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第八話 魔王様、降臨!(「元」付きだけどね)(2)

 莉奈は眉間にいっぱいのしわを寄せて、悔しさに歯噛みした。歯が折れてしまいそうなくらい強烈な歯噛みだった。


「もう、酷いよ。私に何も言わないで勝手に行っちゃうなんて」


 優馬の腕に絡みついてきたティナに、莉奈は絶望的な眼差しを向けていた。ティナは、優馬の腕をぎゅっと胸に抱き寄せると、莉奈に向けて勝ち誇ったような微笑を漏らした。そして、莉奈は気づいた。



 もう、酷いよ。私に何も言わないで勝手に行っちゃうなんて。



 その言葉は、優馬に向けられたものではない。自分に向けられたものなのだ。



 もう、酷いよ。私に何も言わないで勝手に優馬を誘うなんて。



 そこに付け足された微笑みは……。




















 ま、そんな小手先の技を使ったところで、どうせ無駄だけど(笑)





















 このクソ女ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!


 莉奈は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の女を除かなければならぬと決意した。確かに、莉奈のスペックはティナよりも劣る。莉奈は、普通の女子高生である。ニッチを狙い、計算と謀略を組み立てて暮らしてきた。けれどもティナの存在によって新たにわかったことは、人一倍に負けず嫌いであったことだ。


(これじゃあまるで、悲劇のメロスじゃない! 友達を犠牲にしてまで邪智暴虐の女を取り除いたのに、私の物語は、三日でギリギリアウトになるタイプのメロスじゃない!)


 そこで、莉奈はハッと我に帰った。激怒している場合じゃない。計算が崩れたのならば、感情で取り返すしかない。そう思い、莉奈と優馬の間に割って入った。


「ねえ、何でティナちゃんが割って入ってくるのかなー? 桜井くんと一緒に帰っていたのは、私なんだけど」


 できるだけ温和な笑顔を見せてティナと優馬を引き離す。


「割って入ってないもーん。莉奈ちゃんが右側歩いてたから、私はしっかり左側から入りましたー」


 べー、と舌を出すティナのからかうような態度に青筋を立てるが、莉奈はまだ何とか怒りを抑えていた。


「物理の話なんかしてないよ、ティナちゃん」

「私も物理の話なんかしてないよ。現実の話をしてるの」

「人の言っている言葉の意味がわからないのかなー? もう一回、小学生から国語の勉強をやり直した方がいいんじゃない?」

「Je suis désolée (ごめんなさい). Je ne peux pas comprendre le japonais(私、日本語がわからないの)


 どうせフランス語はわからないでしょ(笑)、なんてティナの皮肉が、その口調や表情の端々から(にじ)み出していた。そして、莉奈はついに大爆発をした。


「ディスイズジャペェン! カムバックホォォォム! ドゥーユゥアンダーステェン?」


 その瞬間、莉奈はティナの真意を悟った。


(しまっ……! これは巧妙に仕掛けられた罠だ!)


 莉奈の激昂を端から見ていた優馬は、完全に引いていた。


「……東雲、ちょっと怖いぞ」

「い、いや、これは違うの! 桜井くん、その……」

「『立つ鳥跡を濁さず』って言うでしょ? これ以上『ジャペェン』にいても、どんどん化けの皮が剥がれていくだけよ。あなたこそ、故郷に帰ったらどう? ドゥーユゥアンダーステェン?」


 追い打ちをかけるティナに、莉奈はやはり耐えることができない。


「はぁ? 私の故郷は、ディスイズジャペェ……ああああああああああ!!!」

「お、おい、東雲! 大丈夫か?」

「『化け』の皮が剥がれてるよ。化け猫の猫被りさん」

「勝手なこと言うのはやめてよ!」


 ティナが挑発すると、莉奈はすぐにそれに乗ってしまう。そのまま、二人はバチバチと視線の火花を散らした。

 これって、喧嘩するほど仲が良いとかそういうあれだよな? あれだよね?、なんて思いつつ、優馬は二人の間に割って入る。


「おい、お前たち……」

「優馬はどっちなの!」とティナが詰め寄る。

「こうなったら、桜井くんに選んでもらおうよ。桜井くんは、私とティナちゃんのどっちの方が魅力的だと思う?」

「えぇぇぇ……俺ぇぇぇ?」と優馬は面倒臭そうな顔をする。「そうだなあ……」


 俺は、どっちかと言えばだなあ……。





















「この子かな?」


 優馬が差したのは、ティナでもなく、莉奈でもなく、自分の足元だった。二人は同時にそちらへ視線を落とした。すると、そこには優馬の脚に絡みついている謎の女の子がいたのだった。


「あははー。そっかあ。私でも莉奈ちゃんでもなかったのかー。それなら、仕方ないね」

「たしかにー。これって、ある意味、一番平和的な答えだったのかもしれないね。こんなとんちの利いた答えが出せる桜井くんって、やっぱり素敵だな」


 不気味なくらいににっこりとした笑顔を浮かべて顔を見合わせた二人は、同時にその女の子に視線を戻す。

 そして、息ぴったりに叫んだ。





















「「……って、誰ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」」


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