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あやしい影に転生しました ~自己主張できない周囲に流され系だった不遇モブが、異世界デビューで思いつくまま気の向くままに投げっぱなしジャーマンする話~  作者: yatacrow
第二章 あやしい知り合いが増えました

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第35話 あやしいデート


 翌日、ソニアがギルドに顔を出すと久しぶりの困り顔のコマリコさんから声をかけられた――いつか人体に影響ない液体を作ってぶっかけてやるからな!


「はい、ソニアさん、今回は“ウインドダガー”とソロでルークさんに依頼しますとギリアム様から連絡がありました」


「ぶはははは! やべぇ、ソニアだけ断られてる!! コネまで使ったのに!!」


 ルークがいつの間にか近づいていて話を聞いていたみたいだな。


 指さして生ぷぎゃーってされるとムカつくな。


――俺がやろうと思ってたのに。


『マスター、どうしますか?』


『ん? まだ制裁を加えるほどムカついてはないぞ』


『いえ、ギリアムさんの依頼は断られましたので……』


『ギリアムに制裁も少し可哀想かな、アイツの選択ルートは見守る方向だし。ああ、ソニアがどうしてもギャフンって言わせたいな――』


『あの! 違います。他の王都に行くための依頼を探すのか、ラァブさんを待つのか、このまま王都に試験を受けに行くのか、他に何かすることがありますか?』


 うわ、めちゃくちゃ機嫌悪いんだけど……。


『そうか、えーと、ラァブを待つという選択肢だけはないな。王都行きでついでに受けられる依頼ってあるか?』


「よし、ソニアは俺が雇ってやるよ、一緒に王都に行こうぜ」


『ってルークが言ってるけど? 他に王都方面の依頼はなさそうだけど』


『断っていいなら断ります……』


 よっぽど嫌なんだな。


『それじゃ何もないけど試験を受けにのんびり王都まで行くか!』


「いいんですか!?」


 ソニア、声が出てるぞ! そんなに満面の笑みを浮かべなくても……。


 ちょっと嬉しいじゃないか。


「なんだよ! 結局は俺に着いて来たいのかよ。ちっ、いい女ぶって面倒くせぇな」


 タイミング的に、盛大に勘違いされてしまったがどうするかなぁ。


「……はい、ルークさんの護衛。護衛から護衛依頼も滅多にないですが、受けることは可能です。ソニアさん受けられますか?」


「えっ? ああ、ごめんなさい。独り言です、ルークさんの依頼は受けません。では失礼します」


 ソニアが強引に独り言で片付けてしまった、グッジョブ!


「はい? あ、わかりました」


「はぁ?」


 呆気に取られる二人を置いて、ささっと出て行くソニアがマイペースすぎるんだけど。


 予定がなくなったので、そのまま町中をソニアとぶらついてみる。


――これはデートイベント!?


 ソニアと上手にデートして好感度を稼ぐ……。


――ピコンっ! ソニアに話しかけよう!


 選択肢は――


 一、毎回、似たような物しか売ってないってことは売れ残りじゃね?


 二、ソニアっていくらで売れるかな?


 三、とりあえずローブの裾をたくしあげてパンツ見せてくれよ


 四、ソニアのおっぱいを超える逸材を探したいな


 ……ダメだ、俺に恋愛ジャンルは無理だったわ。


 どれを選んでも好感度を上げる効果だけはなさそうだ。


 よし――


『とりあえずローブの裾をたくしあげてパンツ見せてくれよ』


『は?』


 うん、三番は失敗っと。


『あ、いや、似たような商品を見て回ってよく飽きないよな? 俺はソニアの太もも眺めたほうが楽しいって話だ』


 道具屋の商品――貰う気にもなれない小物類――を珍しげに見たり、あっちこっちの服屋で試着してみたりと、ウインドウショッピングは異世界でも女に人気らしい。


『そうですか? マスターも私の胸とか太ももを見るの全然飽きませんね。結構、恥ずかしいんですが……』


 その恥ずかしさを忘れない限り飽きないと思うんだけど。


『ソニアが頑張って大事な部分を隠そうとしながら着替えをしている隣で、無防備なお隣さんが豪快に着替えてるというギャップが素敵なんだよ』


 生身では体験できないシチュエーションはいいよね!


『……出来れば見ないでいただきたいのですが。 あ、マスター、この服とかどうですか? リボンが可愛いです』


 ソニアの試着タイムに付き合っていると、お気に入りの服と出会えたみたいだな。


 麻生地の薄いピンクの花柄ワンピース、胸元のリボンがワンポイントで可愛さをアピール? そんな感じ。


 ソニアなら何でも似合いそうだけど、もしもマダムが着ていたら、タコ糸で縛って厚手の鍋で煮込んでチャーシューを作っていたかもしれないな。


『おー、美味しそうだな』


『……服の感想を美味しそうで返す人、初めて見ました』


 あ、チャーシューに意識を持ってかれてた!


『おう、マダムがチャーシューになってたんでな? ソニアに似合ってるぞ』


「すみません、この服買います」


 ちなみに、お金はたくさん持っている。


 この間、この町の町長宅に勝手にお呼ばれしたときに、お土産もらったからね。


 ムンロスと違って、可もなく不可もなく、家宝もなく、気がついたら海に落っこちてても誰も気づかないレベルの“普通のおじさん”だったな。


――おーい!


 なんだよ、二人のラブラブデートを邪魔しやがって!


『なんでしょう、とても不快な表現を感じました』


 それ、ルークの事だよね? 俺とのデートの話じゃないよね?


 おい、目を合わせろや。


「おい! ソニア、やっと見つけたぞ!! はあぁっ!」


 慌てた感じでルークがわあわあ言って、大きく息を吐いた――あれ? ギリアムの出発時間ってそろそろじゃなかった?


「……何かご用ですか?」


 いつからこんなに塩対応になったのかね?


「おい、本当に行かないのか? 俺からギリアムって奴に言ってやろうか?」


『お前が言って依頼が受けられるなら俺が直接お話するっての。どこから来るのかこの自信……』


「いえ、ルークさんありがとうございます。では失礼します」


 とりあえずやんわりお礼ともう話しかけないでレベルのご挨拶。


 さすがにここまで無下にされるとルークの顔も真っ赤だね。


「ちっ! 大した顔でもないくせにお高くとまりやがって!! 俺はこのまま影の力を使ってベルトンさんのように王都でAランクになる!! そんときにすり寄って来たってもう遅いからなぁ!!」


 小物臭のするフラグ作ってルークは、町の南側の門へとどすどすと歩いて行った。


 ルークには聞こえてないけど、ソニアが「親殺し……」って呟いてるのを聞いてしまった――親殺しなんてどこにでもある話なんだけどね。


 さて、ルークについては俺なしでどこまでやれるのか気になるところだが、まあ勝手に頑張ってくれ。


『そういえばマスター、あの剣は良かったのですか?』


 あ! 格好いい剣、返してもらうの忘れてた!!


『……餞別だ。ルークが気に入ってたからな』


 黙って取り返してもいいけど、どうせ王都に行けば似たような武器があるだろ。


『そうですか。……そういえばウザインさんの箱に何か入れてましたけど、国家間で贈り合う物にはそれぞれ意味があるんですよ――』


 ご存知ですよね? ぐらいの語り口調、うん、全然ご存知じゃないよ。


――ここを押さえるだけで、異世界でも立派な外務大臣になれる三つのポイント!


・高価な武器や防具……同盟の申し込み、承諾の意味がある


・宝石類……婚姻の申し込み、承諾の意味がある


・価値のない物……問答無用で宣戦布告の意味がある


 ……ソニア、そういうことは早く言おうか?


『へえ……、間違えてボロい武器なんか入れた日には大変だな』


『はい、後で間違ってましたなんて言い訳も出来ません』


『……差し替えは出来るよな?』


『いえ、間違えて“価値のない物”を贈るなんて、同盟を軽く考えている証拠ですし、そのような国は信頼されません』


 融通、利かねぇな! この世界っ!!


 あの剣の代わりに何を入れたんだったかなぁ……、思い出せない。


『ああ、また混沌の種子がばら蒔かれてしまったのか。ヨウスフィアの神よ、世界をお救いください、なんつて――』


――ピシャッ! ドドドーンっ!! ンヂィイン……。


 まじか、沖の方に雷落ちたよ!! 何本も。


『マスターはヨウスフィア様に目を付けらているのかもしれません』


『ええー!? 俺、何もしてないぞ!』


 善良な影に何て酷いことを言うんだ。


 でも、目を付けていても直接的な介入は出来ないのかも?


 海に落ちてたけど船は出てないし、あんな沖の方まで遠泳する奴なんていないか。


 よし――


『びびったせいで、ソニア成分が足りなくなった。宿に戻ってファッションショーしようぜ』


『ソニア成分……』


 心底気持ち悪そうな顔してる。


 そういう顔もご褒美です!


 っ!


『曲者っ!!』


 【影伸縮】【影読み】――


 なるほど! 【影分裂】――


『確かにマスターは曲者ですけど、どうされました?』


『違う、人聞きの悪いことを言うなや。いや、ちょっと気になる奴がいたから調べただけだ。大丈夫、俺たちは関係ないようだ』


――主にギリアムとルークを調べてるみたいだな。


 黒装束のストンっと平らな胸を持つ女、王都から派遣されたみたいだけど……。


――アイツらと一緒に行動しなくて良かった。




◇◇◇




 ソニアという女、かなり怪しいがギリアムとは別行動か。


 魔王復活のきっかけを作ったと思われる商人ギリアム、シータウンでの変事も落ち着き始めたこのタイミングでこの男が王都に向かう意図はなんだ……?


 それに護衛のルーク、彼は王都では大人しい少年だったはずだ。


 海のダンジョン攻略を経て大きく成長したと言われるが、ここまで性格や実力が変わるものなのだろうか、まさか魔王と何か関係があるのかもしれない。


 とりあえず部長に報告書を飛ばして、このまま監視を続ける。


――何事もなければいいが。


 と、影読みしたさっきの女は王国諜報部の人かな?


 面白そうだから、諜報女に分裂させた影をつけておこう。


 影分裂は影糸なしで影を分離させて、対象に影宿りさせるスキルだ、もちろんジャミラにも付けていて気が向いたら巨乳様を拝んでいる。


 さてと第一印象は大事だし、挨拶しておこう。【精神干渉】――諜報女


『ねぇねぇ、ペタ子お姉ちゃん。お姉ちゃんのおっぱいはすっごく控えめだけど、どうしてブラを着けてるのー?』


 ちょっと声色を変えて、子ども名探偵が容疑者に子どもっぽく質問する感じならペタ子も答えやすいはず。


『っ!? 今、子どもの声が……?』


 ばばっと辺りを見渡しても姿は見えないよー。


『僕はね、ペタ子お姉ちゃんの影にいるから姿は見えないよ』


――影……だと!? 確か、復活した魔王は影の姿をしていたはずだ。


『まさかっ! 貴様は魔王か!?』


『違うよ、魔王じゃないよ! 僕はただの善良な影だよ』


――善良な奴ならこんな無配慮な質問はしない……。


『そこは謝るっ! だって面と向かって質問したら殺されるか通報されちゃうだろ?』


 ダメだ、警戒されまくりだし話し方戻そう。


『……魔王とは臆病で最低なクズだな』


 くっ、魔王以外は否定出来ないが、安全に女の子とセクハラトークが出来るのだから影って素敵。


『魔王じゃないけど質問に答える気もないようだな』


『何で魔王に私の……胸について話さないといけないんだっ!! うぅ……』


――自分の胸が控えめなのは知っている、だがそれがなんだというんだ。


『いやね、昔っからそういう事を女の子に聞いてみたかったんだよ。どういう反応するのかとかも含めてか、ごめんね?』


『っ! 心を読んでいるのか!?』


『心は読めるぞ! だから俺のセクハラ質問に答えなくてもペタ子が何を考えてるのか分かるぞ。まあ、ここで会ったのも何かのご縁だ、よろしくなっ!』


――くっ、どうしたら……。


『どうするも何もぼそぼそぼそ――』


 ピー音トーク開始。


『ううぅ!』


 声が出ないように手で口を押さえてる仕草がナイス!


『なるほど……。ありがとう』


『……やめろ、やめてくれ。勝手に心を読んで納得しないでくれ』


――恥ずかしい、死にたい……。


『あ、やりすぎたか。ちょっと休憩しよう』


『……そうしてくれ』


『あ、ほら、ギリアムたちが出発するぞ。追いかけないと!』


――そうだ、任務を遂行しなければ……。


『貴様はギリアムたちと関係があるのか?』


『ん? 多少の縁はあるかも?』


――やはり奴らは魔王との関係があるようだ。


『セクハラトーク九割で良ければギリアムたちの事を話してもいいけど?』


『……やめてくれ』


 じゃあ、十割セクハラトークの始まりだな! 


 といっても言葉だけじゃつまらないから早く実体化する方法を探さねば!!

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