第40話 あやしい王都到着
盗賊を撃退して魔人化した奴らとシャドスペの魔人を足して“魔人盗賊団”を結成してみた。
といってもやることは特にないので、南の方面に住むというオークを狩りに行かせることにした。
そして、そのまま馬車で四日ほど進むと、王都“シンフォニア”が見えてきた。
赤い屋根に白い壁で統一された建物群、緩やかな石畳を上に辿っていけば――
『世界遺産認定したい……』
長い坂道の先に、尖塔がつんつん建っている立派な王城、背中に険しい山、手前は大きな湖があり、標高の高いお城勤務の人たちはマラソン選手ばりに肺活量がないと勤められないのではなかろうか。
「――すごいですね! 村で過ごしていた頃、一度は来てみたいと思っていました」
「くあぁ、砂漠の国から北に行ったところにあるカラフルな宮殿は可愛かったっすけど、こっちのお城は大きくて強そうっすね」
「むん? あの湖から濃い魔素を感じるわね」
みんな好き勝手に感想を述べてるな。
『あの山の向こうってゴンドールの墓所があった大森林だよな』
「そうですね、ただ山頂からお城の近くまで龍族の縄張りらしいので山越えする人はいません」
龍っ!? ドラゴン? ファンタジーの定番、遠目に眺めてヤバかったら逃げよう。
『この国は龍害みたいなのはないのか?』
まさか、定期的に生娘を捧げて王都が襲われないようにしてるとか……。
「はい、この国の成り立ちに関係しているんです――」
むかーし、むかし、山の麓に集落があったそうじゃ。
集落の人々はその日暮らしの歌や音楽が大好きなパーリーピーポーで、イベントがあってもなくてもバカ騒ぎしていたそうな。
あるとき、山から下りてきた龍族から「ヘイヘイヘイ、お前らのソウル、俺たちに届いたぜぃ、アーイ!」と言ったかはしらんが、そこからバカ騒ぎに龍族たちも加わるようになり、「うぇーい、龍ちんたちぃ来るんならぁ。箱狭くね?」と言ったかもしれない人間の代表――後のアレックス一世――が集落を広げ、麓を開拓し、今のシンフォニア国を興したそうな……。
『なるほどな、ノリがいいんだな』
「くぇーいっす! 自分も音楽は好きっす!」
「んんっ、その話、ラァブの輸卵管にびしびし反応するわねぇ」
なんだよ、シークレットベースって。
「だいぶ曲がって理解されている気がしますが、この王都は龍族が守っているという事だけ覚えておいてください」
なるほど、王都に手を出すと龍族が黙っていないというわけね。
『心配しなくても俺は何もしないぞ?』
「……お願いします」
信用ないなぁ。
◇◇◇
王都の入口に着いた。
『おいおい、巨人だったら軽く跨げる高さの壁だけど進撃されたらどうするんだこれ?』
『マスター、今、王都に入るための審査中ですので静かにしてもらえますか? それと、巨人は仮に来ても龍族が撃退するはずです』
あ、そっか、人間だけなら立体機動装置ないと立ち向かえないけど龍がいればなんとかなりそうだな。
「はぁい、これ見てねぇ?」
「う、うむ。…………しばし待たれよ」
門番にラァブお手製の通行許可証を渡して現在審査待ち。
王都に入るには身分証明書が必要らしい、行商人や俺たち観光目的の奴らがずらっと列を作って入場許可を待っている。
ちなみに、ギリアム一行は三日前に到着していて、ルークは冒険者ギルドでイキってボコられる悲しい結果に凹んで宿に引きこもり中で、ギリアムはラック会長のアポ取りに苦労しているようだ。
一方、諜報ガールのペタ子は、諜報部にギリアムたちの報告後、再びシータウンへと向かっている。
『ねぇねぇ、ペタ子。シータウンまで転移で送ってやろうか? ちょっとだけ黒装束の胸元を開けてくれたらやってやるぞ? 谷間なんて気にするな、ペタ子にはペタ子の良さがあるんだよ』
――また幻聴が……。
『幻聴じゃないって。【転移】―― ほら、ね? シータウンに送ったから約束を果たしてくれ』
――ううっ、ここはシータウンか……。
『や、約束はまだしていない……』
『じゃあ、戻す! 【転移】――』
――っ!?
『……ここは王都じゃないか、戻しすぎだ』
『あ、うっかりー?』
『……ほら、これでいいのか? こんな貧相な体の何がいいのか知らないが、シータウンに送ってくれ』
おお! はらりと黒い布がはだけて日焼けしていない白い素肌に小さいブラが!
……ぴっちりフィットで隙間がないやん、むう残念だ。
『うーん、思ってたのと違うけど送ってあげよう。【転移】――』
『思ってたのと違うって酷いな……』
――ちょっと傷ついたが、シータウンには着いたのだから早く任務を終わらせて休暇を申請しよう。
『ああ、休みたいのなら教会には近づかないようにな』
――教会……!? そう言われると気になる。
うーん、シータウンの教会には悪魔神父がいるからなぁ。
ペタ子がその事実を知ったら報告内容が増えそうだからアドバイスしてやったんだけど気になるらしい。
いっそ悪魔神父に接待させていっぱい食べさせるかな。
痩せてがりがりだし、食べても太らないタイプかもしれないけど。
年齢は二〇才すぎで顔は童顔、つまり合法ロリではあるが二次元のロリっ子は小ぶりではあるがおっぱいを装備している事が多い。
一方でペタ子は――
『これが俺たちのリアルだと言うのか……』
本物の紳士からしたら、二次元ロリまでが範囲の俺は邪道なのだろう。
だが、日本人は貧乳民族だ。
誰かが言っていた。
“貧乳はお米、巨乳はおかず”、とても素敵な言葉だと思う。
◇◇◇
――ようこそ! 龍と音楽の都シンフォニアへ!!
門番の合図で、門を通せんぼしていた兵士が道をあけてくれた。
『マスター、入場許可が下りました。まずはギルドに行きます』
『お、ソニアもいよいよBランクだな!』
といっても何の苦労もないし、ソニアはどうでもよさそうだけど。
『その前にラァブさんの依頼報告です』
「クァッ! あっちの方から美味しそうな匂いがするっす!」
「ハルピちゃん、それは後で連れて行ってあげるから今は大人しくしてねぇ? ソニアちゃん、行くわよぉ?」
ラァブを先頭に、門を抜けてしばらく進むと冒険者ギルドが見えてきた。
――ぎいぃ
重たい扉を開くと、広々とした空間に受付、掲示板、食堂、資料室、訓練場等の案内板が天井にぶら下がっていて、役所のように見えるな。
「冒険者ギルド本部へようこそ! 本日はどのようなご用件ですか?」
相変わらず色気のない事務服で、モブっ子さんが受付まで案内してくれた。
『ソニアとハルピのせいで、俺の目が贅沢になってるな。この子は綺麗系だけど色気が足りないのか? うーん』
悩む、涼しげな目元、整った顔立ち、スタイルもすらっとしているし普通に一回お願いしたいレベルなんだけど、ソニアたちがハイレベルすぎて見劣りしてしまうんだよなぁ。
『――ドちゃん! シェイドちゃん、ねぇねぇ! ラァ――』
『ラァブは……論外』
最後まで言わせない。
『し、ん、ら、つぅ!!』
『ごめんなさい、受付中ですのでお二人ともお静かにお願いします』
精神干渉でのやり取りだから、はた目には静かにしてるんだけど?
あ、ラァブはくねくねとリアクションしてて見た目がうるさいな。
その点、ハルピは大人しく――
「それ美味しそうっすね!」
してない! 食堂にいる冒険者のおっさん飯に食いついてる!
「なんだぁ? お嬢ちゃん、俺のウインナー欲しいのか?」
「欲しいっす! お口に突っ込んで欲しいっす! あーん、んぐんぐ」
やめなさい! はしたないよ! 何でそういう頬張り方するかなぁ。
「おっ! いい食べっぷりだな! ……へへっ、どうだい嬢ちゃん? 違うウインナーも食べたくないか?」
「食べたいっす! ウインナー好きっす!」
じろじろとハルピを舐めるように見てから違うウインナーをって、コイツの意図ってハルピには伝わってないな。
仕方ない――
『ラァブ! ハルピが餌付けされてるぞ!!』
保護者に任せよう。
「ノンっ! ダメよ、そんなポークビッツじゃハルピちゃんをお腹いっぱいに出来ないわよぉ?」
「てめぇ! なんだと!? 俺のウインナーをポークビッツだと!? 表出やがれ!」
『シェイドちゃん、ご指名入ったからちょっと外に行ってくるわねぇ?』
『あまりやり過ぎるなよ? それと依頼完了報告の紙は受付に渡しておけよ』
『はぁい!』
「ちょっ! ラァブさん、ズルいっす。自分も食べたいっす」
『ハルピ! このあと飯食いに行くから大人しくしてろ!』
「……わかったっす、絶対っすよ?」
食い意地はりすぎだろ、あ、早速外から野太い叫び声が……。
「あの、お連れの方は大丈夫ですか?」
「お連れ? 依頼者の方は腕利きですので心配ありません」
ソニア、設定守りすぎ。
あいつら、貴族の令嬢と執事か護衛かだったのに設定破りすぎ。
「はい、では依頼達成お疲れさまでした。報酬はこちらになります」
じゃらじゃらと大銀貨を何枚も受け取るソニア。
「ありがとうございます。それとこちらの推薦状で試験を受けたいのですが……」
――ざわっ!?
「――おい、あの女、推薦状持ってきてるぞ! こないだの坊主は推薦状もないのに騒いでいたけどアレって本物だよな!?」
「――この辺じゃ見かけない女だな」
「――顔は地味だがいい体してんなぁ、ちょっと声かけてみるか?」
「――バカっ! やめとけ。ギルドの推薦状を貰うってことはBランク以上の実力者ってことだぞ。俺たちじゃ敵わねぇよ」
「――ちっ! くそ、羨ましいなぁ」
「――おい、行こうぜ」
ソニアが推薦状を出したもんだから、室内は冒険者たちの羨ましいやら憎らしいやらといった感情が溢れている。
『けっ! 雑魚どもがさっさと帰ってママンのおっぱいでも吸ってろ!』
「「「「「ああ?」」」」」
ルーク元気かなぁ? なーんてルークの事を思い出してたらついついルークの声質になってしまった。
うちのソニアをいやらしい目で見るんじゃねぇよ。
『おら、怖いのか? かかってこいよ?』
姿の見えない若い男の声に、いらいらしながら周囲をきょろきょろしてる冒険者たちを見てると面白いな。
まあ、ルークは宿で引きこもってるし、そんなタイミングよく――
「お! ソニアじゃねぇか、やっとお前も王都に来たのか。よっしゃ、俺が王都を案内してやるぜ」
ルークが来た。
「結構です。あ、試験はいつ受けられますか?」
安定のスルーで試験日の確認。
「おいって! え、それって推薦状かよ!? 俺だって持ってないのによ」
「推薦状の審査、シータウン支部への問い合わせ等の期間がありますので三日後に来ていただけますか?」
「はい、ではよろしくお願いいたします」
後ろで、おいおい話しかけているルークをガン無視してる。
ルーク嫌いは悪化の一途を辿っている。
『まあ、いいか。ラァブの方も終わってるし、ハルピも飯食いに行くんだろ? 行くぞ!』
「ここのウインナーでいいっすけど……」
『ここはほら、もうすぐ落ち着いて食べられないから』
おー、人が拉致られるところ、初めて見た。
「むーむー!」
影読みするとソニアを呼んでるみたいだけど、冒険者たちがルークの口を塞いで食堂の奥に引きずっているので声が遠くになっていく。
――仕方ない、危なくなったら助けてやるか。【影分裂】――
これで、ルークの影にも入ったから何かあれば助けてやれる。
『マスターが人を助ける……』
いや、さすがに冤罪だしルークが可哀想だろ?
ついでに、ギルドの資料室やら金庫やら物色しておこう。




