第49話 あやしい夢の跡
街頭インタビュー――あなたの夢は何ですか?
『夢かー? あー、そうだな。いつかドラゴンと戦ってみたいな』
とあるA級冒険者は語る。
『は? 夢? いや、金が欲しいよね。あーあ、空から金が降って来ないかなぁ』
とある下級国民は空を仰ぐ。
『世界にぃ! 新たな魔王カオスシェイド様の誕生をぉ! 知らせたぁい』
とある悪魔神父は混乱している。
『……少しだけでいいから、胸を……いや、何でもない』
小ぱいの諜報部員は自分の平らな部分に夢を抱く。
『おじいちゃんにあいたい』
とある下級国民の子どもはおじいちゃん子だった。
「くぁ? 夢っすか? お腹いっぱいになりたいっす」
とある翼女は深く考えていない。
「夢ですか? 私は夢を見ませんので……」
とある顔と体だけの不死女はリアリスト。
『ハルピとソニアはもう少し想像力をだな……』
「シェイドちゃん、ラァブの夢はねぇ?」
『せっかく覚えたエキストラスキルだし――』
「ねぇ、ねぇ、ラァブのぉ、夢はねぇ。んふふ、シェイドちゃんのお嫁『黙れ、【魔素吸収】――』ンヂイイイイイィィィィィ!!」
『やり直し。エキストラスキルだし、使ってみるかな。【正夢】――』
っ!
うごお、魔素が削られるうぅぅ!
す、ストップ! ストップストップ!!
何人にスキルを使えたのか分からんが、結構ヤバいスキルだった。
今のところ何も反応なし、明日の朝になったら何か起きてるかも?
◇◇◇
テーレーレーレ♪ レッテッ♪ テー♪
おはようございます。
ゆうべはおたのしみでしたね。
『そうそう、ソニアとハルピに挟まれてきゃっきゃうふふの実体化でって、楽しんでないわ! むしろソニアのおっぱい成分が不足してるわ!!』
おっぱい触らせろ、バカヤロー!
「かぁ! シェイド様がいきなり怒り出したっす!」
「ハルピさん、マスターのいつもの病気です。マスター、シャドスペに入らないとマスターの要望には応じられませんよ」
誰がいつもの病気じゃい! じゃあシャドスペに入れようかな?
俺の核を外に出す案もあるが、ラァブが巻きついてきたり、ハルピが食べ物と間違えて食いついてきたら嫌だから不採用だけど。
いや、ウインナー風に硬化してハルピに……、よし、今度やってみよう。
「シェイドちゃんはいつでもマイペースねぇ。今は王都中が大変なのよぉ?」
ちっ、わざと現実を見ないようにしていたのにラァブに引き戻された……。
恐らくだけど、正夢スキルの効果か?
・朝起きたら、王都の空は天龍だらけになっていた。
今日の天気予報は、晴れ時々天龍が降るでしょう。
普通に怖いわ、保険をかける意味でとある場所に影伸ばし中。
・貨幣鋳造工場が謎の大爆発、金貨や銀貨が王都中にばらまかれる。
お金を拾おうと無防備に前かがみになるレディたちに大満足。
・王都の墓地から御先祖様たちが帰って子どもたち涙目の再会。
下級国民のガキんちょ、良かったね。
で、今に至る。
『正夢スキルって怖いな……』
人の欲望を無理のない範囲――俺の魔素量――で実現する感じかね。
よし、正夢スキルは封印しよう。
――残念ながらペタ子の夢は叶ってないようだ。
『いや、大変っていっても俺たちに被害ないだろ? 心配なら全員収納しておくぞ?』
「先ほどギルドの緊急指令が出ましたので、私は出かけてきます」
C級以上の冒険者は緊急指令に関しては正当事由なく断ると除名されることもあるらしい。
『真面目かっ! 危ないからやめとけって』
「マスターも来てもらっていいですか? それから王都中に溢れたアンデッドを収納してほしいのですが……」
『ええー、面倒くさ……』
「……、あーあ、このスカートはとても歩きにくいですね」
かなりの棒読み感があるが、長めのスカートを短剣で縦にすぱびりりっと切りちぎると、ソニアの綺麗なおみ足がこにゃにゃちわ。
『うむ!』
雑に裂かれたスリットから白い太ももやふくらはぎぃがちらっちらって……。
ソニアの影から眺めればきっと素敵な光景が待っている――
『……じゃあ少しだけ手伝う。【影収納】――』
はい、シンフォニアゾンビーズをさくっと回収っと。
ソニアの魅了スキルって本当に無効化できてるんだろうか……。
「ありがとうございます?」
いや、聞くなよ?
俺の自作自演感があるから素直にお礼を言えないのか。
「んまあぁ! シェイドちゃんたら仕事早いわねぇ」
そうか? ふふ、そうでもあるけどな?
「かぁ、お腹空いたっす!」
ハルピも誉めろや! ぶれないな。
『ハルピ、おばちゃんも流石に営業してないと思うぞ? 様子見てきてもいいけど……』
「くあ! じゃあ見てくるっす!」
まあ、ハルピの影に分身を付けておけばどうにでも対応できるしな。
「マスター、お城の様子はどうなってますか?」
『えーと、今ね。王様と宰相は同じセリフしか言わないみたいで、二人に代わって第一王子が龍族の将軍? 豪華な鎧を着けた龍と話てるとこだ』
王と宰相は忙しさのあまり精神が……、今後は私が王を支えて国を治めて行きます的な挨拶をしてるな。
「…………」
何でそんな目で俺を見るかな?
『わかった! はいはい、王子様を助ければいいんだろ。【影吹き・乱れ撃ち】――』
――びびびびびっ!
突然の襲撃になすすべなく将軍様と取り巻きはまんせーなされた。
『天龍将軍の鎧、ゲットだぜ!』
王子たちが唖然としているうちに、豪華な鎧と天龍たちの素材をシャドスペに収納。
突然ぐらりと前にあの巨体が倒れてきたらビビるよね。
【豪華な鎧】……龍の皮膚は天然の鎧になっているため、将軍らしさを表現するためだけに豪華に作られた鎧らしい。
見た目装備だった!
でも、豪華な鎧を着てるのが将軍クラスってのは分かりやすくていいな。
空にも将軍クラスの奴がいそうだけど……、あそこか。【影傀儡】【睡眠】――
「ぐっ!?」
「ミドラ様、どうされました?」
副将のミドラ、ゲットだぜ!
副将想いの部下龍にはとりあえず「何でもない」とジェスチャーをしておこう。
どこぞの子ども探偵だと植木鉢の後ろやソファーの下にバレバレに隠れてボイスチェンジャーで代わりに話すんだけど、俺は影絵で培ったジェスチャーで表現するしかない。
「……マスター、何かされましたか?」
宿屋の一室からでは想像できないことをやっている気がする。
まあ、現場に行って怪我するのも嫌だし、何より動かずに問題解決できるなら楽でいいしな。
『ちょっと色々とやってるからお静かに願う。というかソニアは冒険者ギルドに行ってきていいぞ。ラァブはソニアのフォローだ』
「わかったわぁ。結局シェイドちゃんが何をしてるか分からないけど頑張ってねぇ」
おう、任せろ。
「……はぁ」
ソニアはため息つくんじゃないよ。
城内の異変に気づいてないうちに、コイツらを片付けておきたい。
……よし、ミドラ副将を使って天龍たちをお城の運動場に集めよう。
おい、お前たち、あそこで休憩しようぜ?
運動場を指さして、こっち来いよぉと腕を振らせる。
「ミドラ様、それはさすがに……」
伝わったらしい。
「城内から将軍が戻られるまでは空中で待機のはずです」
いやいや、遅くない? 将軍戻ってくるの遅くない?
僕ちん、お疲れなのよ! 下りようよ!
「……確かに少々時間がかかっておりますが」
「なりませんよ、例えミドラ様でも命令違反は厳罰に処せられます!」
「お疲れでしたら我らの上に……」
どんだけ陣形を維持したいんだよ。
……くそ、誘導するの難しいな。
そうだ、将軍の素材を運動場に出してっと。
おい、あれを見ろ! あんなところに将軍様がいるぞ!
見に行こうぜ! ばびゅーん。
「っ!? あ、あれはっ!?」
「まさか!?」
「あっ! ミドラ様、お待ちください」
「おい、ミドラ様をお止めしろ!」
将軍の素材に向けてミドラを動かせば全員ついてくるだろ。
てなわけで、がしっと将軍の素材を抱きしめるミドラはそのまま地面に着地する。
どずううぅんって重たい地響きが……。
コイツらでかすぎ、何千人も収容出来そうなだだっ広い運動場が小さく感じる。
「お待ちください!」
「ミドラ様、そのご遺体はもしや……」
よしよし、副将に続いて他の天龍たちも下りてきた。
よし、全員下りたな。
「マスター、天龍たちがお城に続々と降下しているよう見えるんですけど、絶対何かされてますよね?」
まだおったんかい! 宿屋の窓からよく見えるな。
というか今、集中してるから話しかけるんじゃない。
地上に下りてくれればこっちのものだよ、全員沈め! 【影収納・影喰らい】――
『あっ! 何匹か反応いい奴が飛びやがった! 逃がさん! 【影伸縮】からの【魔素吸収】――すっぺぇ!』
「……天龍たちの身に何が起きているのか今の言葉で想像つきました。私はギルドに行ってきますね」
『おう、いてらー。王都の入口付近に地竜が集まって来てるから気をつけてな』
「はい、では行ってきます」
ソニアたちが地竜を片付けるまで天龍の聖気付き魔素をゆっくり消化しておこう。




