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電脳の輝く星に  作者: 朝霧美雲
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「おいお前さ、昨日の配信見たか?」


「すまん!見れなかった!」


朝の賑やかな教室の中。窓の外を眺める私の横で、男子生徒が楽しげに喋る。

煩いと思うわけでもなく、私はただその会話に聞き耳を立てるだけ。机の左端に置かれたノートの名前を見て、自分の名前が特に変わったものでは無いなと感じた。

中学の時に少し変わった名前の子がいた事を思い出す。私は昔、その子と仲が良かった。名前は霧乃宮由比。

それと比べれば、私の松野美羽という名前はそこまで珍しくは無い。




高校入学以来、私は特に仲のいい友達は出来ずにいた。かといって作ろうとも考えていなくて、家に帰ればゲームをして遊ぶだけ。

運動は苦手なわけじゃなくむしろ得意な方。だけど部活動は面倒で、運動部ではなく文芸部の、それも幽霊部員。

先生からは部活に参加した方が友達できるぞってよく言われる。それでも私は家でパソコンのゲームをしていた方が楽しい。


「美羽さん。ゴールデンウィークにクラスメイトで何人か集まってカラオケ行こうと思ってんだけど、来ない?」


「カラオケ?」


クラスメイトの男子の一人に話しかけられ、私は視線を窓の外からその男子に移した。

この人の名前は確か・・・渡邊佑太。女子からも人気が高いイケメンで、こうやってよく女子を誘ってカラオケとかに行っている。


「ごめん、ゴールデンウィークは東京に行くからちょっと」


この人には悪いけど、GWは秋葉原でカメラとかフィギュアを買い漁る予定を組んでいた。

そう。私はこの人とは住んでいる世界が違うわけで、歌う曲もアニソンがメイン。時々平野伸ひらのしんという歌手の曲を歌うくらい。

だからカラオケなんて行けばそっちな人である事がバレる。だから行かない。


「そっか。じゃあまたどっかの日に」


そう言って彼はまた別の、今度はさっき私が聞き耳を立てていた男子二人に話しかけにいく様子を私は眺めていた。

今日も授業を受けて、それが終わって、いつもの様に一人で帰る。誰かと一緒にいたいという事も特に無い。




「ただいまー」


帰宅して誰もいない静かな廊下を歩き、自分の部屋のベッドの横にカバンを放り投げる、

両親は毎日仕事で夜遅くまで帰ってこない。だから私はパソコンを立ち上げると、すぐにゲームを始める。

通話ソフトの画面を開くと、まだ少し早い時間だからか誰もログインしていない。


「ゲームは・・・また後でいいか」


立ち上げたゲームを終了させると同時に、洗面所へ向かい学生服を脱いで洗濯機へ放り込む。

そのままシャワーまで浴び、下着姿のまま居間のテレビを付けた。


『本日、ルーガン空軍で異例の外国人戦闘機パイロットとしての道を歩む、霧乃宮由比さんの』


また、彼女“たち”の話題が放送されていた。由比ともう一人、佐倉静音。

二人は私と同い年にして、既に同期の戦闘機パイロットよりも遥かに飛びぬけた飛行技術を持っているとして、扶桑国内でもちょっとずつ名の知れた存在になりつつあった。


「・・・」


私には彼女達のように人より飛びぬけて優れたものなんてなかった。でも人と話したりするのは好きだ。

かといって接客業のアルバイトをしろと言われれば、そういう事をしたいわけではない。

少し落ち込んだ気分になって部屋へ戻ると、パソコンを消し忘れていた事に気がついた。


「あ、ログインしてる」


画面を覗き込めば、フレンドの一人が私へチャットを送ってきてくれていた。

内容は通話の可否。もちろん今はやる事も・・・宿題が少しあるから、話しながら通話しよう。


『今何やってるの?』


「宿題。その後ゲームやるから一緒にやらない?」


『いいよ!宿題手伝ってあげたいんだけどねー』


通話の相手は顔の知らない一つ歳上の先輩。だけど敬語で話されるのが苦手みたいで、タメ口がいいと言われてる。

話題はころころ切り替わり、今話題のバーチャルライバーの話題へと変わった。


『実はイナヅキちゃんのGWライブチケ当たったんだよ!初オフやらない?』


「嘘っ!?」


私は思わず叫んだ。イナヅキというのはバーチャルライバーの中でも一番有名なライバーで、以前ライブのチケット抽選に応募したけど当たる事はなかった。

急いでスマホの中のスケジュールを見直し、予定されているライブの日を全部消した。この日は本当は秋葉原へいく予定だったけど、そんな場合じゃなくなった。


「オフしようオフ!ちょうどGW東京に行く予定あるし、日程調整する!」


『おっけー!こっちも色々準備するね!』


会話と宿題の両方がほぼ同時に終わり、ゲームをしようとした。だけど画面右下の時計は11時半を過ぎていて、もう寝る時間。

夜更かししたいのは山々だけど、その場合明日の朝遅刻する事になりかねない。


『ゲームしようと思ったけどもう遅いね。通話切る?』


「うん、ごめん。また明日時間があったら」


『はいさはいさ、じゃあね』




「群青の空へ」の数年前の、別の人の物語を書いていくのですよ

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