第36話 あやしいステータスチェック
すっかり忘れていたよ、俺のステータス――
種 :【カオスシェイド】
職 能:【ソウルコピー】
△
上位職:【マリオネット】
▽ 【ナイトメア】
【レトント】
【ファントム】
【ディーヴァント】
【テラーシャウト】
称 号:【成功者への嫉妬】
【持たざる者の強欲】
【不遇からの傲慢】
【飢餓からの暴食】
【無垢な色欲】
【堕落の天才】
【神敵】
【自作自演クズ】
【正直クズ】
【やっぱりクズ】……
あれ? 【シーハインド】どこ行ったよ!
称号は色欲が生えてるな。
堕落の天才って、ルークは自分から闇堕ちしたんだから俺のせいじゃない。
神敵ってヨウスフィアにやっぱり目をつけられたってことか。
あとは見るに堪えない罵詈雑言……泣くぞ!
気を取り直して手持ちの核のチェック!!
最近使い勝手のいいスキルばかり使って検証するのを忘れていた、油断大敵だな。
少しだけ反省してスキルをまとめてみた。
よく使う便利なスキル※プロは省略
【影伸縮】【影支配】【影読み】【影傀儡】【影収納】【精神干渉】
対人で有利なスキル※影収納は用途分けしてみた
【睡眠】【夢操作】【魔素吸収】【魔素操作・縮小、注入】
【影収納・斬】【影収納・影纏い】【影収納・影糸】
【影収納・影喰らい】【影収納・影吹き】【呪い】
常時発動中のパッシブーなスキル
【幻妖】【魔素感知】【影宿り】【魔素回復】
【暗視】【健康】【透過】【反射】【不死】【隠蔽】【危険察知】
移動に使える
【影移動】【転移、転送もできるよ】
複合スキル
【隷属化】【服だけトケール】
【色んな箇所から血が噴き出す大声の合わせ技のやーつ】
ノーマルスキル
【影絵】【エア・ブレイク】
ほとんど使わなかったり、使うのを忘れてたスキル
【影分裂】【予知夢】【認識阻害】【幻影】【呼び起こし】
【スキル付与】【変質】
何かしら制限があるか、体質的に使えないスキル
【飛翔】【巣作り】【毒針】【猛毒】【酸】【押し潰し】
【硬化】【消化】【分裂】【百発百中】【咆哮】【統率】
【憑依】【火の玉】【臭い息】【痛覚耐性】【剣術】【盾術】
【転移術】【暗殺術】【擬態】【噛みつき】【石化】【幻術】
【突進】【踏ん張り】【大声】【首狩り】【死霊召喚】【遠吠え】
【呼吸】【高速泳法】【津波】【切断】【泡吹き】【丸飲み】
【巻きつき】【無音】【分解】【歩行】【集団行動】【吸血】
【超音波】【丸まり】
ぶっちゃけスキル名はわかるけど、正解かどうかが怪しいんだよね。
俺の前世のイメージが追いつかないと誤訳してるみたいだし、詳しくはウィキソニアに聞いた方が良さそうだな。
『マスター、また異世界旅行中ですか?』
人を呼ぶときにぺちぺちと俺の核を叩くんじゃないよ?
宿に戻ってソニアの生着替え付ファッションショーを楽しんだ後は、シャドスペ内のベッドでしっぽり……出来ないので膝枕なう。
『いや、実体化のヒントを探そうと手持ちの核で使えるスキルないかなって整理してたんだ』
『実体化ですか……、一つ試してもらっても良いですか?』
おお、ウィキソニアさんが早速お仕事してくれた。
【硬化】【影伸縮】【巻きつき】【擬態】【変質】の重ねがけ?
大丈夫か? ちょっと広い場所に移動しようか。
シャドスペ内は村がある場所以外は影内ガーデニングというとオシャレだけど、空いてるスペースはデビルプラントが占領してるんだよな。
デビルプラントの近くに行くと、『ぎちぎち』って挨拶してくれる可愛い奴ら。
さて、早速使うか。重ねがけ――
――じゃらららら
おっ? これ、鎖……だよな?
名付けるならシンプルに【変形・鎖】ってとこか。
『どうですか?』
鎖をにぎにぎされる感覚はあるが、厚手の手袋を二枚重ねた状態で触られている感じだな。
『うーん、微妙だ……』
『そうですか、ちょっと持ちますね』
おう、ちょっとだけだぞ。
ソニアが鎖部分を掴んで持ち上げるとじゃらっという音と一緒にこそばゆい感覚が!
『ちょっと振り回してみます』
おう、ちょっとだけ振り回……ん?
鎖を左手で固定して、右手で投げ縄の要領で鎖を回せば、俺の核も先に付いてるわけだから一緒にって――
『ちょまっ!』
――ぶううぅぅん ぶうううぅぅん ぶぅん ぶん、ぶん、ぶん……
『うう、目が回るるるるううぅぅ!!』
『マスターの意識を私の手元の鎖に移してみてください』
おえぇ、ん? ソニアの手元? 手元、手元おおおぉ!
『おう、ぐるぐるしなくなった……。というかなんで振り回すんだよ!!』
『以前、マスターが百キロのスピードで感じる風圧が女性の胸を触る感覚だとおっしゃってましたのでやってみました』
え、じゃ俺の核は百キロのスピードの中にいるわけ?
『バカ! それは触れない奴らの幻想だ! おっぱいは柔らかさと温もり、温もりが風にはないだろっ!!』
もちろん高速道路を走るときに窓から手を出してやってみたけども!!
※良い子は真似しちゃダメだよ。
あんときはちょうど隣の車の運転手が、助手席の女の子のおっぱい揉みながら走ってて、こっちはエアおっぱいだったから切なかった。
『ソニアのせいで切ない思い出が甦ったわ!』
って話してる間も振り回されてるんですけど!?
――ばしゃしゃしゃしゃ!!
『ぎちぎちぃ!』
ああ! デビルプラントちゃんたちが吹き飛んでいくうぅ!!
――ソニアを中心に巨大なミステリーサークルが完成した。
『マスター、実体化のヒントになりましたか?』
ある意味実体化ではあるけど……。
そうだ――
『俺の鎖をソニアの股に擦り――』
――ぶんっ ぶんっ ぶーんっ!!
『ふんぬぁうわがあああ!!』
ソニアにあるまじき声っ!! ハンマー投げのあの人かよっ!!
って持ち手を離したら、飛んでっちゃうよおおお!?
――転生したらハンマーでした。
始まらない。
シャドスペ内だからいいけど、外だったらお星様キラリってなってる気がする。
俺を投げた時のソニアはすごく良い笑顔だった。
きっとルークのせいでストレスが溜まってたんだろう。
◇◇◇
――起きなさい、起きなさい、私の可愛いハーくんや。
ん? なんだこれ?
「おはよう、ハーくん。もう朝ですよ。今日はとても大切な日。ハーくんが王様に旅立ちの許しを頂く日だったでしょ。この日のためにハーくんを勇敢な男の子に育て上げたつもりです。さあ、ママについてらっしゃい」
あー、美人なママンっていいよな。
スタイルもいいし、こんなデカい子どもがいるとは思えん。
旦那を即殺したい!! とか言ってるうちに場面が変わってお城の門へ?
「止まれ! ここから先は王城だ。何用で来た!!」
「はあ……、ハーくん、ちょっと待っててね――」
息子に見せる笑顔が門番に向くと般若に変化して怖い。
そのまま門番に何か耳打ち、ママンの右手が門番のお腹に刺さったように見えたけど。
しばらく悶絶してた門番さん、くの字の姿勢まま――
「ど、どうぞ! お通りください、お坊ちゃま!」
コイツら通していいのかよっ!?
「さ、ハーくん、王様にご挨拶に行きますよ」
っとと、また場面が変わって今度は謁見の間……?
まじで俺は何を見ているんだ?
「よ、よくぞ来た! えっとオル……、え? ライヒル? 誰じゃ? ご、ごほん!! 勇敢らしいライヒルの息子、ハレルヤよ!」
大臣が王様にこそこそと耳打ちしてるけど、まるで国会答弁中継を見ているようだ。
ママンが名前を間違うたびに、床ドンするし野党より怖い。
それにハレルヤ? 嫌な名前だな。
というかハレルヤ君、下を向いてにやにやしてるだけ?
王様にきちんと挨拶しなさいよ!!
「……挨拶もできぬほど緊張しておるのか。すでに母から聞いておろう。そなたの父、ライヒルは魔王との激しい戦いの末、亡くなってしまったらしい」
らしいって……。
王様は自信なさげに大臣をちらちら見ながら話してるし、ハレルヤ君はハレルヤ君で確実に聞いてない。
「しかしその父の跡を継ぎ、旅に出たいというそなたの願い、しかと聞き届けたぞ。そなたならきっと父の遺志を継ぎ、世界を平和に導いてくれるであろう……」
ハレルヤ君、聞いてる? 寝てない? 立ったまま寝てない?
王様、もう気づいているよ!!
「ご、ごほんっ! 敵は魔王“くぁwせdrftgyふじこlp”とじゃ! 世界のほとんどの人々は未だ魔王“くぁwせdrftgyふじこlp”の名前すら知らぬ。だが、このままではやがて世界は魔王“くぁwせdrftgyふじこlp”の手に! それだけはなんとしても食い止めねばならぬ! ハレルヤよ!魔王“くぁwせdrftgyふじこlp”を倒してまいれ!」
なぜか名前の部分だけキーボードの三段目と二段目を交互に打った時のヤツに化けてるっ!?
「ねぇ、ちょっと! さっきからずいぶん偉そうじゃない!? うちのハーくんに倒してまいれって何よ!? 貴方、王様でしょ!! 言い方あるわよね? ちょっとこっちに来なさいっ――」
大臣止めろよ、兵士いないのかよ!?
ママンに耳を引っ張られながらも、王様が助けを求めてるよっ!
誰か目を合わせてあげて?
「……いだだだっ! 離すのじゃ、離してください。し、しかし一人ではそなたの父、ライヒルの不運を再びたどるやも知れぬ……ません。町の酒場で仲間を見つけ、これで仲間たちの装備を整えるがよかろ……られてはいかがでしょうか。ぐすん」
あーあ、とうとう王様泣かせちゃった。
ナイスミドルなのに左耳が赤くなってるし、服装も乱れて威厳がなくなって可哀想。
そんな王様を無視したママンは、雑に宝箱をガチャっとその場で開けちゃうの!? 失礼すぎない?
「は? たった銀貨五枚? 棍棒とヒノキの棒で何を倒せっていうのよ!! うちのハーくんを応援するんでしょ? ……いいわよ、このまま世界中にこの国はこれだけしか応援してくれなかったって触れ回って――」
「お、おお、そうじゃ。わっ忘れておったわ。大臣、銅の剣と皮の鎧、旅人の服を早く用意せよ。大銀貨一ま……四? わかった!! 十枚じゃ。ほれ、ではまた会おう、勇者ハレルヤよ……ぼそっ」
あっ! もう来るなって言った!
ていうか大銀貨十枚ってかなりの大金じゃね?
某有名RPG三作目のプロローグのやり取り、勇者なのか?
勇者が旅立っちゃうの?
「……あの者たち、もう帰ったか?」
「はっ! なぜかツボの中やタンスの引き出しを物色しております!」
びしっと背筋伸ばして答えてる兵士さん、さっきまでどこにいたよ?
「それって普通に泥棒じゃから。……なぁ、大臣よ。そろそろ“会いに行ける王族”ってやめんか? 最近わしに会いに来る者、あんなんばかりなんじゃが……」
うわあ……、王族って大変だな。
「王様……」
おいたわしやって泣いてる大臣もさっき逃げてたよね?
「元々の目的は魔王復活のお告げを受けた国民たちの不安を取り除くことじゃったろ? もうあのお告げから一ヶ月じゃ。国民たちも普段通りの生活に戻っておる」
あ、これは過去の? カタストロフを倒す勇者の話的な?
あれが勇者!?
「……もうわし、王様やめたい」
王様おいたわしや!
魔王カタストロフならこのあとちゃんと封印されてるし、王様の苦労は報われてるから元気出してぇ!?
――スター! マスター!! ……失礼します。
『ふんぬぁうわがあああ!!』
あれ? ソニアの声が聞こえた? いや、おっさんみたいな声が聞こえて……この浮遊感?
『うおっ!! おおおお! ソニア、なんでまた投げたのあああぁぁぁ!!』
――俺のシャドスペ、広すぎ……。




