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第二十話 ナルキサの救出劇(1)

 リョゼが口にしたクロガネのアジトとなっている街の名はーーナルキサだった。

 ナルキサは炭鉱の街として知られており、石炭や鉄鉱石、その他にも様々な種類の魔石の採掘が行われ、それを他の街に売り出したり、逆に食料品などを買ったりして経済を発展させてきている。しかし、それは表の顔で、実際は違法薬物や貴重な盗品などの売買が行われており、闇社会に出入りしている人間が、我が物顔で街中を闊歩しているらしい。


「なぜ、そんな大それたことができると思う?」


 リョゼの問いにしばし頭を悩ませてから、エデルは答えた。


「クロガネが、街の人々を力で支配しているから?」


 言うと、リョゼはふっと笑みを見せた。


「惜しいな。正解は、街の人々全員がクロガネのメンバーだからだ」

「それは、力で支配して、ということなのか?」

「いいや。そもそも、ナルキサという街は、闇ギルド・クロガネによって作られた街なんだ。そして、それがそのままアジトになった。クロガネという組織は、それから代々受け継がれ、今のドーブルクという男は十六代目だ」

「そんなに歴史があったんだね」とミーシャが驚いた顔をして言う。

「表社会ではあまり知られていないことではあるがな」とリョゼは肩をすくめた。「だから、ナルキサは非常に閉鎖的な街で、他の移住者を許さず、勝手に住み着こうものなら、街の人間によって殺される」


 エデルとミーシャは、互いに困惑した顔を見合わせた。


「それぞれの街には、それぞれの法律があるだろう。つまり、これがナルキサという街の法律ルールなんだ」

「そうして得た利益は、どうなるんだ?」

「新しい武器や防具を買う。後はいざというときのための貯蓄だな」

「貯蓄」とエデルは笑った。「闇ギルドなのに、貯金とかするんだな」

「何も不思議なことなんてないさ。もちろん、武器は戦うときのためのものだ。しかし、だからと言って、どんな組織にしてもいつも勝ち続けられるわけじゃない。負けた後に、再び態勢を立て直せるかどうかということも大事なんだ」

「なるほど。賢いな」

「ドーブルク死すとも、クロガネ死なず。そうあいつは言っていた。クロガネは十七代目に受け継がれ、いずれは元の勢力を取り戻す。頭を切ったとしても、また新しい頭が生えてくるんだ」

「組織そのものを殺すのは難しいというわけか」


 エデルは思案気に腕を組み、顔を俯けた。


「だとしたら、いくら俺とミーシャの戦闘能力があったとしても、クロガネを潰すのは難しいんじゃないのか? 俺たちの目的はティナとリオンを助けることだから、そしたらもうクロガネなんかと関わりたいとすら思わないけど……リョゼは、クロガネを潰すことが目的なんだろ?」

「その心配なら必要はない。なぜなら、俺の目的は、組織そのものを潰すことではないからだ」

「だって、さっきドーブルクを倒したいって……」

「それが俺の目的だよ」

「……?」

「俺の目的は、ドーブルクを処理すること。狂ってしまった男に安らかな死を与え、十六代目のクロガネを終わらせることだ。それが十七代目となり、新たな時代を迎えるのだとしたら、それはそれで構わない」

「なるほど……な」


 いずれ十七代目になってしまうのだとしたら、わざわざ潰す意味なんてないのではないのではないかとも思ったが、彼にも彼なりの事情があるのだろう。それを深く詮索するのは野暮だ。いずれにしても、エデルにとってはクロガネにつながる協力者が得られたというだけで良かった。


「とりあえず、ナルキサのアジトの奥、さらわれた人々やドーブルクのいる場所に手っ取り早く行くためには、違法薬物を運搬する馬車に乗り込むのが一番早いだろう」

「知っているのか?」

「元クロガネのメンバーだからな」


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