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第十九話 闇ギルド「クロガネ」(2)

「彼らか。報告にあったギルターというのは」


 一人は、知的な縁なし眼鏡をかけており、華奢で背の高い青年だった。


「近しい人がさらわれてしまったから、亡霊探しに来たということかしら」


 もう一人の女性は長い水色の髪をなびかせ、泣きぼくろが印象的な色っぽい瞳をしていた。華奢な体躯に合わない大きな胸で、どことなく夜が似合っている。


「なあ、ラミー。ここ最近は収穫が多いと思わないか?」


 ラミーと呼ばれた女は、不敵な笑みを浮かべて頷いた。


「今のカイルの奇襲だって、見事に防いだことだしね。昨日の女だって、なかなかの強敵だったし、もう一人いた子供の方もただの子供じゃなかった」


 女と子供?

 その言葉を聞いて、エデルの剣を握る力が強くなる。


「ティナとリオンのことか」


 エデルの怒りを感じながら、ラミーはきょとんと目を丸くしてみせる。


「あら、お知り合いだったの?」

「だけど、それなら話は早い。お前たちを捕まえれば、二人の居場所がわかるってことだよな」


 もちろん、二人掛かりでもティナを倒した相手となればそれなりには実力があるだろう。そうなると、ミーシャとの連携が、より重要になってくる。

 先に動き出したのはエデルだった。〈肉体強化ドル〉によって獣のような速度でカイルとの距離を縮め、その勢いのまま振り抜いた一撃。カイルは左腕でガードをしようとする。おそらくその硬度には自信があったのだろう。しかし、岩と化したカイルの腕は、魔力のオーラを纏った一撃に砕け散ってしまう。


「これは厄介だな」


 カイルは目を丸くし、それからエデルとの距離を取る。ラミーはすぐさま魔法で氷の槍をいくつも召喚し、エデルに向かって放つ。しかし、それもミーシャの〈岩壁魔法ロムール〉が防いでしまった。


「あなたたちの相手は、二人なんだからね」

「そうね。私たちの相手は、あなたたち二人」


 ラミーは悪戯っぽい微笑を浮かべる。


「でも、あなたたちの相手は、本当に二人だけかしら?」


 ハッとした。気付くと、周りにはカイルたちの仲間が集まっていた。多勢で一気に片を付けようという腹なのだろう。ミーシャは唇を噛んだ。


「あなたたち……卑怯よ」

「卑怯? 別に、私たちは、あなたたちと対等に戦おうだなんて思ってはいないのだけれど」

「ラミー!」


 鬼気迫る声に、ラミーはすぐに視線を移す。すると、岩と化した腹を裂かれて抉られているカイルが〈岩壁魔法ロムール〉でエデルとの壁を作っているところだった。エデルはそれすらも破壊し、さらに畳み掛ける。


「お前らに何人いようと関係ない。いま俺のやるべきことは、ただティナとリオンを取り戻すことだけだ」


 ラミーの他に、周りの仲間たちの援護射撃もあって、カイルは何とか事なきを得る。しかし、その表情は苦悶に歪んでいた。


「これは……回復するのに少し時間がかかりそうだな。しばらくはこれで我慢するか」


 砕かれたカイルの左腕に魔力の気配がして、それは岩の剣の形へと変わる。さらに「〈人形召喚プーヴォ〉」を唱えると、最初にエデルたちに襲いかかってきた「何者か」ーーそれはカイルが魔法で作った土人形だったーーが三体現れた。


「さすがの君たちでも、これだけの数を相手にするのは無理があるんじゃないか?」


 たしかに、カイルとラミーの能力のことも考えれば、これほどの多勢を相手取るのは、いくら全力で戦ったとしても厳しいだろう。しかし、やるしかない。エデルが改めて剣を握り直したときだった。


「ぐぁ!」


 呻き声を上げたのは、カイルたちの仲間の一人だった。それを皮切りに、敵の仲間たちが次々と倒されていく。新たに現れた者は、カイルの前に立つと、魔力のこもった拳で殴りかかった。カイルはそれらの攻撃を受け流しつつ距離を取り、ラミーの援護射撃によって逃れることができた。


「その魔甲手は、リョゼか……」


 カイルは舌打ちをする。さらに、ボーツギン市の役人までがその場に駆けつけてきた。街中でやるには派手すぎる戦いをしたせいだろう。


「ボーツギンが使えないとなると、なかなか面倒なことになるな」

「どうする? お父様のこと」


 カイルは思案気に眉根を寄せた。


「まだ『餌』のストックはある。それまでに考えよう。とりあえず、ここは一旦引くぞ」


 二人は逃げて行き、役人たちがエデルの傍まで来る。事情を聞かれ、それまでのことを話した。「ボーツギンの亡霊」の正体は人さらいのグループで、自分たちは仲間がさらわれたから彼らを追っているのだということを話した。危ない真似をするんじゃないと叱られ、後のことはこちらでやっておくから、君たちはもうこの件に関わらないように、という注意だけで解放された。そして、エデルたちはその青年とようやく向き合うことができた。


「あなたは……」


 長い青髪を後ろで束ねて一本にまとめており、大きな瞳と色白の肌が女性っぽい。細身だが筋肉質で、両手には拳を覆う装備と、両脚にも脛当てのようなものが付けられていた。


「リョゼ・バーキラス。クロガネの元メンバー……つまり、あいつらの仲間だ」


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