第37話 あやしい出会いと別れと再会と
どうやらソニア視点だと、眠っているように見えたらしい。
確かに知り合いが謎設定で登場する感じは夢だよな……。
『いや、だからって投げたらダメでしょ!!』
『すみません、声をかけても返事がなく、叩くのも悪いかと思いまして……』
いきなりあの浮遊感は怖いぞ、というか中々の力を込めてぶん投げたよな?
『はぁ、まだストレス溜まってんのか? で、俺を起こした理由はなんだ?』
『先ほどからそこにハーピーが窓にとまって、私たちの名前を呼んでいるのでどうしたものかと……』
ハーピー? なんで俺たちの名前を知ってるんだ?
確かに、鳥女が窓の外から部屋の中を覗いたり、名前を呼んだりしているけど……。
『よく分からんが、ソニア見てきて。【影収納】――』
――がしゃっ!
「ぽーっ! いきなり床から出てきたっす! あ、あんたがソニアっすね? ラァブ様が大変なんすよ!! 開けてくれっす!!」
ソニアを確認するや、ラァブがどうとか捲し立ててうるさい……。
『ラァブの知り合いか? とりあえず中に入れてやれ』
――ばさっばさっ!
ちょっと! 羽が飛び散って部屋中を舞ってるんだけど!
「お水をどうぞ」
ソニアが差し出したコップを翼で挟んで器用に飲むね。
ぼさぼさの黒髪にピコンっとアホ毛、日に焼けたガングロ、大きめのおっぱいは天然羽毛ブラで大事な部分は隠されていて残念、翼や下半身はドバト――町中で見かける鳩――の首色に鳥の足。
――俺、鳩って苦手なんだよな。
「ぷはっぽーっ! すまないっす! 自分はハルパっす。で、ここにシェイドって奴もいるっすか?」
うわ! 意味なく首を回す感じも鳩っぽい!
玉虫色と言えば聞こえはいいが、首回りのぬらっとした緑色の感じが無理だ。
だいたい、アイツらは人の家のベランダに勝手に巣を作って卵産むし、フンするし、くるっぽぅってうるさいしで本当嫌いだった。
といっても、このままじゃ話が進まない。
なるべくおっぱい見ながら話しかけよう。【精神干渉】――
『俺がそうだ。何か用か?』
「ああ、ラァブ様から聞いてるっす。あんた、ラァブ様の愛方らしいっすね『誰の愛方だよ、【魔素吸収】――』――くるっぽぅ!」
やっぱり鳩だ! 豆鉄砲喰らってた顔のまま動かなくなってしまった。
『誰が誰の愛方だよ! 思わず吸ってしまったじゃねえか、鳥のささみ味。薄い味だなってあれ? ラァブみたいに復活しないぞ?』
『マスター、なんで話の途中で殺してしまうんですか……。ラァブさんは超回復があるので死ににくいだけです』
いや、そんな残念そうな目で俺を見るなよ。
ラァブが不快な妄想をハーピーに話してるのが悪いんだ。
あと鳩っぽいハーピーも悪い、こっちの世界に鳥獣保護法ないから大丈夫。
鳩は完全に素材になってしまったけど記憶を読んでみるか。【影読み】【影収納】――
ハーピー 【鉤爪】【フェザースラッシュ】【飛翔】【人化】
来たっ! 人化スキルっ!!
よし! 早速使う。【人化】――
ソニアの後ろの影が立体的に立ち上がって人の形に……。
見た目は人間の形をした影、ものすごく贔屓めに言うと真っ黒い人。
手を伸ばしてソニアのお尻を触ってみるが感触なし。
硬化すると影人形として固まってしまった……。
『はぁ、残念。ミンシア、ハーピーの核と素材を片付けておいてくれ』
『う"ぁ』
いいとものスタッフばりにせっせと片付けてくれる。
ソニアが何か言いたげだけど無視して影読みの結果を伝えるか。
『えーと、コイツらはサラマンドル大陸で魔物商に捕まって貴族に売られるところだったけど、たまたま通りがかったラァブが保護したらしい。で、そのままラァブと一緒に戻ってきてたんだけど、運悪く雷がラァブに直撃して失神、現在は海岸に打ち上げられてるところなんだってさ』
妹のハルピってのがラァブを守ってはいるけど、ハーピー種はそんなに強くないから、助けてほしいんだってさ。
雷かぁ、この間海に落ちてたような?
……まあ、いいや!
『……それで、私たちにラァブさんの危機を救ってもらおうとやってきたハルパさんはマスターの手にかかって殺されたと』
『は、ハルパは俺たちの心の中でずっと生きてるから……。それより命がけでラァブの事を伝えに来たハルパのためにもさっさと行こうぜ』
ついでにハーピーが鳩っぽい感じなら根絶やしにしよう。
◇◇◇
「よー、応援に来たぜって、なんだこりゃ!!」
「おい! 迂闊に近づくとハーピーにやられっぞ。羽に気をつけろ!!」
漁師さんヒマなのか? 人がどんどん増えているな。
「クァーッ! ラァブ様に近づくなっす! 【フェザースラッシュ】――っす!!」
あれが妹か? 烏っぽいな、鳩よりは可愛いか? 全体的に黒いうえに顔も日焼けしすぎのガングロ鳥ギャルか――おっぱいはおっきい。
翼を広げて威嚇したり、羽飛ばし攻撃で漁師たちをラァブに近づけないように頑張ってる。
「目がっ! 目がぁ!!」
うわ、羽が目に刺さって痛そう。
「これっ! 危ねぇ!」
「くそっ! 誰か弓持って来い!」
地元の漁師さんか。
とりあえず全員、【影収納】――
「「「「「「ほぎゃっ?」」」」」」
「「「「「「なんだっ?」」」」」」
これでうるさい人間は消えた。
シャドスペ内の漂う魔素で何匹か魔人化しないかなぁ。
『……おしゃ! 何人か生き残って魔人化したぞ。さすが屈強な海の男どもだ。船乗りとして採用!!』
――ばささっ!
ソニアに気づいたのか、ハルピが翼を前で折り畳んで頭を下げてる。
翼は後ろにしてくれたらおっぱいガン見したのに。
「助かったっす! 姉ちゃんは間に合ったんすね! 自分はハルピっす。ラァブ様からシェイド様たちの事は聞いてるっす」
お姉ちゃんよりは礼儀正しいし丁寧、顔もよく見ると可愛いかも?
ガングロギャルって化粧落とすと美人だったりするけど、この子もそんな感じかな。
「私はソニアです。ラァブさんの具合はどうですか?」
「カァ、あまり良くないっす。感電してからずっと失神してるっす」
『ラァブのしぶとさを考えるとおかしいな。ソニア、何かわかるか?』
「……ラァブさんから聖気を感じます。もしかしたら【聖雷】が海に落ちたのかもしれません」
……聖気がたっぷり含まれた雷で、魔素を浄化する力があるらしい。
『まじか、怖いな。ヨウスフィア様には逆らわないようにしよう』
「ラァブ様は自分たちは恩しかないっす! 危ないところを助けてもらって、こっちの大陸まで連れてきてくれたっす。なんとかならないっすか?」
「マスターの魔素を注入されればラァブさんも元気になると思います……」
が、助けてくれないですよねって、ソニアの中で俺ってそんなに信用ないのね。
見た目が受け付けないだけで、残念ながら仲間としての利用価値があるんだよな。
はぁ、【魔素吸収】――
「ンヂイイイ……。はぁ、はぁ、一生、懸命、戻って、来たの、に、全然、報われ、な、いわぁ……」
やべぇ、さらに死にかけてる!?
「マスター!?」
「クアッ! お願いっす、止めてくれっす! ラァブ様が死んじゃうっす!!」
『待て、うっかり間違えただけだ! 【魔素注入】――』
むむっ? 俺の魔素を邪魔する何かをラァブから感じる――これが聖気か?
仕方ないケチらずに多めに魔素ってやる!! ふんぬぬぬぬ!!
「のふおおぉぉぉ!! ふぎいいいいぃぃぃ!!」
白目剥いて、口から墨を垂らしながら、のけ反るラァブ……やっぱり殺してもいいかな? いいともー!
あ、何かがパリンって弾けた? よし、聖気を感じなくなった。
「ぁぁああぁん! シェイドちゃんの絶望の味、最っ高うぅ!! 『【魔素吸収】――』ンヂイイィ!! なんでぇ!?」
『俺の魔素から絶望の味がしたのなら、それはお前が原因だ。あと魔素は利子付きで返せ』
ラァブのせいで目が辛い、これはソニアでお口直しが必要だ。【影伸縮】――
「っ! …………」
くそ! ジャンプして影糸を避けられた!!
なぜかソニアに睨まれた。
仕方ないハーピーに影糸をつけて、【魔素注入】――
「クァ? ソニア様、怖い顔してどうしたっす―― んんん! かぁ! や、めてっんんっすぅ!! そ、んなすごす! くぁーっ!!」
内股をもぞもぞしながら、のけ反るガングロハーピーちゃん、これはアリだな!
のけ反るとおっぱいが、ぐあんっ! って上下に……すごい!
「ぁあん! シェイドちゃんたらお盛んー! ハルピちゃん、大丈夫!?」
む! ラァブめ、さりげなくハルピを触手で抱き上げて影糸を切りやがった。
「んはぁっ! かぁ、くぁ……。あっ! ラァブ様、もう大丈夫っすか!? 良かった、良かったっす!!」
「ラァブさん、お帰りなさい」
「ぁん! シェイドちゃん以外は本当に優しいわね。でもシェイドちゃんも助けてくれてありがとう。貴方のラァブ、ここに完全復活よん!」
びしっ! って触手で敬礼ポーズ取られても……、もう魔素吸収する気にもなれん。
◇◇◇
「お土産なんだけどぉ、ギルドから買い取ったり、魔物商から奪った核はこれだけだわぁ」
サラマンドル大陸からなるべく戻って来れないように、ラァブに魔物の核集めを頼んでおいたんだった。
ポイズンスコーピオン 【猛毒】【切断】【発光】【耐熱】
【砂地移動】【砂漠潜航】
サンドスライム 【砂地移動】【分解】【消化】【魔素吸収】
ふむふむ、砂漠で生きるためのスキル構成として砂漠を移動しやすいとか砂の中に隠れるのが多いな。
ハラグロウサギ 【飛び蹴り】【魅了】【砂地移動】【跳躍】
【傘作り】【槍術】
お腹が黒い、性格も黒いウサギらしい。
「すっごく可愛い目で、ラァブを見てくるのぉ! でも、近づくと日傘の中に仕込まれてる槍で目を突いてきたのよ、ひどいわぁ」
「ラァブさん、ハラグロウサギに魅了されませんでしたか?」
「ぅうん? わからないわねぇ」
そりゃ、本人に自覚はないだろ。
『思ってたより少ないな』
「だってぇ、シェイドちゃんと違って誰にも気づかれずに盗むとか出来ないのよ。仕方ないじゃないのぉ」
『まあ、そりゃそうだな。まあ、そのうち向こうにも行くだろ。とりあえずお疲れさん』
「「えっ!?」」
ん? なんだ二人して?
「気のせいでしょうか? 今、マスターがラァブさんを労ったような言葉が……、いえ、幻聴でした」
「シェイドちゃん! デレたの? デレ期なンヂイッ! ごめんなさい。……でも嬉しかったわぁ」
『お前ら、失礼だろ。俺だって頑張った奴には声ぐらいかけるぞ?』
好感度アップだぜ!
「あ、あのぉ、お話中のところすまないっす。姉ちゃんはどこ行ったっすか? シェイド様たちを呼びに行ったはずなんすけど」
あ……。
どうしよ、薄味だったって伝えたらいいのかな?




