おそろいコーデでキャラメイクしたら、ネームドキャラの双子になりました!?
自由なキャラメイクが売りのMMORPG「ストラストノエル」に俺はハマっていた。
プレイヤーの性別を女にして、毎日着せ替えるほどに。そんなある日、念願のイベントガチャが来た。
白黒ピエロのような、風貌をしたツインテールの美少女――スチュアート。そっくりになれる、いわゆるコスプレ。もしくは真似コーデが手に入るガチャだ。
俺は無口で可憐なスチュアートたんが大好きだった。無理のある課金によって、俺は――ついに、スチュアートコーデを揃えたのである。
画面の向こうにスチュアートと瓜二つな少女がいた。手を振ったり、踊ったりと忙しないが見ているだけで楽しい。
でも、物足りない。髪型も容姿も身長さえ、すべて同じにしたのに……。
俺はなんだかんだ、派手なものが好きだった。
俺が今まで集めてきた課金アイテム……。メッシュ、眼帯、髪飾り、エフェクト、武器――。ああでもない、こうでもないと付け替え続ける。
完成したのは、派手なピエロになったスチュアートだった。白をベースに、虹色が散りばめられている。誰だこれは状態だ。黒がどこかに消えた。
俺ってやつは……。
まあ、可愛いからいいか。スクショを撮りまくる。気づいたら深夜になっていたので俺は寝た。
俺は――。起きたらゲームの世界にいた。夢かもしれない。そういえば、写真撮影の後は――スチュアートの目の前でログアウトしたんだった。
「あ、あなたは……」
夢ってすごい。スチュアートたんが動いて喋ってるよー。俺は男だが、俺の中には乙女が住んでいる。俺の中の乙女はスチュアートの可愛さに感動していた。
「もしかして、私と生き別れの双子……!?」
驚いている顔も可愛い。
「ふふ、そうだよ」
そういうことにしておこう。
「お名前は……?」
「チョコラーテだよ」
スチュアート、チョコラーテ。なかなかお似合いではなかろうか。
「わたしっ、嬉しいですっ、チョコラーテと会えて。私、さみしかったんです……。今まで、ずっと一人で生きてきたから……」
彼女を泣かせてしまった。スチュアートには暗い過去があったような、なかったような。とにかく、励ましてあげたい。
「私がいるから、もう……大丈夫だよ!」
「チョコラーテ――!!」
この場合、どちらが姉で妹なのだろうか? 後で話し合う必要があるだろう。
「チョコでいいよ」
「チョコ……姉さん」
俺の方が姉さんか。随分と、俺にとって都合のいい夢だった。悔いはない。そろそろ――この夢も終わるだろう。
「スチュアート、生まれてきてくれて……ありがとう」
言いたいことは言った。
「チョコ姉さん……!」
言ったんだけどな。
「姉ざん!! ぐすっ……ふぐ……んん」
夢……覚めませんねぇ。夢が覚めるのがこわいな。こわいな、と思いつつ……俺は、できたてホヤホヤの妹の手をとって、はじまりの町の広場から連れ出した。
俺たちの冒険は――これからだ!! 夢、覚めないなぁ。俺は、スチュアートと行ってみたい場所がいっぱいあった。
たとえ、夢の中の出来事であっても、いい思い出になるだろう。これ……夢だよね? なあ、スチュアート。
「夢……みたいだよね」
「そうですね。姉さん。でも、夢――じゃないです。私、姉さんと一緒にいられて楽しいですっ!」
こんなに喋る子だっけ? 楽しそうだから、野暮なことは気にしないでおくか。
「わっふー!!」
奇声を発しながら、俺は妹の腕を掴んで、全速力で門をくぐり抜ける。俺の声――可愛いな。夢の中で声が変わるのは、初めてだ。
「わっふー?」
俺の真似に挑戦するスチュアートも可愛い。
夢が覚めるまで――ずっと、一緒にいようなスチュアート。