第53話 あやしい勇者パーティー
「盗むっ! よーし、ポーションげっとだよ!」
ハーフパンツに肩とヘソ出しの皮の胸当て、小ぱい、薄紫のショートに水色の瞳、元気はつらつな盗賊娘がうちの魔人から何か盗んだらしい。
「おっとまたまた銀貨です。死体漁りは楽しいですね」
火事場泥棒もびっくりのお金に対する嗅覚が異常な女の子は、お団子に髪の毛を束ねたアラビア風美少女、鉄の前掛けの隙間から豊満な横乳が揺れている。
「きゃーん、怖いよハー君。助けてぇ」
ハー君……どっかで聞いた気がするし、あのにちゃにちゃした大人しい男の子に見覚えがあるが、それよりもバニーガールがしなだれかかってるのが気にくわないぞ!
というかハーレム野郎でハー君なのかっ!?
「ちょ……、当たってる」
いや、困ってるふりしてるけど口角上がってるだろ!
「むふふーん、当ててるのよ」
敵陣真っ只中で余裕だな! おい!
どんだけ強いパーティーかと見に来たら、盗賊、商人、遊び人に勇者?
『バランス悪うぅ!』
思わず突っ込んでしまったせいで、ローマン城で待機中のソニアたちが身構えてしまった。
コイツら、俺を攻略する気あるの? 世界を救う気あるの?
影読みした情報と今まで倒してきたであろう魔物の経験値からレベルを勝手につけるとしたら、こんな感じ。
シーナ……ジョブは盗賊らしく潜む者、レベル一四。
キルフィ……ジョブは商う者ね、守銭奴感あるよ、レベル一五。
イレーナ……ジョブは遊ぶ者でバニーガールのぷるるんおっぱいがこぼれ落ちそう、その格好でよくぞここまで来たね、レベル二四。
無駄にバニーちゃんのレベル高いぞ、ダマレの神殿はもうダンジョン化してるから転職は出来ないけど賢者になれそうなレベル感。
そして、許せんハーレムパーティー決め込んだむっつり野郎は――
ハレルヤ……ジョブは営む者。
は? 営む者? 極める者じゃないのかよ!
レベルは一……、いちぃ!?
『くそ弱ええぇえ!』
「くぁ! シェイド様はうるさいっす! ご飯に集中させろっす」
いやハルピはずっと何かしら食べてるだろ、最近ぽっちゃりしてきたけど飛べるんだろうか。
いや、それよりハーレムパーティーが気になる。
コイツらってどうしてここまで来れてるの? 特にハレルヤとか全然じゃないか!
経験値配分、どうなってんだよ!
偏り酷すぎだろ、しかもバニーちゃん今のところ戦ってないし!
一〇八の宿星魔人ズってそこそこ強いはずなんだけどなぁ……。
想定外すぎて俺が戸惑いを隠せないわ、よし、一人ずつ確認しよう。
「はあああ! 盗むっ!」
うん、盗むだけで攻撃はしてない。
「金カネ金カネ金金金……」
目の中がお金マークになってる人を初めて見た、倒れた魔人が落としたお金の音にだけ反応して素早い動きで戦場を駆けめぐってるけど、お金を拾うだけだ。
「むっふふ、ハー君にぱふぱふ、ぱふぱふ……」
うひゃあ!
「ぶふっ!」
ハレルヤ君、鼻血吹いたけど戦闘中にうらやまけしからんぞ!
そして野郎魔人の一部が前屈みになってはいるけど、ハレルヤ君が戦ってる感じないな。
――コイツらは戦ってないのに、心なしか魔人ズの数が減っている気がするんだけど……?
うーん、空から見えればもう少し分かりやすいんだけど、平地だと頑張って魔人の目線からしか状況が分からないんだよな。
まさか営む者のハレルヤ君が俺にも分からないスキルで勇者やってるとか!?
名前は嫌いだし、チート持ちでハーレム野郎には制裁を加えないと。
ちなみに、ハレルヤという名前は光の勇者の名前にあやかって付けられる名前でこの世界ではポピュラーだ。
もし王様の名前がハレルヤだったら、同名の奴らを抹殺する鬼ごっこのイベントを開催するレベルでポピュラーな名前だ。
「ぐおおおお!」
お、うちの魔人のターン! ハレルヤ君に襲いかかるぜ! これで実力がわかるかも?
「やん、ハー君危なぁい!」
と言いつつ、自然な動きでハレルヤ君から距離を取るバニーちゃん、女って怖いな。
魔人Aのけさ斬り! ハレルヤの右肩から斜めにばっさり――
――ぎいいぃいぃん!!
切られない。
……なるほど、どうしてコイツらがここまで来たのか原因がわかった。
「こ、の、くそビッチぃ! お前はハー君を盾だって言ったでしょうがぁ!!」
ずばっと魔人Aを切り裂いて、そのまま剣をバニーちゃんに向けるのは……めっちゃ美人、ブロンドロング、碧の瞳、ナイスバディの女戦士だった!
「……ママ、ありがと」
ってお母さんかいっ!?
「ううん! ハー君はいいのよぉ? コイツらが私の忠告も聞かずにローマンに来るから悪いのよ!」
「やんやーん、だって王様がいい加減先に進めってぇ」
「うるっさい! このくそビッチ! このぉ!」
――ぶしゃ!
「やーん! ハー君、ハー君のママさん止めてぇ!」
――すぶり
「てめぇが気安くハー君って呼ぶんじゃねえぇ!」
――ごしゃ
剣を振り回すママンと逃げ回るバニーちゃん。
ママンの剣の流れ弾で、うちの魔人ズ紙くずのように宙に舞い、地面に落ちたところを逃げ惑うバニーちゃんが踏みつけてトドメ。
たまに嬉しそうに散っていく魔人もいるけど、バニーちゃんだけ妙にレベルが高い理由の一端を垣間見た気がする。
あれ? 気かついたら一〇八の魔人ズ、ほぼ全滅してるんだけど?
「マーガレット殿ぉ! 我らは密かに勇者たちをフォローせねばなりませぬぅ!」
めっちゃ大声で叫んでるおっさんがいる、モーニングスターに僧侶風のごついおっさん怖い。
「大気を切り裂く風よ、我の指先より……はふぁ、なんじゃったっけのぅ? ……あ! ウインドジャベリン――」
だいぶ後方から半透明の槍が撃ち込まれて残りの魔人ズが穴だらけになってった……、爺の魔法使い?
「黙りなアレスぅ! ほら、ロリエル! 私のハー君をさっさと回復してよ!」
「ぼ、ボクはロリエルじゃないです。ロジエルです! えぇーい、エリアヒール!」
ママンの指示に不満そうにこの辺り一体をまとめて浄化してるのは見た目ロリッ子僧侶?
この敵味方入り乱れてる状況で、味方だけ回復するって結構大変だと思うんだけど簡単にやり遂げるスキルすげぇ。
よ、要チェックやで!
ロジエル……ジョブは祈る者、ロリッ子僧侶で始まりの町の神童、ハレルヤより年下なのにレベル九九!?
アレス……戦う者、王国騎士団長でカイゼルひげのダンディメン、レベル九九。
ジジリアス……祈る者だけどこっちの爺さんは王国最高の魔法使い、少しボケありでレベル九九。
まじか……、コイツらだけでもキツいのにハレルヤのママさんヤバいぞ。
マーガレット……ジョブが極める者、息子のハレルヤに全ての愛を注ぐモンスターペアレント、王国最強のクレーマー、レベル九九!!
光の勇者ハレルヤ・ライヒルの子孫で魔法と勇者スキルを継承している三七才、婿養子の旦那は冒険者として名を上げるためにラスト大陸へと旅立ったが、数年後に死んだと伝えられた未亡人らしい!
……この親子って、かなり前に俺が夢で見た親子な気がする。
あの夢を見たのは二年前だったよな、ん? てことはコイツらって二年も始まりの大陸でレベル上げしてたの?
しかもハレルヤに関しては戦闘してないままの二年!?
一七才ぐらいのお兄ちゃん、ママンや王国最高戦力っぽい護衛のおかげでここまで進んで来たとか?
レベル一の村人ですけど何か? いや、ダメだろ!
お前、恥ずかしくないのかよ!? ってバニーちゃんのお尻見ながらニヤニヤしてるし、むっつりか……。
――魔王様ぁ! ばんざーいっ!!
あ、新キャラ調べてる間に全滅しちゃった。
◇◇◇
『ってことが、あったんだよ』
「レベル九九の強さがマスターの主観なのでどれくらい強いのか分かりませんが、下位とはいえ百人を超える魔人たちを全滅させる強さは注意が必要ですね」
「そぉねぇ、それにソニアちゃんと同じ極める者ってラァブが封印される前は勇者って呼ばれていたし、怖いわねぇ」
だよな、ソニアとラァブも警戒してるな。
「くぁ、空から石とか落としたら死なないっすか?」
『うーん、まず無理だな。それに、落とした石がハー君に当たった日にはハー君ママンが世界を滅ぼしかねんぞ』
「……どうしますか?」
『うーん、これ以上、成長させないように雑魚魔物を近づけない、食べ物は俺の魔素で人が食べられないようにして兵糧攻めとか?』
「おそらくアイテムボックスを持っているはずです、兵糧攻めは難しいです」
まじかよ、人間ズルいな!
『じゃあ、分断して一人ずつ倒すとしよう』
ハー君のハーレムとロジエルちゃんはローマン城にお迎えして、爺とおっさんたちは適当な大陸にバシルー……転移で飛ばして、あの親子は放置でいいか。
分断するなら――
『よし、全軍でアイツら丸飲みにしよう。数の暴力を見せてやるぜ!』
「ぶれませんねマスター……」
「シェイドちゃんだから仕方ないわよ」
「「「「マスターはマスターですから」」」」
○○だから、いただきました!
いや、毎回言わせてるわけではないよ?




