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戦火のノエチェゼ

「無事でよかった」

 ロファメト邸から少し離れた場所で、ようやく再会を果たすことが出来た。


 久しぶりのフィフジャの顔は、安堵と困惑とが入り混じっている。

「このままだと何があるかわからない。ここを離れよう」

 再会を喜ぶ暇もなく、フィフジャはヤマトにそう言った。

 昨日、アスカにも再会を喜んでもらえなかったが仕方がない。状況が最悪だ。

 町のあちこちで暴行、略奪、喧嘩騒ぎ。

 ノエチェゼの町について、治安が悪いという話を聞いた時に想像したよりも遥かに悪い。


「ええと……後で説明する。赤い服の兵士が敵」

「そうか。とにかくこの混乱は収拾がつかない」

 お蔭でスカーレット・レディのことも混乱に紛れてしまっているようだが。

 理由など無関係に、どこから狂気に駆られた人が襲ってくるともわからない状況。この町全体がこの狂騒に飲み込まれていきそうだ。


「あ、僕の荷物」

 アスカの手にヤマトのリュックサックがあった。

「奴隷の人が用意してくれたのよ。グレイを見て」

「ああ、ギャーテさんかな」

 グレイを連れていることで、ヤマトが探していた仲間だとわかったのだろう。

 町がこの状態で、もし出ていくなら荷物を持っていくべきだと判断してくれたのか。

 気が利く。そして親切だ。


「あの家は大丈夫だった?」

「奴隷の人たちが守りを固めていたから大丈夫じゃない?」

「ああ、守る人数がいれば、暴徒が押し入るには難しい建物だ。まとまった兵士でもこなければ平気だろう」

 まとまった兵士と言えば、プエムの兵士だろうが。今は町のあちこちで戦闘中だ。

 本当に、後先を考えていない。


 ヒュテは、確かに後先を考えていなかったが、戦闘行為そのものはジョラージュ周辺に絞っていた。

 プエムは違う。この機に邪魔者を一掃する為に、町のあちこちで戦闘を起こしている。

 だから混乱の広がりも早いし、収拾が付かない。

 このままでは勝ってもボロボロの町が残るだけだが。


「クックラは?」

「チザサの家に置いてきたの。ええと……」

「いや、わかった。仕方ない」

 差し当ってとりあえずの危険がなさそうな場所に置いてきたというのなら、その判断でいい。

 いつまでも連れて歩けるわけでもない。

 一緒に来た方が安全か、そうではないか。全くわからないのだから。


「とにかく町の外に向かう。いいな」

 フィフジャの言葉は、ヤマトがこの町に心残りがあることを知っているかのようだったが、散々迷惑をかけた後で反対するだけの意思は持てなかった。

 ヤマトの迷いを断ち切る為にラッサは言ったのかもしれない。アスカを連れて町を出ろ、と。

 どうしても戻りたければ、アスカを安全な場所に連れて行ってから一人で戻るべきだ。

 それならきっとラッサも許してくれるだろう。



「見つけたぜぇ」

 しつこい。

 そんなに執着されるほどの関りはなかったと思うのに、

 ある程度はラッサたちから引き離したかったので完全に見失わない程度に走っていたのだが、途中で姿が見えなくなったと思ったのだが。

「町の外に逃げるだろうってな」

 その可能性に張って、ヤマトの逃げた方角から門に向かう側に先回りしていた。


「僕と会ったのって二度目なのに、なんでそんなに戦いたがるの?」

 面倒だとは思うが、進行方向に立ち塞がられてしまっていて迂回しにくい。今更後戻りするのも暴動の中心部に向かうことになる。

 門に向かう道は広い。避けていきたいところだが。

 フィフジャとアスカの方をちらりと見るが、顔をしかめてヤマトに何とかしろという顔をしていた。

 事情を知らないので。


「お前、相当な腕だろ。俺にはわかる」

「そりゃどうも」

 褒められた。

 何がわかるというのか。ちょっと見ただけで相手の強さがわかるとか。

「ヤルルーの旦那より腕が立つ奴なんざ、そうそういねえ」

「はあ」

 何の話だろうか。

 赤帽子のことだとはわかっているが、別に腕比べをしたわけでもないのだが。


「そこの小娘がお前の妹だってこともわかってんだ。兄貴のお前がさらに腕が立つってのもな」

「はあ?」

 アスカが不満そうな声を上げた。ヤマトより下と位置付けられたことに異論があるのだろう。

 というか、アスカの強さがどうとか意味がわからない。


「何を言って……」

 不思議に思ってアスカの顔を見ると、何か思い当たることがあるようで、フィフジャと共に苦い顔をしている。

 まるで根拠がない、というわけではなさそうだ。


「ヤルルーの旦那は雇い主だからよ、やるわけにはいかねえ。他の御三家の当主ってのもそういう機会はねえ。そこの小娘は旦那のところに連れてこいって話だからな」

 どういう話なのだろうか。ヤマトには話が見えてこない。

 ただ、どうにも戦う理由はないこともないらしい。


「何やったんだ、お前」

「ヤマトに言われたくないし」

「すまない、俺がついていながら」

 フィフジャが謝ってくるが、彼のせいなのだろうか。

 どうであれ、アスカを引き渡すわけにもいかないのだから、そう思えばヤマトも遠慮をする必要はなくなった。


 大通りにいた人々が、珍しい見世物だというかのように集まってくる。

プエムの兵士とギハァト家の戦士が、魔獣を連れた旅人と戦おうとしている。興行としてはまずまずなのかもしれない。

「妹を連れていってどうするんだ?」

 どさり、とリュックサックを地面に置いた。

「そっちは知らねえよ。まあ愛玩ってことだろ」

「…………」

 ロリコン、と思ってから思い出す。ヤルルー・プエムはそうだった。


「俺は、お前を斬れればいい」

 本当に、どっちも迷惑な変態だ。

 変態の雇い主に変態の雇われ戦士。この分だとヨーレンとかいう弟も何かしらの変態なのだろう。

 しかしこの変態は相応の腕前らしい。どこまでも迷惑な。


「フィフ、アスカをお願い」

「大丈夫か?」

「たぶんね」

 他の兵士が手出しする様子がないのは、一対一の対戦をゾマーク・ギハァトが望んでいるから。

 観衆も、それがわかっていて遠巻きに見ている。

 乱戦になったらその方が予測しにくい。観衆も暴徒になり、入り混じった中で思わぬ攻撃を受けるかもしれない。

 やるなら、とりあえず一対一でゾマークを倒してしまった方が安全だ。


「じゃあ、やろうか」

「また逃げんじゃねえぞ、坊主」

「イダ・ヤマト」

 念を押されたのは前科があるから仕方ないとして。

 名乗る。

「……ゾマーク・ギハァトだぜ」

 雰囲気を察したのか、ゾマークも名乗り、曲刀を横に構えた。


 空気が薄くなるような感覚。

 周りは決して無音ではないはずだが、ヤマトの耳には雑多な音がやや遠くなったように感じられた。

「いくぜ」

 踏み込み。

 速かった。七歩ほどの間が一足で詰められる。

「!」

 石畳を弾くゾマークの蹴り足にやや驚きながら、曲刀の軌跡を目で追う。

 無造作とも思える横薙ぎ。だが無駄のないその動作は速い。


「ふんっ」

 だが見えている。ヤマトの槍の柄がその刃を跳ね上げる。

「おぉ」

 かなり強めに跳ね上げた。武器を手放すかと思ったが、弾かれた強さに驚くだけで、手放しはしない。

 左手一本で、一度上に跳ね上がった曲刀を今度はやや下段から振り上げてくる。掬いあげるように。


「そんなの」

 後ろに下がってその剣閃から離れる。

「っ!?」

 衝撃があった。完全に回避したはずのその軌道から。

「そこだぁ!」

「くうっ!」

 距離を詰めて、今度は上段から振り下ろそうとするゾマークに、ヤマトはさらに距離を詰めた。

 曲刀の間合いよりさらに近い位置。肉薄したその状態ではヤマトの槍の方がより使いにくいようだったが。


「はぁっ!」

「ぶぉ!」

 ヤマトの気迫の一息と、ゾマークの肺から絞り出される空気。

 腹を打ったのは、ヤマトが極端に短く握った槍の石突。

 槍の先端側はヤマトの後方に長く伸びている。


「ぐ、ぇ……」

 苦し気に息を吐きながら下がるゾマークに、ヤマトも少し距離を取った。

 一気に攻めても良かったのかもしれないが。


「つ、ぅ……」

 見れば、左胸から肩にかけて斜めに裂けている。

 服が裂けて、ヤマトの肌から血が垂れていた。

「魔道具か!」

 フィフジャの声に、観衆のどよめきも重なった。


 下段からの切り上げてくる一撃は避けたはずだった。どうやらその先に延びるような斬撃らしい。

「KAMAITACHI」

 風の刃とでも言うのだろうか。傷口を手で触れるとひりひりとするような痛みがあった。

 あまり深くはない。表皮を斬られた程度だ。服を斬られたことの方がショックなくらいで。


「……やるじゃねえか。やっぱりお前、おもしれえな」

 腹をかなり強く突いたつもりだったが、ゾマークは口元を拭いながら笑うだけの余裕があった。

 普通の人間なら悶絶しているはず。

「僕は面白くないんだけど」

 破れた服のことで少し憂鬱な気分になりながら応じる。


「じゃあ、こっからは本気だぜ。簡単に終わんなよ!」

 これまでが何割の力だったのか不明だが、踊りかかるゾマークの狂気は数割程度増しているように感じるのだった。


 速い。

 ゾマークの剣は速いし、右と思えば左といったように息を吐かせぬ連続攻撃に目が追い付かない。

 上品な剣術というわけではなく、どうやったら人を斬れるかということを考えて――考えてはいないかもしれないが、とにかく本能でそうしている。

 ヤマトも、槍を突く暇がない。


 どうやら風の刃のようなものは、曲刀を振りぬいた時にしか発生しないらしく、受け止めたり弾いたりした時にはなかった。

 両手で振りぬいた時の方がより威力が強く、遠くまで届く。

 ヤマトが最初に受けたのが左手一本で、風の刃が上方に向かって抜けて行ったのは幸いだった。

 まともに受ければ深手になる。

 両手で振り下ろした際には、石畳にさえ人差し指くらいの深さまで傷跡を残していた。

 生身でくらえば下手をすれば腕を落とされる。


(これが怖くて周りの兵士は距離を取っていたんだ)

 随分と規則正しく距離を保つものだと思ったのだった。

「だけどさ」

 ヤマトは思うのだ。

 フィフジャの言ったことはやはり正しいと。


 ――槍に頼りすぎだ。


 大森林で戦っていた時にそう言われた。そういう自覚はなかったが、その後から意識的にこの愛用の槍を道具の一つだと割り切るようにした。

 そうしてみて初めて、頼っていた部分や、手にした武器を中心にしすぎて視野が狭くなっていたことに気が付いた。


 有用な武器も道具の一つに過ぎない。

 生身で出来ない部分はそれを活用するとしても、それ以外の選択肢も常に考える。

 ゾマークは違う。

 確かにこの曲刀を振るう腕は侮れないが、どうにもそれだけだ。

 だから対処できてしまう。彼と同じ程度の速度で動けて、彼と同じ程度以上の反射神経があれば。


「ぬぁぁぁぁりゃあああっ!」

 横薙ぎを受け止めたヤマトの槍ごと強引に押し込もうとするゾマーク。

 その力も身体強化をしているのか非常に強力だ。

(でも、巨大ブーアほどの突進力じゃあない)

 比較対象として適切かどうかはわからないが、ヤマトが槍から感じる力はそこまでではない。

 両足で、踏み留まることも出来る。

 拮抗したところから、一気に押し退けることも。


「はああぁつ!」

 全力で、一気にゾマークの体を吹き飛ばす。

 たたらを踏んで後ろによろけるゾマーク。

 その額には疲労の色と共に戸惑いの表情が浮かんでいた。


「て、てめぇ……」

「ヤマトだ」

 軽く槍を振ってもう一度名乗る。

 ゾマークの右手が強く握られ、ぶるぶると震えた。

「なんで……なに手ぇ抜いてやがるんだ」

「…………」

「今だって俺を斬れるだろうがよ。その槍で突き殺せただろうが!」

「なんで簡単にそんなことを言えるんだよ!」

 ヤマトも言い返す。


 否定はしない。押し返して姿勢を崩したゾマークを突き殺すことも出来ただろう。

 だが、出来たからといってそうするかどうかは別の話というだけで。

「バカか、戦ってんだぞ!」

「僕は別に戦いたくなんかないんだよ、あんたと。追ってこなければそれだけじゃないか」

「ふざ、け……殺さなけりゃ殺されるかもしんねえだろうが!」

 ヤマトの言葉が率直だったせいか、ゾマークの言葉も稚拙なものになる。


 単純な理屈。

 だがそれはゾマークの理屈だ。

「あんたのそれは怖いからだ。殺されるのが怖いから先に殺すってバカバカしい」

「ば、か……」

「弱いからだ! あんたは弱いから、相手を殺さないと怖くてたまらないだけの弱虫だ!」

 苛々する。

 相手がバカだから苛立つなんて初めての経験だった。


「死んだらお終いなんだ。自分も、他の人も。簡単に殺すとか言うな!」

「あ、あまっちょろいこと言ってんじゃねえぞガキが!」

「僕はお前なんか怖くない!」

 槍を突きさす。

 石畳に。


 とんっと乾いた音を立てて、石槍が石畳に突き立つ。軽く突いただけだが、いつも通り相当な貫通力だった。

「そんな武器に頼って人を斬って強いような顔をしてるだけのお前なんか怖くないんだ」

「なめやがって……」

 ちらりとアスカの方を見ると、軽く肩を竦めるだけだった。

 フィフジャは困った様子だったが、アスカが心配していないので諦める。

 グレイは静かに座っている。ヤマトの戦いをきちんと見届けるという風情なのが少しおかしい。

 信頼されている、のではないかと思う。


「来いよ、ゾマーク・ギハァト。遠慮しなくていい」

「……ぶっ殺してやる」

 ゾマークが両手で曲刀を構える。中段、向かってやや右斜め。

 やや前傾の姿勢で足に力を溜めて、一気に解き放つ。


「死ね!」

 踏み込む前だった。

 踏み込むより前に、薙ぎ払った。

 見えない風の刃がヤマトを襲うのと共に、そのすぐ後ろからゾマークの二撃目が猛烈な勢いで襲ってくる。

 一人時間差とでもいうのか。先に撃っておいてその後ろから飛び込んでくるとは。

 そんな使い方もあるかと思わずヤマトは感心してしまった。


 最初に振るわれた刃はヤマトの胸の高さあたり。身を伏せて躱す。

「そこだぁ!」

 風の刃の軌道を避ける為に身を低くしたヤマトに向けて、ゾマークの曲刀が振り下ろされる。

「陽炎」

 別に言う必要はなかったが。

 せっかくの見せ場だ。この町では全く活躍の場がなかったけれど、今この瞬間はヤマトが衆目を集めている。

 振り下ろす刃はヤマトを捉えていた。身をひねってもまだ、肩口あたりを切り裂いて重傷を負わせていたかもしれない。


「なっ?」

 だがもう半歩でもズレたなら。

 振り下ろす曲刀はヤマトの体をすり抜けるように石畳に叩きこまれ、目標を見失ったゾマークはつんのめるように重心が前に傾く。

「にぃ?」


 慌てて体を引き戻そうとするゾマークの足を、後ろから思い切り掬い上げるように蹴り上げた。

「うぉぁっ!?」

 上半身を引き戻そうとしていた力と、アキレス腱辺りを後ろから蹴り上げられた力で、ゾマークの体が宙に浮く。

 水平に。

 その上に、両手を握り合わせて振り上げるヤマトの姿があった。


 バランスを崩したゾマークの腹に向けて、全力を込めて両手でハンマーを振り下ろすように叩きつける。

 そのまま石畳まで打ち付けるほどの力で。

「やああああぁぁっ!」

「ぼうぇっ!!」

 ヤマトの両拳と石畳に挟まれたゾマークの体躯が悲鳴を上げて、臓腑にあった空気と共に唾を吐いた。

 そして、そのままぴくりとも動かない。

 がらんと音を立てて宙を舞っていた曲刀が転がった。


「イダ・シンリン流、大槌」


「……何それ」

 言ってみただけだが。

 何となくうまく決まったような気がしたので。技名は咄嗟に浮かばなかったけれどとりあえず。


「おぉ、あの小僧がゾマークを……」

「すげえ、今の見えたか?」

「なにもんだあの小僧。イダシンリンリュウって……」

 観衆にも少しウケたみたいで、良かったのではないか。


 とりあえず殺したつもりはないのだが、最後は加減をしなかったので、もしかしたら命に別条があるかもしれない。

 頭に血が上って色々と言ってしまった手前、死んでいないといいなとは思う。

 少なくとも当分はまともに動けないはず。内臓にダメージがあるかもしれないし、叩きつけた際に骨にもいくらか損傷があっておかしくない。

 受け身が取れる体勢ではなかった。


「僕の勝ちだね」

 石畳に刺していた槍を引き抜く。

 ゾマークの傍に兵士たちが駆け寄ってきた。こちらへの攻撃の意思はない。

 ほかの観衆も恐る恐るといった風にゾマークの様子を窺っている。

 かひゅ、という呼吸音が聞こえた。少なくとも呼吸はしている。

 白目を剥いて完全に力を失ったゾマークの姿に、観衆のどよめきがやや大きくなり、ヤマトの戦いぶりを賞賛するように広がっていった。


 暴動のことよりも、今だけはこの戦いの余韻に浸るように。

「…………」

 もう大丈夫かな、と思ったところで、中年から老年の間くらいの小柄な男が歩み寄ってきた。

 さきほど転がったゾマークの剣を拾い上げる。

(あれ高いのかな? 盗まれたら……)


「逃げろヤマト!」


 何と言われたのか。

 言われた時には既にヤマトは槍を盾のように構えていたと思う。

 構えたと思った時には、既に鮮血が舞っていた。


「ヤマト!」

 アスカの悲鳴。

(悲鳴?)

 なぜ悲鳴を、と考える意識が遅い。

 順番がわからない。

 どういう順序で物事が進んでいるのかわからない。


「あ……あ、ああ……っ……」

「ふむ、槍ごと真っ二つかと思ったが」


 二本、足りない。

 槍を握る指が、二本足りなくなっている。

 見えないほどの速度で、巨大ブーアの突撃を超える力で振るわれた曲刀が、構えた槍を押し込んでヤマトの右手の小指と薬指を宙に舞わせていた。

 真っ赤な鮮血と共に。


「中々腕が立つようだな」

 小柄な男は、まるで人を斬るのが自然なことのように、何でもないように、己が振るった曲刀の刃を眺めていた。


  ※   ※   ※ 


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