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第2話 あやしい目標と初の挫折


 種 :【魔影】王体

職 能:未選択

  ▽ 【スライムシャドウ】

スキル:【魔素吸収・プロ】

    【魔素感知・プロ】

    【影宿(かげやど)り】

    【影収納】

    【影伸縮】

    【魔素回復】

称 号:【理性ある狂気】

    【同族喰らい】

    【イレギュラー】



 王体になった。


 本体を広げると運動会の競技で使う大玉くらいの大きさだ。


 影を圧縮してバスケットボールぐらいの大きさにキープ――圧縮すると影が濃くなるな。


 収納スペースは三倍くらい広くなったから、スペース内はすっかすかだ。


【魔素回復】……スキル使用等で減少した魔素を回復している


――スキルは魔素を消費して発動させていたのか、その減少分を回復している?


 勝手に発動し続けるパッシブスキル的なやつ? とにかく回復系なのね。


【影伸縮】……影を伸縮することができる


――影ってのは黒いもやのことか、光あっての影なんだけど、影だけで独立してる俺は、なんてファンタジー生物なんだろう。


 疑問に関しては、本能が信号で答えてくれる。


 意訳するのは俺の記憶――大丈夫か?


 王体になってから、『集めよ』の連呼がなくなった。


 今のうちに状況を整理する。


 魔素吸収をやるときに出る細い糸は、俺の影の一部――名付けて影糸。


 そして、核が五感の役割をしてくれるようだ。


 影には触覚はない、何かに触れたいときは核を出すしかない。


 核だけが実体化しているようだ。


 胸の大きな女の子に抱きしめてもらえれば、きっと素敵な感触を味わえることだろう。


 核の大きさは占い師の使う水晶玉サイズ、見た目は黒一色。


 重さもありそうだし、鈍器として使えそうだけど万が一ヒビが入るとか、割れでもしたら、影生が終わっちゃうからダイレクトアタックを試すのはやめておこう。


 周囲を核を視点に見渡す。


 壁に埋まった石がぼんやりと輝いていて辺りをうっすらと照らしている。


 なお、魔影にこれ以上の成長はない……。


 がびーん。


 これから魔影として暗い部屋で、ぷちぷちじゅるじゅるしながら生きていく。


――いやいや、もう少し波が欲しい。


 せっかく転生できたんだし、日本に帰りたいとか魔王になりたいとか言わないけど、ずっと魔影って……。


 唯一の波が、職能欄の変化。


 おそらく収納スペースにスライムの核が入っているからだと思うけど、【スライムシャドウ】という職能を選べるようになった。


 俺のターン!! 【スライムシャドウ】を職能にセット、保有スキル【影分裂】


 【影分裂】の効果で、影が二つに!!


 …………。


 ま、スライムのスキルだし、期待するのは酷か。




◇◇◇




 なんと! 暗い部屋には扉があった。


 暇すぎて部屋中をごろごろと転がってたら扉を見つけた。


 核で押してみるが全然動かない、扉は押すなり引くなりしないと開かない。


 そして俺の影は実体がない。


 出れない……。


――と思ってたら、扉の隙間からじゅるじゅるとスライムが入ってきた。


 この部屋の魔素溜まりが目的か? 残念、この部屋にあった魔素溜まりは俺が全て吸収した。


 魔素溜まりも試したら吸えた――これは水だな。


 魔素溜まりは時間を置けばまた自然発生するからなのか、本能からの警告は少なかった――でも警告はされた。


 とりあえず隙間を埋めてるスライムはじゅるじゅる十秒チャージでさくっと吸収、一旦、核を収納して、扉の隙間に影を伸ばして向こう側に出る。


 後は核を外に出せば扉のくぐり抜け成功――ナイススライム。


 そんなわけで部屋の外に出た――ずいぶん薄暗い通路だな。


 傾斜がついてるな――とりあえず坂を上ってみよう。


 だんだんと明るくなっていく。


 行き止まりは広い部屋だ。


 上り階段から外に出れそうだ! ……あ、無理。


 光……、苦手。


 感覚だけど外に出るとよくない? 本能もやめておけと言っている。


 外の世界か、今さらだけど、ここが現代世界のどこかってわけじゃないよね。


 スライムもそうだけど、魔影とか不思議生物すぎて発見されたら国が放置しないだろ――


 あーあ、現代社会だったらオフィスに入り込んで、可愛い女の子をじっくり眺めたり、社長のネガティブシーン――あるのか? とか見れたのにな。


――待てよ、この世界にも女の子いるはず。


 エルフとかケモ耳っ娘とかもいるかも……、いや、いてくれよっ!!


 ということで、俺の使命は、魔素を集めることじゃない。


 可愛い女の子を探すことだ! あん? 本能はおだまれください。


 やべぇ、影に入れば女の子のどきどき生着替えも、ぷるぷるおっぱいに、慎ましいおっぱい、なんならスカートの中の秘密を誰にもバレずにじっくり堪能することが楽勝じゃないかよ!!

 

 常日頃から思ってた、ぺったんこが装備している乳バンドを外すとどうなるのか?


 逆に、乳バンドにキャミ&ニットでブーストしたおっぱいがブーストなしだとどうなるのか?


 そう、女の子の秘密を知ることができる!! 転生ばんざーい!!


 この世界に三崎さんのおっぱいはないけれど、まだ見ぬおっぱいが俺を待っている。


 そして、許されるなら触っちゃうことも出来るんじゃないか?


 目指せ! 実体化っ!!


 うおおぉ! テンション上がってきたぜ。


 よし、外に出たい! 光対策をしなければ。


 可愛い女の子の影に入って、あんなことやこんなことを……ぐふふ。


 最後は実体化して成人誌展開。


 本能が呆れている気がするけど、それは気のせい!!


 地味で目立たなかった(モブ)が、この世界で妄想のために好き勝手に生きる。



 勇者(チート)魔王(ラスボス)なんてなりたくない――ノンコミット!!


 俺はっ! だらだら楽して生きていくっ!!


 ひゃっほー!!




◇◇◇




 うはー、めっちゃ一人ではしゃいでしまった。


 冷静になるとすっごく恥ずかしい。


 そもそも異世界にブラとかニットがあると思えない。


 ま、それはいいや。俺の使命は、可愛い女の子を探すことだ。


 そのためにも、苦手な光対策を万全にして外に出ることを目指そう。


 しばらくは、ダンジョン(仮)で修行だな。


 よし、では早速だけど下に向かってみるか! 下り坂だから転がりやすい。


『ぎぎっ!』


『ぎー』


『ぎぎゃ?』


 魔素感知に三つの反応あり。


 スライムよりでかいな――小学校低学年?


 ほぼ裸、頭はつるりん、エルフ耳、目付き鋭く、でかい鼻、乾いたヨダレ跡がてろてろついた口、そう、ゴブリンだ。


――何をもってゴブリン認定してるんだよ。


 という疑問は本能が言うからだ、と自問自答する。


 ゴブリン視点だと、黒い塊が転がってきたってところか? 【影収納】――


『『『ぎっ?』』』


 殴られないように核を避難。


 あいつらからしたら、黒い塊が消えたように見えるはず。


『ぎぃ?』


 首をかしげながらゴブリンAが近づいてきた。


 よし、【影宿り】――


『……ぎ?』


 ゴブリンAの影に入る。


『ぎぎぃっ!』


 どうした兄弟っ!? とゴブリンB……が言っているに違いない。


『ぎぎゃ!』


 わからん、消えた! とゴブリンAが答える。


 ゴブリンCは周囲を警戒中。


 ……、臭い。


 ゴブリンAの足が超臭い!! どんだけ不潔になればこの臭いが出せるのか!


 早くコイツら倒してしまおう、ゴブリンBに【魔素吸収】――


『ぎっ!!』


 ゴブリンBが異変に気づくが、俺の影糸はすでにお前をロックオン!!


 吸うっ!!


 おげええぇぇぇ!! くっさ! 不味い!!


 どぶの臭いで、どぶの味――どんな? 知らん、とにかく臭い!!


 せめて鼻をつまみたい……、おう、鼻がない。


『ぎゃー! ぎゃー!』


 魔素量が多いのか、なかなか吸いきれない。


 ゴブリンBが暴れだした。


 影を叩いたところで俺には効かない。


 でも、暴れると影糸が外れるから吸いずらい!


 【影伸縮】で影を伸ばしてゴブリンBにぐるぐると巻きつく。


 巻きついた影からさらに影糸を追加して……あとは根性!!


 ゴブリンAはゴブリンBに巻きついた影を引き剥がそうとするが、ゴブリンBの肌を引っ掻くだけ。


 あれ? ゴブリンCの姿が見えない――あいつ仲間を見捨てて逃げたのか?


 とにかく吸うぞ! 無の精神で好き嫌いなく吸うのだ! お残しは許さない!!


 吸うっ! おぇ。 吸うっヴぇ、うっぷ……。


『……ぎぃ、ぎ』


 ゴブリンBはその場に倒れこんだ。


 核から魔素だけ吸い取るから外部に傷はない。


――綺麗な顔してるだろ? 死んでるんだぜ。


『ぎぎっ、ぎぎぃ!!』


 ゴブBっ、ゴブBいぃ!!って感じか。


 ……なんとか、ゴブリンBを倒せたか。


 あー、まじ吐きそう――


『ぎー!!』


 なんだっ!? ゴブリンAが急に走り出した。


 俺から逃げようとしているのか?


 ふははっ、無駄だ。


 お前は自分の影から逃げられると思うのか!!


 って余裕かましてたら、ゴブリンAは外に向かって走っていた。


 やべぇ、外はまだ心の準備が!! くそ、止められない!


 もう階段が目の前まで迫ってる!! 【影宿り】解除――


 ふう、なんとか階段の手前で離脱できた。


 あぶねー。


 ゴブリンは臭くて不味くて、そして厄介――グリル厄介で上手に調理してほしい。


 ……なんか疲れた、さっさと転がって俺の部屋に帰ろう。


――熱っ!! 【影収納】――


 とっさに核を収納したけど、核があった場所に松明が落ちてる。


 油がよく染みてるのか燃え盛っている――誰かが俺に投げつけたのか?


 む! あいつか――


『ぎぎゃ』


 逃げたと思ったゴブリンCが戻ってきた! しかも――


『ぎー!!』


『ぎぃぎぃ』


『ぎぎぃ!!』


 ……群れで。


 松明持ちのゴブリンが俺を取り囲んでる。


 コイツら視点だと落ちた松明の下に黒い染みが見えてる状態か。


 松明の炎で周囲の暗がりを潰された。


 くそ、このままだとヤバい――本能が警告する。


 とりあえず松明の下に【影宿り】……、えっ!?


【影宿り】……本体が触れている()()の影に入り込むことができる


 うわっ! もっとちゃんと検討しておけば良かった!!


――反省は後だ。


 じわじわと包囲が狭くなってきたぞ。


 影宿りができないとなると、核を出して転がるしかない。


 そして、コイツらはそれを待っているに違いない。


 【影伸縮】――影をゴブリンに近づけると、『げぎゃっ』っと松明を前に出して自分の影を背後に隠しやがる。


 それじゃ……。 【魔素吸収】――


 だめだ、影糸が体につく前に松明で照らされると影糸が消えてしまう。


『ぎゃぎゃ』


『『『ぎぎぃ』』


 翻訳する余裕がないけど、無駄無駄とか話してそう。

 

 コイツらの魔影対策、完璧すぎじゃね? めっちゃ動きがいいんだけど!?


 

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