開幕の物語
ー7月16日朝
『昨夜未明、ーーー』
朝、テレビのニュースを見たときあぁ、やっぱり起こるのか…。
渉はCarrierの言ったことを信じていなかったわけではなかったがそれでも心のどこかで起きてほしくないと思っていたが起こってしまった。
起こってしまった以上Carrierの手助けをするほかない。
「Carrier頼むぞ、このままなのは悲しすぎる…。」
ー7月16日 夕方
『あれ…?ここは…。私はいったい…。』
思い出そうにもどうも学校から帰る辺りからの記憶が曖昧なようだ…。
『えーと…。』
私は○○○○と○○に交差点を渡ろうとして…。いや、私は一人だったはず。
『あっ…。』
あのとき私は走ってた車に跳ねられて…。
『私…。死んだのかな…。』
甦ってくる衝撃と動かない体。そして落ちてくる意識…。
あー、思い出した…。
『もっと生きたかったな…。もっといろんなことがしたかったな…。』
思い出してしまいそしてもう叶わないと分かりながらも思ってしまう。
とそこに
「おぉ、やはりここにいたね。お久しぶりというところかな?」
『えっ…?』
声がするほうに顔を向けるとそこには10日前ぐらいに会った少女がそこにいた。
『私が見えてるの?』
「あぁ、見えてるとも。お久しぶりだね。お嬢さん…。いや、神崎由香さんと呼んだ方がいいかな?」
『えっ…。何で私の名前を…?』
「ん?あぁ、君の学校の先生に聞いただけだ。おっと、名乗るのを忘れてたね。初めましてというのも変かな?僕はCarrier。魂の運び屋さ」
驚いた。まさかあのときの少女が都市伝説のCarrierだったとは…!
「さて、私は君を体に戻す為に来たんだけどその前にやらないといけないことがあってね」
『えっ?私はまだ生きているの…?』
「ああ、君は運よく一命をとりとめたけど意識不明の重体ってわけさ」
『ってことは私…。まだ生きられる…!』
「といってもすぐとは言えないんだけどね」
どういうことだろう?
すぐに運べない理由って…?
由香は悩んだがよく分からない
「理由は簡単。記憶が欠落している状態で戻すと不具合が出てしまうんだ」
『というと?』
「魂が定着しないというのかな?記憶の欠落がさらに酷くなるんだ」
『そうなのね…』
「だから探そう。タイムリミットは今から一週間。それを過ぎてしまったら最後。君は死んでしまうよ」
Carrierを見てもふざけていってるわけでもないことは分かるがそれでも由香は言いたいことがあった。
『でも、私覚えてるよ。交通事故で跳ねられたんでしょ?私』
普段はきちんと気をつけているはずだったのだがあの時は何故か飛び出してしまったのだ。そこに理由はないような気もする。
「交通事故…。まぁ人身事故だね。そこは思い出したんだ。でも、君は真実から目を背けてるよ。君はあのときー」
Carrierが言いかけたとき車の音でかきけされた。
『えっ?何て言ったの!?』
「うん?言葉が届いてないのだったら君は他人からは教えてもらえない。自分で思い出すしかないんだ」
まるでそれが当たり前のように目の前の少女が言った。
「でも、そうだね。ヒントをあげよう。君が一人であったならあの事故は起きなかったんだよ」
『えっ?』
正直驚いた。どういうことだ?私が一人だったら起こりえなかった…?でも、あのとき私はひと…。
そこで急に頭に痛みがはしった。まるで思い出させたくないかのように。
「あー、無理をしないようにね。君の魂が揺らぐと病院で横たわってる体の方にも影響が出てしまう」
『うん…。わかった…。』
「焦ることもない。時間もそこまであるわけではないけどマイペースでいこう。ここからは僕と君の物語だ」
そういってCarrierと名乗った少女は謳うように歩き始めた。
『えっ?どこにいくの?』
「ん?僕の家だよ。おいで、そこを拠点に君の記憶を探す旅の始まりさ。ただ、もう遅いからゆっくり休もう」
『えっ?あっ…。うん…。』
いつもは振り回す方だったのに今では振り回される方だ…。なんでこんなことにと考えた時に違和感を感じた。
あれ?あのとき私一人だったはずだけど…。でも、誰か私の後ろにいたような…?いやそのはずがない。私には○○がいるはずがないのだから。
「おっ、ふーん」
振りかえるとCarrierが驚いた顔をしていた。そしてすぐに笑顔になった。
あっ、こんな顔もするんだ。
由香はCarrierの別の一面を見れたような気がした。
「この調子ならすぐに思い出すかもね」
『えっ?』
こうしてCarrierと由香はCarrierの家に向かい歩きだした。
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