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あやしい影に転生しました ~自己主張できない周囲に流され系だった不遇モブが、異世界デビューで思いつくまま気の向くままに投げっぱなしジャーマンする話~  作者: yatacrow
第二章 あやしい知り合いが増えました

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第34話 あやしい本音


 ダンジョン攻略隊がソニアとルークを残し壊滅したこと、ムーンの町までの道を確保したシータウン支部のギルマス“ライガン”たちが戻ってきたこと、ギリアムが事情聴取――ヤック村について――を受けたこと、ルークがちゃんとノンチェリーになったこと、ダンジョンで死んだ冒険者ベルトンたちや()()した町民たちの合同葬式をしたこと等、なんだかんだでアクアス村がなくなってから、あっという間に二週間が経った――一番の話題は親善大使の出立になると思うけど。


 大渦が消え去り、砂漠の国“アイリス”に戻れるようになった親善大使ウザイン一行は、現在、()()()()()()()()()()に乗ってサラマンドル大陸に向かっている。


 ウザインたちの荷物を積んでいる船員を見ていたら、このまま港ごと運んだ方が楽チンじゃね?


 しかも運んでる間はラァブと離れられるんじゃね?


――採用!


 御代は豪華客船でいいよ。【影伸縮】【影収納・斬】――


 豆腐の角をスプーンですくうイメージで、斜めに影糸を入れていけば土台はしっかりしたたまま大陸を切り取れた。


 それはもう綺麗にスパッとね!


『ラァブ、俺が切った港に触手を巻きつけてさ。砂漠までおっぱい様たちを送って来てくれるか?』


『うーん? 海流を操作したらラァブが引っ張らなくても送れるわよぉ?』


『いやそこは安全策を取りたい。おっぱい様たちを無事に送り届けてほしい!』


『……分かったわぁ。少し寂しいけど準備するわねぇ』


 よし、しぶしぶだけどラァブも承諾してくれたから海中に放流しておこう。


「……では、ジャミラ様お元気で。あともう少し後ろに下がっていただいてよろしいでしょうか」


 俺たちの会話を聞いてるソニアが、それとなくジャミラを落ちないように誘導してくれた。


「……? こっちね? それじゃソニアも何かあれば私をいつでも頼ってね」


 美乳と巨乳の出会いと別れ。


『シェイドちゃん、巻けたわよぉ!』


 しんみりとおっぱいを眺めていたら、ラァブから合図があった。


『それじゃ、おっぱい様たちを頼んだぞ、あとお土産もよろしくな!』


『分かったわぁ。お土産とラァブが戻るのを待っててねぇ?』


『ああ! これでラァブとしばらく離れられるから清々(せいせい)するよ、最大限にゆっくり、ゆっくりと帰って来いよ、まあ、来なくてもいいけど』


――ラァブと離れるのは寂しいから、なるべく早めに帰って来てくれよ、待ってるぜ――


『っ! エンドレスで酷いわああ。……もう! シェイドちゃんのバカァ! うわあああああ!!』


『おい、誰がバカだよ! 失礼な奴、もう帰って来んな! ぺっ! ぺっ!』


――ごごごがごがががが!


 地響きとともに大陸の一部が海に向かって進んでいく。


「――うわぁ! がぼぼ」


――ぼちゃん、ばしゃん!


 ラァブがいきなり引っ張るもんだから、荷物やおっさんが海に落ちてしまった。


 ちなみに、ソニアは亀裂が入ると同時に港側にジャンプして、そのままジャミラたちを見送っている。


『なんなんだよ、なぁ? ソニア』


『……マスター、さすがにラァブさんが可哀想ですよ』


『は? リップサービスだけど、「ラァブと離れるのは寂しいから、なるべく早めに帰って来てくれよ」って伝えたのにあの態度だぞ。もうアイツは知らん!』


 ソニアはラァブに少し甘いんじゃないのか? たく!


『あの……、先ほどのマスターの言葉だと全く逆の意味にしか聞こえませんでしたけど……』


 ……うそん!


 あ、そう言われると本音と建前を間違えた気がしてきた……。


『あ、えーと、ほら、俺って裏表ない性格じゃない?』


――私って○○な性格じゃないですかぁ? 勝手に自己分析を押しつけてくる奴っているよね?


 こういう奴には「知らねぇよっ!」って顔に水でもかけてやればいいんだけど、ソニアなら俺の性格を知ってるから、この発言も許され――


『知りませんけど』


――ぱしゃっ! どこから出したよ、コップと水を!!


「うわっ! 冷てぇ! なんだよ、水が飛んできた!?」


「あ、ルークさんにも水がかかってしまいました」


 ルークは最近色々あってウザくなってきてるから、せっかく睡眠使って黙らせていたのに寝耳に水っちゃったよ――というかマスターに水をかけるとか、ダメ、絶対!!


 だいたいソニアはルークを嫌いすぎ!


 ノンチェリーになってから調子こいてるのはウザいけどね。


「あれぇ? ここの港ってこんなに小さかっ――ぐぅ……」


 とりあえずルークはその場で寝かせて、俺たちは宿に戻ることにした。




◇◇◇




 それから数日後のギルドにて――


「――ソニア! この間は俺を置き去りにするなんて酷いじゃねぇかよ!!」


 ルークがソニアに噛みついてきた。


 そういえばあの後どうなったんだろ?


 顔にアザがあるところを見るとルークに何かあったのかも。


「…………」


 ソニアよ、無言で冷たい視線を送りつけるの止めて差し上げろ。


 ルークが怯んでしまうだろ。


「ぐ! そ、ソニアが置いて行った後だろうな、何でか寝てしまった俺をわざわざ起こして絡んできた奴らがいたんだよ。まあ、全員ぼこぼこにしたら、最後は泣いて命乞いしてたけどな。ははっ」


 なんか聞いてないのに武勇伝を語りだした。


 ソニアには勝てないって本能的に知ってるせいで逆に強がって見せてるのかも?


 豹変系主人公になったルークは、なんちゃって剣術とレベルアップのおかげで、今では俺が手伝わなくてもその辺の一般人よりは強くなっている――ちなみに俺が渡した剣は布に包んだ状態で背負っていて見た目だけなら勇者っぽい、ぶふっ!


 ルーク的には普段は腰に差している安物のブロードソードで、ここぞって時に背中の剣を使う気らしい――相手が装備するまで待ってくれてるといいけど。


 おらおら系のショタ顔が“ギャップ萌え”と巷のマダムたちからサロンに呼ばれて肉弾戦――あのマダムたちで卒業するならセレンで卒業しても良かったんじゃないか?


 ちなみに、おらおら系になったきっかけだけど、ダンジョン攻略の功績でCランクになって、その報告で実家に帰ったことだったかな。


 久しぶりに我が子との感動の再会シーンと思いきや、ルークの話も聞かずに「遊び人が何で戻ってきたんだ?」から始まって、「お前は我が家の恥さらし」とか言われたら、そりゃルークもキレるよね。


 結局、家の中にも入れてもらえず、玄関先で怒りで震えているルークに通りすがりの知り合いや元友人たちが追い打ちかけてきて……プッツンしちゃった。


『命乞いするルークの家族や知り合いを半笑いで切っていくルークにはドン引きだったな』


 ちなみに、ルークの家族、知り合いは変死した町民の一部になる――


『マスターはそれを煽ってませんでした?』


『それはよく覚えてないなぁ……』


 ふひー、ふひー、口笛吹けない、口がないから……。


「なぁ、ソニア、依頼なんか後回しにして飯でも食いに行かないか? 俺がおごってやるからさ」


 最近、“ソニア”呼びがウザく感じる俺がいる。


「……食事は宿で取りますので結構です。ルークさんはそのお金で装備を整えて冒険者として頑張ってください」


 早くも別れる気満々の塩対応だ。


「おいおい、ずいぶん冷たいじゃねぇか。一緒にダンジョンクリアしたし、ピュアスライムの魔石も数えた仲じゃねぇかよ」


 がくっと肩を落としながら、そうのたまってくる。


『本当、人って力を持つと変わってしまうよなぁ』


 アクアス村のセイレーン大量惨殺事件後、ひぃひぃ叫ぶルークをラァブが触手で巻きつけて、岬もどきまで高速移動、さりげなく合流したソニアに違和感を感じる余裕もないまま、冒険者ギルドで報告した頃はまだ小心者のルークがちらちら見え隠れしてたんだけど。


 ギルドはベルトン死亡報告で騒然としたが、マッスゥがうまく収めていた。


 初めての力に酔いしれて、その後に自分がやったことへの後悔が来て、ラァブに巻きつかれて運ばれる恐怖、からの依頼への達成感で上がった気分を、家族や知り合いたちの罵詈雑言で台無しのドン底に、ルークの感情の振り幅が激しすぎておかしくなっちゃったのかも?


 仕方ないから落ち込んだルークを誘って、町中を物色したり、レディのスカート溶かしたり、視界共有で公衆浴場を覗き見したりと憂さ晴らしに協力してやったら、調子を取り戻すどころか、さらにハイテンションモードにまで昇華してしまった。


 俺がルークと一緒に行動して思った事は、早く実体化したい、ルークだけ()()()、だな。


『マスターの影響でしょうか……』


『いやいや、遊び人のジョブの資質じゃないの? 覗き方の発想が斜め上だったし、スカートをどうやって溶かすのがいいかの発想はかなり参考になったぞ。単に方向を間違っただけじゃないか?』


 めげないルーク、幻妖中とはいえ若いソニアにも関心があるらしい。


 脳内補正で顔なんて好きに変更できるんだし、女慣れしてない野郎は近くの女に手を出しがち説は異世界でも立証できそうだ。


「なぁ、次はギリアムって商人の護衛だっけ? ソニア、俺は王都で冒険者やってたんだよ、道中も詳しいから任せてくれよ」


 ピュアスライムさんの魔石が揃ったことで、期限は切れているものの依頼品が揃ったギリアムは、王都までの護衛依頼をギルドに申し込んできた。


 俺たちも王都に行く予定だったし、ソニアに受けさせることにした――推薦状もやっと貰えたし。


「私はギリアムさんの護衛依頼はソロで申し込んでます……」


 ソニアが何言ってんだコイツって目でルークを見ている。


「あ? 俺たちパーティーだろ!? 俺がいなくてもいいのか?」


 ぶっちゃけ俺頼みなのにルークの勘違いがヤバい。


「……問題ございません。それにパーティーを組んだ覚えはないです」


 超塩対応! 某アイドルもびっくりだよ。


「いいのか!? 俺の影がなければ苦労することになるぞ!」


 こらっ! そんなに声を荒げないように、ギルドの中にいた人たちがこっちの様子を伺ってるぞ。


「はい、そこまでです! ソニアさん、ルークさん、ギルド内での揉め事は困ります」


 あ、コマリコさんに怒られた。


 ちなみに、おっぱい解放軍の活躍により一度は窮屈な檻の中に入れられていたコマリコさんのおっぱいたちだが、現在は――


 ふんわりブラに職員シャツでおっぱいたちに優しい環境になったけども、さらにその上にフルプレートアーマーでガッチガチに重ね着したコマリコさんに最早一分の隙もない。


『彼女がフルプレートアーマーを外すときに立ち会いた――』


『今は立て込んでおります』


――最近、ソニアが相手してくれない件。


「ちっ! わかりましたよ! ……なんだよ、その鎧は?」


 ささっと胸を隠すコマリコさんの仕草が可愛い。


「はい? ルークさんには関係ない事ですね。ギルド内で揉めるようであれば私たちが黙ってませんよ?」


 がははっと後ろからマッスゥが出てきて腕組みをする――相変わらずの熊男だな。


「……ギリアムの護衛依頼、俺も受けたいんだが?」


「はい、……依頼人のギリアム様に確認しますので、少々お待ちください」


 討伐系、探索系、採取系といくつか依頼内容には種類があって、その中でも護衛依頼は相手にも断る権利がある。


 そりゃそうだよな、信頼が置けない冒険者を護衛にするとか怖いわな。


『俺とギリアムの仲で断るとかあり得ないけどな! そうだ、シータウンまでの道中ではお世話になったって伝言しておけば確実だ』


『よろしいのですか? わかりました』


「……コマリコさん、ギリアムさんにはシータウンへの道中でお世話になりましたとお伝えください」


「はい、ソニアさんはまだ新人ですがギリアム様ともご縁があるんですね。お伝えしておきます。あ、ルークさんはこれから依頼票に記入がありますので残ってください」


「なんだよ、コネなんか使わなくたって俺がうまく話してやるから心配すんなよ」


 コネは使ってなんぼだよ、そんなルークはベルトン路線で選ばれそうだけど。


「えっと、大丈夫です。では失礼します」


 ルークの提案をさくっと拒否して、ソニアがギルドを出て行ったので俺も一緒にさようなら。

 

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