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あやしい影に転生しました ~自己主張できない周囲に流され系だった不遇モブが、異世界デビューで思いつくまま気の向くままに投げっぱなしジャーマンする話~  作者: yatacrow
第二章 あやしい知り合いが増えました

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第33話 あやしい寝起き


「アッー!」


 セレンの部屋で響いた声は、薄い壁を通り抜け、きゃっきゃうふふ中――建設工事中――のラァブの耳にまで届いたらしい。


「はあっ、はあっ、これを……僕が……」


 肩で息をしているルークの足元には、全身がワカメ色に変色してピクリとも動かないセレンが転がっている。


『犯人はマス――』


『早い、早いよ! 火サスの開始十分そこそこで出演する俳優さんの配役だけで犯人を決めつけるぐらい早いよソニア!』


 脚本家泣いちゃうから!


 モブっぽいベテラン女優さんとかほぼ確定だし。


「ま、た、毒矢……?」


 そう、セレンがルークの“リトルルーク”を捕食するべく、腰から魚に変わる境目に出現したイソギンチャクが大きく口を開いたとき、俺の黒歴史(トラウマ)が――


――可愛いわね、坊やの“リトル坊や”……。


――こんな小さい子に……尊いわぁ。


――ばしっ!! 金は払ってんだから泣くんじゃないよ!


『うわあああああああ!! 【影吹き】――』


 気がついたら毒矢でセレンを刺していたんだ。


 ルークを守るというより、俺の心が()()()()シーンを見たくなかったみたいだ――俺が魅了されていたら、そのまま眺めていたのかも。


『ソニア、俺が間違ってた。ショタっ子が見た目キモおっさんに、無理やりチョメられるシーンなんて俺の得にはならなかったんだ』


 凌辱モノやロリッ子モノ、二次元の世界やアダルティな動画世界でなら、それなりに興奮するんだけどね。


『今度は美魔女とか本当に綺麗なお姉さんでお願いしたい』


 どこかに女騎士とか落ちてないかなぁ。


『何の話かが分かりませんが、ルークさんを助けていただいてありがとうございます』


『ふっ、礼を言われることでもないぞ』


『そうですね』


 おいっ!


 さて、ソニアとのストロベリートークをそろそろ止めて、絶賛混乱中のルークをどうするか。


 卒業式を邪魔してしまったしな、しばらく力を貸してやるか。


 ここは王道ファンタジー風にいこう――


『おい、危なかったな』


 精神干渉と影読みのコラボレーションだ!


「え? 誰っ!?」


 ノーマルスキル【影絵・ルーク】――


『俺は影だ』


 ルークの目の前の壁には、俺が出したルークの影が揺らめいている。


「へ? 僕の影……? どうして……まさかベイスさんも無意識に……。そんな僕がやるわけない、僕じゃない! 僕じゃないんだぁ!!」


 僕の影じゃなくて、俺は影! ちゃんと話聞いてくれ。


『マスターが犯――』


『ソニア! おだまり!』


『まあ、混乱する気持ちもわかるが落ち着けよ。お前はこのナマ魚類にチョ……理由も分からず襲われそうになり、誰かに助けて欲しかったんだろ?』


「……確かに、助けて欲しかった。でも、殺すなんて!」


――そんなつもりはなかった! だってさ。


『殺らなければヤられてたぞ。()()我慢するつもりか? 泣き寝入りでいいのか?』


「っ!」


 【精神干渉・過去の思い出ぽろぽろ】――


 こうやって見るとルークの過去も八才以降は結構悲惨だよなぁ。


「うっ、ううぅ……。違う、僕は遊び人なんかじゃないんだ……」


『そうだ、お前は運悪く【遊ぶ者】のジョブを擦り(なすり)付けられただけだ、お前は悪くない』


「そうだよ、ヨウスフィア様にジョブを授かったけど……、これなら何もないほうが良かった!!」


 ……ジョブ無しでも、この不遇ルートに入りそうだけど。


『だから、お前は真面目に生きてきた、遊ぶ者のジョブを否定するように』


「そう、僕は真面目に、人に誠実に生きてきた。なのに、誰もが遊び人だって色眼鏡で見るんだ」


――誰も僕を信用してくれない。


『家族に捨てられ、周囲にバカにされ、人殺しだと疑われ、信じた仲間に見捨てられた……』


『後半はマスターが関与してますけど――』


 ソニア、お口チャック! ノーマルスキル【魔素注入】――


『んはっ! ごめんなさいマスター……んん』


 テレビでシリアスやってたら、違う番組のエロシーン観たくなるよね?


「気がついたら目の前に魚臭いおじさんがいて……。はっ! みんなはっ!? どうしたんだろ……」


『自分を見捨てた奴らの心配とは余裕だな。お前は殺されるところだったんじゃないか?』


「そうだけど……、誤解だって話せば――」


『ベルトンでさえお前を完全に信用出来なかったから捕まったんだろ? あ、ベルトンは死んだぞ』


「くっ! どうして……」


――こんなことに!


『お前が弱いからだ。弱すぎたからだ』


「僕は弱い……」


――そう、ずっと弱いまま、これからも……。


『それでいいのか? 悔しくないのか? これからも虐げられ、バカにされる人生でいいのか?』


「……わけない」


 え、なんて?


「悔しくないわけないっ!! 僕に力があれば! 家族に捨てられることも、皆にバカにされることも、ベルトンさんを失望させることも、……そして、死なせてしまうこともなかった――」


『力が欲しいか?』


「……ち、から。僕に力があれば……!! 欲しいさ、誰にもバカにされない力、誰にも傷つけられない力が欲しい!!」


『力が欲しいのなら……』


 ノーマルスキル【影絵・ジャバウォック風】


 壁一面に広がる影の化け物、こういうのやってみたかったんだよなぁ。


 決めのセリフ行くぜ――


『くれてやる!!』


 おいいいいいぃぃぃぃ!!


「えっ!? 今の声だけ女の子!?」


『おい、ソニア、何してくれちゃってんだああぁぁ!!』


『マスターの記憶で、そのセリフ知ってて……いつか使ってみたかったんです』


『俺もだよ! 気が合うな! もう俺の記憶返せやぁ!!』


 おい、ざまぁ信号送ってくるな、お久しぶりだよ本能まで!!


――ねぇん、すっごい魔素を感じたんだけどぉ! ルークちゃん出しすぎじゃなぁい?


「誰か来るっ! ど、どうしよ……」


『あー、もう。そこのナマ魚類に手を向けて影収納って呟いて……』


「僕の影が急に投げやりに……、えっと、こうかな影収納」


 はいはい、【影収納】――


『ソニア! お前はナマ魚類を解体して核を取り出しとけ! バカぁ!』


『かしこまりました』


 くそ、やりとげた顔しやがって!


「すごい消えた……、これが僕の影の力……」


――コンコンッ!


「セレンちゃん、開けるわよぉ! お取り込み中ごめんなさぁ……い。あれ? セレンちゃんは?」


『お前、ヤってる最中に乱入するつもりだっただろ』


『ぁん! ち、違うわよぉ。たまたまルークちゃんのタマタマを……ンヂィ! ごめんなさい、最中が見たかったのぉ』


『チョメチョメ中に乱入していいのは、ハーレム展開かその道のプロ――追加オプション――以外は許さない』


「えっと……、貴方は……」


「ルークちゃん起きたのね、初めまして、ラァブはクラーケンよ」


「……クラーケン!? くっ、こんなところまで……、ベルトンさんの敵だ!!」


 ばっ! ルークがラァブに手を向ける。【魔素吸収】――


「ンヂイイイイイィィィィィ!!」


『そこの人型クラーケンは、今は味方だぞ』


「えっ! ごめんなさい!!」


「だ、大丈夫よぉ……」


『シェイドちゃん出来れば説明を先にして欲しかったわぁ』


『すまん、セリフ取られた八つ当たりだ』


『ぁん! 理不尽魔王様ぁ……』


 理不尽なのはソニアだよ!


「何があったリンプ! 貴様ら、セレン様をどうしたリンプっ!?」


 海老魚人が銛で威嚇してきた、ラァブが騒ぐから九割魚人ズが集まってきたんだけど……。


 ちなみに、セレンの核はソニアが解体して金庫の中に――


 セイレーン 【歌】【美声】【魅了】【人化】【呼吸】【高速泳法】


――人化したら、その辺のおっさんにしかなってないな。


 解体済みの変色したセレンとか見た目が気持ち悪い……。【影吹き】――


――べちゃべちゃっ!


「まさか……、これがセレン様リンプ!?」


「きゃー、セレン様が人間に……」


「捕まえるっタイ、セレン様の敵っタイ!」


 海老、セイレーン、鯛の三匹が戦闘態勢に――


「待ってぇ、喧嘩は止めてぇ!!」


 ラァブがルークを庇ってる間に説明しておこう。


『ラァブを盾にしている間に、影の力を手短かに説明しておくぞ――』


「ラァブ、そこをどきなさい!【魅了】――」


 おっと、そうはいかない。【精神干渉】――ラァブ


 なるほど、セイレーンの魔素を弾いている感じだな。


『え……、セイレーンちゃんたちってこんなだっけぇ。ぁん! これならラァブの方が勝ってるわよね、シェイドちゃん?』


『おう、キモさでラァブの右に出るものはいないぞ』


『……誰かに優しくされたいわぁ』


「なんで!? 魅了が効かない! お前たち、クラーケンの主を先に殺せぇ!」


「一斉に銛を投げるラメ!」


「喰らえっシャ!!」


「喰らウニ!」


「えっと、守りの技【影纏い】――」


 ほいほい、ルークを影で包んで、飛んでくる銛はシャドスペ内に――


『ぼげぇ』


『ごぼぅ、ぐぶ』


 やっぱりシャドスペ内のゾンビに被害がいってしまう。


 次から収納先を一ヶ所に集めるように意識してみよう。


「銛はいらないから返すよ【影吹き】――」


――ずどどっ!


 タイやヒラメが舞い踊る、お前らは銛に刺されて獲られる方だからね。


『次はこの剣を使ってみろ』


 ジャジャーン!!


 見てよ、このシンプルだけど上品な鞘は鯉口部分に装飾がされていて、剣の鍔部分の装飾と合わせると獅子の紋章となる格好いい剣。


『マスター、その剣は?』


『ん? ウザインとこで交換した剣だ』


『あのときの……』


「すごい! でも、僕は剣術の才能なんて……」


『ほら、新手が来たぞ。剣術なんて要らない、ちょっと振ってみろ』


 新手のセイレーンたちがビチビチと尾ヒレで威嚇してくるところに、ルークがへっぴり腰で剣を振る……うん、才能ないわ。


 【影伸縮】で影糸を剣の先からセイレーンに伸ばして……【影収納・斬】――


「「「「ぎょぎょぎょー!!」」」」


 セイレーンの首だの腰だのの部分だけ収納すると傍目には――


「え? 斬れた……!?」


『これが飛ぶ斬撃だ』


「すごい! すごいよ! ははっ! えい! やぁっ!」


――ぶんぶん 風を切るたびに影が飛ぶ。


「やめ、ろ……」


「ンヂィ!」


「っガニィ!」


「この! ヒトデな、し」


「それっ! それっ! ははっ、死ねよ!」


 ルークもノリノリ、喜んでくれて良かった。


「いっタイ!!」


 次から次に出てくるセイレーン、鯛魚人、ヒトデ魚人に烏賊魚人がばらばらに切れていく――ん? 烏賊魚人?


「ルークちゃん! 酷いわ! ラァブの触手が一本切れたわぁ」


 おう、すまん。


『ラァブの触手、せっかくだし討伐証明として使おうか』


『……そうですね』


 ソニアの呆れ感をひしひし感じるけど気にしない!


 ルークはさすがに振り回しすぎて肩で息をしながら、自分の手を見ている――謎の液体まみれの汚れた手だな。


「はぁ! はぁ! はぁ、すごい……、これが僕の……、俺の力!! ははっ、影よ、もっと俺に使い方を教えてくれよ! ラァブ、ここは俺がやるから手を出すな」


 うおおおぉぉぉ!


 胸アツの不遇キャラの豹変きたー!!


 ソニアにセリフ取られたけど、ラノベあるあるを演出できて満足だ。


『ルークさんが変わってしまいました……』


『人なんて力を手にすれば簡単に変わるんだよ』


 自分がされた事を誰かにしてみたくなるもんだ。


「ほら! ほらぁ! あっははっ! こんな簡単に殺せるなんて!!」


『ルークさん、泣きながら笑ってますね……』


『まあ、楽しいんじゃないの? 初めて奪う側になれたわけだし、レベルも上がってテンションおかしくなってるだろうし』


 海のダンジョン――ラァブ手抜きトンネル――、生き残りはソニアとルークだけ。


――場末のスナック“アクアス村”は本日をもって閉店しました。

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