表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/90

プロローグ 最後の戦い

 ビルヴェンシアを魔物の跋扈する世界に変えてしまったのは、魔王リオンではなく、自らの意思を持った邪悪な魔石「魔業核」だった。倒したリオンの体からぬっと抜け出た魔業核は巨大な魔物と化し、勇者エデルたちに襲いかかった。リオンとの戦いで体力も魔力も消耗していたが、回復の薬を駆使し、ティナやミーシャ、ゴルトンたちと巧みな連携を取り、四人はついに元凶の魔業核を打ち滅ぼしたのだった。


「終わった……のか?」


 呟くと同時に、エデルはその場に倒れてしまう。


「エデル!」


 ティナはすぐさまエデルのもとに駆け寄り、その体を抱き寄せる。


「ありがとう。本当にありがとう。もうすぐお父様やお母様の魂も解放されると思うわ。そして、私も元の『神の娘』に戻ることができる」


 しかし、それは同時に、ティナ・アーリストがエデル・アーリストの妹ではなくなってしまうということも意味していた。ティナが苦虫を噛み潰したような悲しみの表情を浮かべると、エデルはぷいと顔をそむけた。


「そして、俺は『神の娘』の力によって、地球に戻ることができる。強力な魔術で時を戻すことによって。俺が雪菜を守って死に、ビルヴェンシアに運ばれるその前の『俺』、つまり、『桜井優馬』としての『俺』に。でも、本当にそんなことができるのか?」

「たしかに、いくら『神の娘』とはいえ、世界の時間を戻すことはそんなに簡単なことではないわ。でも、これはせめてもの、エデルに対しての私の償いよ。勝手にビルヴェンシアに連れてきて、世界を救ってもらうことに強力してもらったんだもん。このくらいして当然よ」

「ありがとう、ティナ」

「それに、約束したでしょう?」

「ん?」

「エデルが地球で優馬に戻ったら、私たちは兄妹じゃなくなる。だから、結婚しようねって」


 一瞬の間が空いた。それからエデルは繕ったような笑みを浮かべて言った。


「ああ。そうだな」

「約束だよ」


 幸福そうな微笑みを浮かべ、ティナはエデルに小指を差し出した。さらに一瞬の間が空いた。そして、エデルもゆっくりと小指を出して、二人は指切りげんまんをした。


「ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたーらはーりせーんぼーんのーますっ♪」


 地球では、互いの小指と小指を合わせて、約束を破ったら針千本を呑ませる恐ろしい風習がある、とエデルが冗談で言ったのを、ティナはもちろん覚えていた。


「ゆーびきったっ!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ