第52話 あやしい創世記
ロングロングアゴー、“名前を言ってはいけないあの神様”……神様でいいや、の上位の存在がここの神様を管理者にして世界を回すようにしていたらしい。
何でそんな面倒なことを? 聞いても理解出来ない、たぶん暇だったのだろう。
んで、ミジンコだったりの生命体が、哺乳類的な超進化の果てに魔法を使える人類となってし数百年、調子に乗って発展しまくった人類は平和と戦争の狭間で愛を育んだり、育まなかったりな生活をしていたらしい。
人の欲望はどこまでもヒィウィゴーらしく、どこかの国の皇帝さんが世界制覇を目指して異世界召喚をやっちゃったわけだ。
異世界召喚は失敗した、誰も召喚はされなかった。
終了……まだまだ続くの? ……はい。
生命体が死んだら肉体は分解されて養分に、魂は世界に吸収されて綺麗キレイに洗浄されて新しい肉体に放り込まれることになる。
綺麗キレイの過程で、負の感情を浄化するシステムがあり、カタストロフと呼ばれていたとかいないとか、あ、いたらしい。
……もうダルい。
そんな魂の浄化を担当していた“システム・カタストロフ”が異世界召喚の影響で自我を引き起こしちゃっからまぁ大変。
ドジョウが出てきてこんにちわ、「坊っちゃん、世界を滅ぼそう」と言ったかは不明だけど、負の感情を糧にする魔王カタストロフがここに爆誕したんだと。
そこからは絶望大好きっ子が大暴れ、これは参ったと、神様が「俺なら異世界召喚上手く出来るし!」と他の世界から後の光の勇者を引っ張ってきたり、「現地人も戦えやぃ」とジョブを与えて勇者パーティーを結成、なんとかかんとか紆余曲折を経て、魔王を封印するところまで頑張った。
これにて世界の平和は……守られない。
主な魔王成分は封印出来たけど、魔王の素――略して魔素――は世界中に蔓延してしまってた。
神様、あともう一ふんばりだよ!
残念、異世界召喚だのジョブシステムだので力を使いすぎた神様は、魔素の浄化を魔王が生み出したわりに比較的人類に友好的だった龍族にお願いすることにした。
龍族の長は世界の調停者として神の力で魔素をダンジョンに集めてはまとめて浄化するお仕事を頑張ることになる。
バハムールが言ってた調停がどうのってこの辺りの話だったのかね。
…………。
はっ!? 意識飛んでた。
えーと、綻びが生じた世界は何かの拍子で地球にリンク、日本在住の俺ちゃんは運悪くこっちの世界に飛ばされてしまいましたとさ。
いやふざけんな、実体なしで強制労働させられたんだけど?
神様のお詫びなのか、お力なのか幸い自我を持ってた俺は俺を喚んだ存在の予想を遥かに越えて大活躍、今に至る。
以上、ウィキソニアの創世記豆知識を適当に理解した話。
「適当に流すなら質問しないでもらえますか?」
……避難がましい視線で俺を刺さないでソニアさん。
一応、理由はあったのよ?
◇◇◇
バハムールさんが汚い花火になってから二年が経っていた。
災厄の魔王カオスシェイドの出現、ラスト大陸の大国シンフォニア崩壊の知らせは世界を震撼させた。
人々は、魔王カタストロフを封印した勇者パーティー(光のイケメン勇者ハレルヤ、脳筋戦士アレックス、セクシーな踊り子ミネルバ、根暗な大賢者ゴンドール)のような救世主が現れることを願った。
願うだけなら猿でも出来るうっきっき、魔王出現から二年の月日が流れたが救世主は現れることはなく、魔王の勢力はサラマンドル大陸、シルファリア大陸、ウンディネ大陸、ノアム大陸と拡大して世界はむしろ魔人とゾンビが多いんじゃね? 人間は少数派じゃね? と言われるほど人々は追い込まれていった。
『もうみんな仲良く魔人になればいいじゃん、ちょっと俺への好感度が上がるのと逆らえなくなるだけで身体能力はむしろ人間のときより良くなるわけだし』
「マスター……。魔人になれるのは一握り、ほとんどの人は生きていけない世の中なんですが」
「そうよぉ、だいたい何でそんなに人間を虐めるのよぉ?」
『いや、イジメとかダメ絶対だから! 俺は単にソニアと一緒に大陸横断旅行をしただけだ。そしたら俺が通ったところから魔素が出てきてな?』
「大気が汚染されたわけですね」
おい、人を歩く汚染物質のように言うんじゃないよ!
生まれてすぐはダンジョンの空気清浄機として……、あれ、害悪ぶりが成長してて悲しい。
「くぁ、ダンジョンもいっぱい出来たっす」
うん、神の祠とか洞穴とか古城に森とかね、ダンジョン化したね。
不思議だね、俺は何もしてないよ!
『だから自重して“始まりの大陸”? 勇者誕生地のある大陸には行かないようにしてるだろ?』
あのアリアハン的な位置的にオーストラリアちょいずれの大きな島のことね。
あの“名前を言ってはいけない神”の聖結界のせいで入れないという話もあるけど。
ある一定量の魔素を弾く結界で、雑魚しか送り込めない謎仕様だ。
「あそこの人口密度がすごいことになってます」
それは知らんし、せっかくこっちは自重してやってるのに勇者もどきを定期的に送ってくるからムカついてたりするんだけど。
ピュアスライムさんや、ナイトバットとかをコツコツ倒してレベル上げしては攻めこんできて鬱陶しいことこの上ない。
極める者はソニアとソニアの幼なじみのフラグ踏み太郎――名前忘れた――以来、お目にかかったことがない。
「んふぅん! また転移の扉が開いたわよぉ? 懲りないわねぇ」
転移の扉は“名前を言ってはいけない神”が設置したワープポイントみたいな奴で、始まりの大陸からウンディネ大陸――サラマンドル大陸の北――のローマン国までひとっとび出来る便利な扉だ。
俺たちにはもちろん使えない、使えないけど見張りはしてるし、むしろ待ち伏せして出てきたところを片っ端から捕獲することにしている。
中途半端な勇者もどきはそこそこ戦力になるので俺の魔素で優しく包んで魔人化させている。
そもそも俺たちの拠点はローマン国の王城で、転移の扉は王城の近くの森だから新人勇者もどきが飛んでくると、そこにはラスボスたちが待ち構えているという人間側からしたらクソゲー仕様だ。
まあ、最近はそれも大人げないかなと思って、扉の警備をさせるのは一〇八宿星だけにさせている。
ちなみに俺の軍団は、一〇八宿星――下位魔人ズ、次が七七の鍵――悪魔神官ズ、四七士――中位魔人ズ、ゾディアック――一三匹のA級冒険者ゾンビーズ、八武衆――ドラゴンゾンビーズ、四天王……は飛ばして、三魔将――ソニア、ラァブ、ハルピ、そしてラスボスの俺だ。
人間たちからは魔王軍と呼ばれて恐れられている、俺も不本意ながら魔王認定を受け入れつつある。
そんな魔王軍は過剰防衛気味になってるのは、天使軍団のせいだ。
ところ構わず無制限に天雷を落としまくる悪魔たち……、いや、天使か。
「それでマスター、今回も四天王に対応させるんですか?」
と不死将軍ソニアから質問された。
ちなみに、本人はそう呼ばれる事をかなり嫌がっている。
『そうだな、毎回一人ずつ派遣してヤられるたびに、四天王最弱……って件をやるのも飽きてきたし、一〇八の魔人にでもやらせようか』
うちの四天王は、むっつり魔人ルーク、冥土の長話担当ギリアム、持たざる者ペタ子、ロリータゾンビのミンシアちゃんの四人だ。
『そもそも四天王が最弱なのが問題だよな』
「……それはマスターが気分で決めたことですし、私に言われても困ります」
『そりゃそうだな。とりあえず魔人ズを派遣してくれ』
一〇八匹まとめて派遣するから、一歩進むたびに魔王軍とエンカウントしちゃうぜ!
ラスボスが自分に刃向かってくる奴らを放置した結果、最後は自分が倒されてしまう間抜けな話ってよくあるけど、今なら少しわかる気がする。
敵が簡単に死にすぎるからつまらないんだよな。
もっと足掻いて我を楽しませろぉ! 的なエンタメに飢えてきてるこの一年、ラスト大陸に引っ込んで勇者パーティーが来るのを待とうかな……なんて考えが湧いてくる。
いかんいかん、油断大敵だ。
バハムールの二の舞はごめんだ。
とりあえず影を伸ばしてどんなパーティーなのか調べておこう。




