがそんな使い方なので、頑丈じゃないとすぐ壊れて使い物にならなくなるので、総金属製じゃないとランスの役割を果たせないと言うか。


 実際に数百㎏ある馬と、騎兵や馬につける鎧も合わせれば、実におぞましい重さになる。


 その重さで多少馬の足が遅くなったとしても時速30~50㎞位で動く馬に()かれれば、人間なんてひと溜まりもない。 人間(ひと)だけに。


 更にそんな威力をのせた槍で突いてやろうってんだから、突撃を食らう側はシャレにならないでしょう。


 ……え? さっきシャレをかました奴がいる? なんの事ですか?(口笛ひゅーひゅー)


 なお、馬上槍が望ましいけど、別に歩兵用のスピアでも騎兵による突撃は可能。 でも木製の柄では何度も突撃出来る頑丈さは無いでしょう。


 なのでスピアとしても使えて、護拳は無いけどランス並に頑丈な、オクスタンとか呼ばれる槍がある。


 ただ金属製の槍だから重い。 旅に持ち歩くには、負担が大きすぎると言うしかない。


 余談として、宗教画では槍で竜(と言うなの小さな蛇やトカゲ)を倒すものが結構あって、そのイメージから聖なる槍とかはあり得る。


 他にもインドのヒンドゥー教の神様に特別な槍持ちがいたり、北欧神話にも魔法の槍が登場しているので、名前をもった凄い槍ってのは探すとすぐ出てくる。



短槍


 ショートスピア。


 名前通りの短い槍。


 せっかくの剣より長い攻撃範囲を、剣より少し長いか同じ位に切り詰めた槍。


 利点を消してまで持ちたいのか疑問があるけど、持ちたいから持つんでしょうね。


 柄を幾つかに分解可能な短槍は隠し持つのに最適で、暗殺用の道具……暗器(あんき)みたいにも使える。


 どこかの時代劇で、普段は鍛冶屋だけど夜には悪い人を仕事でコロコロしちゃう奴の武器が、まんまコレにあたる。


 他に投槍として使いやすいので、そのつもりで複数本持ち歩くとか言う物好きなキャラを用意するのも面白い。



戦斧


 バトルアックス。


 (きこり)が使う手斧(ハンドアックス)や、日本で材木へ加工するのに使う手斧(ちょうな)みたいな、日常で使う物とは違う。


 長くて頑丈な柄に(大抵は)三日月型の刃を取り付けた、純粋な戦闘用の斧。

 刃は片刃も両刃もあるので、そこで区別は付かない。


 斧は重さも武器になるから、柄まで金属製はよくある話。


 防御目的で剣や槍を押し出して来たなら、その剣や槍なんかを簡単にへし折ってくれる頼もしさは、力自慢にはとてもありがたいモノに映るんじゃなかろうか。


 頑丈にして手入れして(刃を研いで)長く使うため、刃が大きく広い戦斧はブロードアックスとも呼ばれる。


 なおこの種類の斧は剣より攻撃範囲の短いものがかなり多い。

 ……なのになぜ長柄武器の項目に入れたのかは、この直後に紹介する物の前提知識として書いておきたかったから。



長柄戦斧(ちょうへいせんぷ)


 ポールアックス。


 バトルアックスより長い柄を持つ、両手で持たないとブン回せない、ヤベー重さのヤベー斧。


 ヤベーからこそ、威力も当然ヤベー。


 大人数の集団戦になる戦争なら、人が避けるスペースも無いので、殊更(ことさら)に恐ろしく見えると思う。


 こんなのをステータス制の世界で、力があるからと二刀流してブン回したら、それを見た一般人にはどう見えるだろうか(ゲス顔)



パルチザン


 槍の一種だけど三角形の穂先になっていて、それで剣を受け止められるって触れ込みの特殊な槍。


 突くのが基本だけど、その特殊な穂先で重さも有るため、斬ることも可能。



ブージ


 ヴージとも。


 ポールアックスみたいな刃が付いているけど、こっちは切り裂く用の刃になっている。



グレイブ


 日本の薙刀(なぎなた)の仲間。


 どっかの歴史ゲームで有名な武神である髭のおじ様が武器とする、偃月刀(えんげつとう)もこれの一種。


 麦の収穫用の農具である大鎌(サイズ)も、これの仲間と呼べるかもしれない。



ハルバード


 槍、斧、剣、(かぎ)状のピック、(ハンマー)


 どれか2つ3つの要素を入れた、ぜいたくセット。


 大抵は槍と斧と何かなので、槍斧または斧槍、他には複合槍と書いてハルバードと呼んだりする。


 一つの武器で色んな攻撃が出せるために大変便利な武器だけど、攻撃手段の多さからむしろ、どれで攻撃しようか迷ってしまって攻撃のテンポが悪くなる危険性もある。


 鉤状のピックなんて何に使うのかと疑問に思うかもだけど、案外便利だったりする。


 ピックなので別項で紹介した、板金(プレート)(アーマー)(つらぬ)く力があるし、鉤状になっているのを利用して馬上の騎兵に引っかけて引き落としたり。

 ハルバード自体が丈夫で、使う者の身体能力も十分にあれば、某ゲームの壷男みたくハルバードをどこかに引っかけて飛び上がったり出来るかも。


 器用に“使えれば”色んな戦い方が出来るハルバードは、本当に脅威になる。




 (さお)でもポールでも可。


 前置きで書いた棒術で使う六尺棒や、刀をへし折る固さと重さを持った総金属製でイボイボが付いていたりする金砕棒(かなさいぼう)天竺(てんじく)へ向かう旅に同行した暴れん坊のサルが使っていたと言う意のままに長さを調節できる如意棒。


 ほかにも有るでしょうが、人より長い棒でそれを振り回す武器の種類。


 刃物ではないから攻撃力が低いかと思われがちだけど、実際は対人戦なら十分な破壊力を持っています。


 長い棒を振り回す遠心力で人間を()()えれば、当たり所次第で気絶……いや骨折や命を奪う事だって簡単に出来ます。


 打撃の他にも突く事も可能(突き()()のは(とが)らせないと無理だけど)なので、攻撃方法は点でも線でも自由自在。


 剣より遠い間合いからゴンゴンブンブンと自在に振り回される棒は、剣士からすればかなり嫌なもの。

 剣の間合いに踏み込めても、棒の中程を持って小回りの利く振り方で対応されたり。

 鋭い突きを放たれて、避けようと飛び退(とびの)けば再び棒の一方的な間合いに逆戻り。


 もし剣を折れる重い金砕棒を持ち出して変幻自在に操る棒術を会得したならそれは、最強の名を欲しいままに出来るかもしれません。



刺叉(さすまた)


 指叉とか刺又とか刺股とか、平仮名だったり片仮名だったりと、とてもあやふやな存在。


 長い棒の先にUの字の金具(?)が取り付けられた、武器と呼んで良いのか分からない武器。

 江戸時代には存在していたらしい。


 使い方はUの字の金具の部分で、相手の胴や手首や首なんかを捕らえ、壁や床に押し付けて捕縛(ほばく)する。


 その使い方から、投げ物(遠距離武器)を使う相手にはとことん弱いけど、通常の長さの剣までを使う相手ならかなり使える。


 現代では刃物なんてナイフや包丁だし、防犯グッズとして刺叉が有効なのは言うまでもないでしょう。


 ファンタジー世界で使うなら、刺叉で挟んだ相手に電撃(スタンガン)を食らわせるとか、力を吸い取るとかの何か魔法の道具化してやれば使えるかもしれない。

 通常の剣より長い攻撃範囲を持つ武器群。



 剣道三倍段と言う言葉がありまして、これは剣で槍等の間合いが遠い武器相手に勝つには、相手の槍等の段位より三倍の段を必要とするって意味です。


 どっかの漫画とかで、徒手(としゅ)空拳(くうけん)が剣道に勝つには~なんて意味になってたりしますが、実際は前述の意味が正しいみたいで。


 んで、実際にそれだけ攻撃範囲の広さは武器(有利)になる証拠って訳です。


 実際に剣道VS薙刀の試合をした動画とかがあるらしくて、それでハッキリ分かるとか。



 ただ、何度も言った……かな?


 武器の長物は、振り回せる空間が有ってこそ強いのです。


 何も考えずヒャッハーしたら、長物が不利になる場所まで誘い込まれて、ボコボコにされるオチが待っています。



 どんな武器でも使い様。


 でもあんまりにもショボくて、どうやっても使えない物が有るのは、否定しません。


 しかし、使えないと思われた物でも意外と役立つ使い道が有るのも事実。


 長物より短い攻撃範囲の武器相手にはいくら有利だからと言って、意外な武器の使い方で負けるオチを貰わないために、決して油断しないようにしたいですね。

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[一言] やはりリーチ、リーチがすべてを解決する
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