序章
とある学校で女子生徒Aと女子生徒Bが放課後の教室で楽しく談笑をしていた。
「ねぇ、Carrierって知ってる?」
と女子生徒Aが話をきりだした。
「キャリアー?…経歴ってこと?」
「違う、違う。Carrier。運び屋。」
「それがどうしたっていうのよ」
「都市伝説で知らない?Carrierは魂を運んできてその魂がやりたかったことをやらせるんだって」
「へぇ」
「興味がなさそうね」
「まぁねぇ」
「まぁまぁ聞いてよ。そのCarrierはね、何度か人を蘇らせたことがあるんだって」
「…どういうこと?」
「お!気になる?えっとね、その人は植物状態だったり死後すぐだったりとまちまちだったんだけどCarrierがね、運んできてその人を蘇らせたんだって。そして去り際にこういうの」
「『代償は頂くよ、後悔のないようにね』でしょ?」
「えっ…!?」
女子生徒が顔をあげるとそこには一人の少女が立っていた。
見た目はブロンドのロングヘアーで紅い瞳が特徴的でありこの世の者ではないようなそうではないような美しさを持っていた。
「おっと、ごめんね。驚かせたかな。その話気になるから教えてくれると嬉しいな」
と少女は聞いた。
「えっ…。あー…。いいよ」
と女子生徒Aは驚きながらも答えた。
「(いつの間に?)えっとね」
と女子生徒Aが話そうとするとき
「ふふ、君たちが話始めた辺りからいたんだよ。盗み聞きするつもりはなかったんだ。ごめんね」
えっ…。あのときは私とAしかいなかったはず…。
女子生徒Bが覚えてるかぎりではその時は誰もいなかったはずだしこんな少女がいたら気づくはずなのにと。
「でね、Carrierが去った後その人は息を吹き替えして寿命をまっとうするまで家族との時間を大切にしながら生き続けたんだって」
「へぇ、面白い話だね。それ」
「でしょ!でしょ!それでね!」
女子生徒Aはきちんと話を聞いてくれたのが嬉しいのかそのまま話がヒートアップし少女は相づちをうちながら聞いていた。
おかしい…。あの娘の着てる制服ってこの学校の物と違うような…。
と女子生徒Aのお話相手になってる少女を見ながら女子生徒Bは観察をしていた。
どこの学校の制服なんだろう…。
お嬢様学校の制服みたいな高貴さが伺える。
「おや、時間は大丈夫なの?もうそろそろ18時をすぎるよ」
「あ、やっばぁ…。楽しくて話しすぎちゃった!帰るね!ごめんね!」
「いやいや、僕も楽しかったよ。ありがとう」
と少女はクスクスと笑いながら答えた。
あぁ…。綺麗だな…。
女子生徒Aと女子生徒Bは少女は窓際にいたのと夕日に照らされるのが合間りその姿がとても綺麗に思えた。
教室を出る前に女子生徒Aは振り返り
「またね!今日はありがとう!」
と大きく手を振った。
「うん、またね。僕は君とどこかでまた会う気がするよ」
と少女は手を振りながら言った。
どういうことだろう?
女子生徒Aは少女の言葉に不思議に思いながらも女子生徒Bと教室を後にした。
誰もいなくなった教室で少女は一人窓際で外を見ていたとき一人の先生らしき人が入ってきた。
少女は先生らしき人の方に振り向いた。
「やぁやぁ、渉君。僕の望みを叶えてくれてありがとうね」
「いや、いいんだが。急にどうしたんだ?Carrier。お前から俺に連絡をするなんて」
と先生らしき人はため息をつきながら答えた。
「あの娘。あの娘からね感じたんだ」
Carrierと呼ばれた少女は窓の外を見ながら答えた。
「あの娘?どっちだ?」
渉と呼ばれた先生らしき人はCarrierの隣まで行き窓の外を見た。
「あっちの娘だ。近いうちに体から魂が離れる事が起こるね」
と眼を細めながらCarrierは言った。
「よくないね、とてもよくない。僕としてもめんどくさい事には巻き込まれたくないが起こると分かってしまっている以上関わらずにはいられない」
面白そうにクスクスと笑いながらCarrierはそう言った。
あぁ…。あの特殊能力か…。
渉は納得した。
「なるほどな、だからか。俺に学校に入れるようにしてくれと頼んだのわ。お前なら俺に頼らずとも入れそうなんだがな」
と渉は皮肉たっぷりに言った。
ここ数日Carrierにちょくちょく呼び出されていたのもありストレスが溜まっていたのだ。
「あはは、さすがの僕にも無理だよ。コネがないと」
「嘘つけ。俺を運んでくれた時だって様々な公共施設の中や警察署内を闊歩してたくせに」
「それは僕が助けた代償として融通を効かせて貰ってるにすぎないよ。渉君。僕はね、そこら辺の人間と変わらないんだ。ちょっと特殊な力があるだけで」
分かってはいる。Carrierを初めて見た時からそして運んでもらったときからただ他の人にはない力を持ってしまっているだけなのは。
「ちょっと意地悪を言ったな。すまん。だが、その見た目ならJKでも通じるだろ…」
「僕もね自画自賛になるからあまり言いたくはないけどそこら辺のJKよりは可愛い自信もあるし見られる自信もある。けどね、それと不法侵入を天秤にはかけたくないかな」
ごもっともである。
「うん、そうだな。確かにそうだ」
「話を戻すけどあの娘は近いうちに魂が体から離れてしまう。そうだね、期間でいうと今日が7月5日だから…。7月15日かな?10日後だね。」
「ということはその日にもう一度入れるようにしろということか」
「さすが渉君。話がはやい!」
「さすがにそこまで言われればわかる。バカじゃない」
ただ、渉はいまだに理解不能だった。あんなに元気に走って帰っていた娘がそのような事態になるのか。いや、分かってはいる。理不尽に悲しい出来事が起こることは。
「渉君、君は分かってるはずさ。君自身が体験したんだ。この世は残酷だよ。ほら、あの漫画でも言ってたでしょ?」
あの漫画とは大人気の巨人を駆逐する為に大奮闘する漫画のことを指しているのだろう。
「あぁ、分かってはいるさ。ただな、その理不尽さに怒るのはいけないのか?」
「悪くはないさ。世の中は理不尽で残酷。僕たちはその中で生きてる。一々怒ってたらきりがない。無駄さ」
ふふと笑いながらCarrierは答えた。
渉から見えるCarrierにとても綺麗で儚く壊れそうなイメージを持った。
「そうだな…。」
と、そしてつい渉はそのまま口を滑らしてしまい
「全く達観しているな。同い年とは思えない」
渉は今20歳なのだ。Carrierのいうことを信じるならCarrierも20歳なのだ。渉はそうやって割りきれない為につい口走ってしまった。
「あはは、まぁね。何度も何度も魂との会話を繰り返してるとね…」
外の景色を見ながらCarrierは続けた。
「渉君。君には届いてないかも知れないけど今でも僕に魂は訴えてくるんだ。助けてくれ、怨みを晴れさせてくれってね。」
…あのときもそうだった。あのとき体から魂が離れ幽体離脱状態になりまだ生きたい、死にたくないと叫んでた時に彼女と…。Carrierと再開した。
「あぁ…。お前には聞こえてるんだもんな。魂の声がいや、幽霊となった人の声が」
「そういうことさ。他の人の倍の数の出会いを重ねれば誰だって達観するよ」
「なるほどな」
「脱線しちゃったね。話を戻すけど悪いね、渉君。教育実習生の君にこういうことを頼むのは」
「いや、いいさ。君に運んでもらった代償なんだ。こんなことぐらいなら引き受ける」
渉自身も一度Carrierに運んでもらっているのだ。その代償としては少ない方だろう。
「ありがとうね。渉君。」
Carrierの笑顔に渉は顔を赤くしながらあぁ…。と一言返すので精一杯だった。
その事にCarrierは気づいてクスクス笑いながら渉を見ていた。
「渉君!この後暇?」
「あぁ、またパフェが食べたいのか?」
「うん!ダメかな?」
「いいさ、そんぐらい」
やったねと言いながらCarrierは窓際から離れドアへと向かった。
その後Carrierとカフェでお茶をしながら過去の思い出を語り合うがそれまた別のお話。
ーそして10日後
学校出てすぐの交差点でピーポーピーポーと救急車が近づいてくる音がする。
「しっかりしてよ!ねぇ!」
女子生徒Bは涙流しながら女子生徒Aを揺らしている。
「お嬢さん、絶対に助けるから一旦どいて!」
「A!A!ねぇ、起きてよ!!!」
女子生徒Bの叫び声だけが悲しく響いた。
ここまでお読みしていただきありがとうございます。
まだまだ拙い文ではありますが応援していただけると嬉しいです。
書き込みは見る人がいるかもしれませんのでなるべく言葉を選びながら書いていただけると幸いです。