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あやしい影に転生しました ~自己主張できない周囲に流され系だった不遇モブが、異世界デビューで思いつくまま気の向くままに投げっぱなしジャーマンする話~  作者: yatacrow
第二章 あやしい知り合いが増えました

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第28話 あやしい液体


 ラァブと別れ、俺たちはダンジョン攻略依頼を受けるために町まで戻ってきた。


 町ではクラーケンの目撃情報や夜通し続いた謎の地響きが話題になっているみたいだ。


――パ、イ、ル、バカァーンっ!! あぁん! 手が荒れちゃうん!!


 ラァブには触手ドリルでダンジョンのあった場所から沖の方に掘り進ませて、そこから岩礁地帯までゆっくりカーブをつけるように指示しておいた。


 適度に広い場所を用意させて、シャドスペ内で暴れ狂ってる魔物たちを放流しておけばダンジョンっぽく見えるって寸法だ。


『マスター、ラァブさんが半魚人やシーサーペントに攻撃されてましたよ』


『超回復あるし大丈夫! 攻撃されながらでもセイレーンのところまで掘れるだろ』


『平穏に暮らしているセイレーンからしたらいい迷惑です』


『悪質なモンスタートレインになるのか? まあ、連れていくのはラァブだし、交渉もラァブがやるから俺は問題ない。ほら、そろそろ時間だからギルドに行こうぜ』


『初対面の方に、あれだけ丸投げするマスターは大物と呼ぶべきでしょうか……』


 さあ? 何でもしてくれるって言ってたし、失敗しても俺は困らないからな。


 それより、俺にはこれから大事な聖戦があるんだ。


『ソニア、ギルドに着いたら別行動な』


『……分かりました』


 ソニアから何かを諦めている返事が来た――諦めないで! byマーヤーmiki。




◇◇◇




 ということで俺は今、ギルド内の天井に潜んでいる。


 あいつらを助けたい、それだけだ。


『マスター、何をなされるんですか? もうすぐ始まります、出来れば大人しくしてください』


 そんなに俺が近くにいないのが不安なのか、今は集中しているから後で相手してやろう。


『……ちっ!』


 舌打ちされた!? いかん、集中、集中――


 チャンスは一回だ、これだけの人数が集まっている前で、あいつらを解放することが出来れば……、もう逃げることはできないぞ。


――あとは“その時”を待つだけだ。


『マスター、ほら外に可愛い女冒険者がいましたよ』


 ソニアが俺の集中力を削ぎに来るんだけど……。


 可愛い女冒険者……、ふっ、さすがソニア、俺の琴線に触れるキーワードをチョイスするじゃないか。


 だが、古今東西、女の可愛いと某国のもう核施設は作らないという言葉ほど信用できないものはない。


 ちなみに、なんで外なのかというと、今回集まった冒険者たちが多すぎてギルド内に入りきれない状態だからだ。


 とりあえず、ダンジョン攻略隊の説明を受けるため、参加パーティーの代表が何名かとソロの冒険者たちが優先してギルド内に入っていて男臭い。


「がははっ! 朝っぱらから結構集まってんなぁ!」


「久しぶりです、マッスゥさん、相変わらず元気そうですね! 引退するのが早かったんじゃないですか?」


 暗めの赤い髪をスライムさんジェルでオールバックにがっちり固めた三十手前のイケメン登場、爽やかすぎるぞ!


 背も高く、細めだがしっかりした体型で、鉄の胸当てに赤黒いズボン、腰には長剣を下げている――ちっ! ちょっと格好いいと思ってしまった。


「がははっ! なんだよ、誰かと思えばベルトンじゃねぇか! ギルドマスターも人が悪いな、Aランク冒険者が誰かって事は教えてくれなかったんだよ」


 マッスゥの驚く顔が見たかったとか、茶目っ気たっぷりのマスターだな。


 ライガンだっけ? ガチムチのもじゃもじゃ好きか、マッスゥは重度のロリコンだから報われぬ恋になりそう――ラァブを押しつけられないか検討しておこう。


「あー、だからマッスゥさんはびっくりしたんですね。いやぁ、すみませんね。ダンジョン攻略の話の前に声かけちゃって! 皆もすまないな」


 そうだぞ、時間は貴重なんだ軽めの謝罪で許されると思ってるのか!


 なあ、みんなぁ、こいつに文句言ってやれ!


「ベルトンさんはシータウンから王都で成り上がった俺たちの憧れだ、誰もそんなこと気にしねぇぜ」


「そうだ、そうだ!」


 裏切りのシータウン――


『ベルトンさんはシータウン出身で、この町では特に人気があるんですよ』


 そうかよ、誰か俺の味方はいないのか!?


「そうだな、そこは構わない。だが、マッスゥさん、時間は貴重だ。そろそろ依頼内容を確認してもいいか?」


 おっ! なんか雰囲気のある壮年の男が出てきたぞ――さらっと棘あるな。


「がははっ! お前さんは“ウインドダガー”のニックだな? すまんな、つい久しぶりではしゃいじまった。今ここに集まっているのはダンジョン攻略に参加するためだよな。――実は依頼の話をする前に少しお前らに相談があるんだ」


「相談……ですか? どうしたんですか?」


「……手短に頼む」


 ベルトンやシータウン組とニックは少し温度差があるな。


『ニックさんは南部を中心に活躍している冒険者で、結構忙しい方なんです』


 ウィキソニアが教えてくれた。


「がははっ! わかったぜ! 相談ってのはギルドマスターからの緊急依頼の件だ――」


 俺たちがシータウンに着いたのと入れ違いで、ライガンたちはムーンの町の支援に向かったらしい。


 しかし、ムーンの町との中間地点にあるヤック村は、宿だけを残してデビルプラントに侵食されていたんだと。


『ん? ヤック村なんかあったっけ? デビルプラントは覚えてるんだけどな』


『えっと、マスターが飲み込んだ村がヤック村です』


『ああ、宿だけ残した村か!』


 デビルプラントの繁殖力はすごいな。


 さて、続きを――


 宿の主人の話だと、ムーンの町の商人ギリアムが王都に向かう途中で宿泊するまでは、村は何事もなく、村人たちも普通に生活をしていたそうだ。


 商人ギリアムは魔物に襲われたと言って、お供も護衛の冒険者もつけず、ぼろぼろの状態で泊まり、翌朝、一人でふらふらと馬車に乗り込み、村を出ていったそうだ――正確には俺が卒倒しそうになったギリアムを影傀儡で操って馬車に乗せてやったんだけどな。


 宿の主人が村の異常に気づいたのはそのあとだった。


 酒の配達時間になっても、誰も来ないのだ。


 心配になった主人が外の様子を見ると、ヤック村はデビルプラントがぎちぎちと謎の音を鳴らす小さな森に変わっていたそうだ。


『怖い話だよなぁ……』


『…………』


 マッスゥからの相談とは、海のダンジョン攻略で集まっている冒険者たちの中から、デビルプラント退治とそのままムーンの町まで一緒に行ってくれる有志を募りたいということだった。


「じゃあ! それは俺たちが――」


「がははっ! ベルトン、お前さんはダンジョン攻略だ。そっちの依頼は親善大使や国からの依頼だ、悪いがAランクのお前さんは外せない」


「くっ!」


 まあ、ダンジョンの海坊主退治はAランク冒険者がいないと厳しいんだろうし、国としてもこのまま手をこまねいていれば外交上も問題が出てくるはず。


 一刻も早く解決してもらいたいんだろう――もう解決してるんだけど……。


「がははっ! すまねぇな、優先順位は“海のダンジョン”だ。お前さんたち“ライジング”を中心に攻略隊は編成する予定だ。そこで、デビルプラント退治の方に行ってくれる奴はいないかっ?」


 すっと一歩前に出てきたのは、ニックだった。


「マッスゥさん、改めて名乗るが“ウインドダガー”のリーダーをやっているニックだ。デビルプラント退治の報酬やムーンの町までの旅費はどうなっている?」


 こんなときに金の話かよっ! って誰か言わないの? あ、言わないのか。


『冒険者も生活がありますし、仲間を納得させるためにも必要なことなんでしょう』


「はい、依頼内容については、私から説明いたします」


 来たっ! コマリコさん登場――お前を待っていた。


 緊急依頼の報酬はダンジョン攻略隊の参加報酬と変わらないようにするし、旅費もギルドが負担するとのこと。


 ちなみに、ダンジョン攻略の参加報酬は一律で、魔物との戦闘回数や階層ボスとの戦闘時の貢献度で報酬が上乗せされるシステムらしい。


 だが、そんなことはもうどうでもいい。


 あいつらをあんな窮屈な場所に閉じ込めているコマリコさん、悪いがもう我慢できない。


 行くぜ! 【分解】【消化】【酸】からの【変質】――


 ぽたっ、ぽたっ――


 しゅっ、じゅわじゅわ……。


「がははっ! おい、そりゃちょっと刺激が、その、なぁ……」


 目のやり場に困った感じで、目を逸らすロリコンマッスゥ。


「おい、やっぱりあの話は本当だったのかよ!」


「ぶぶっ! コマリコさんマジすげえっす!」


 淡々と説明と編成をしていたコマリコさんの胸元だけが溶けていく、そう、俺は夢の液体を完成させたのだ! 名付けて“服だけトケール”――


 ふはは! おっぱいは誰のものでもないんだ!!


 例え自分の物であっても、罪なきおっぱいを無理やり狭い檻(胸を小さく見せるブラ)の中に入れて隠す行為は、俺たちおっぱい解放軍が絶対に許さない!!


 適正なサイズは可、かがんだ時に隙間から突起が見えるのは良!!


 最良? それは人それぞれが持っている。


『おっぱい解放軍、参上! もう隠さなくてもいいんだよ?』


 ぼそりとコマリコさんにだけ精神干渉で耳打ちする。


「はい? おっぱ? ……えっ、うそ! きゃああぁぁっ!! ちょっと! 見ないでくださいっ!!」


 両手で胸を隠しながらうずくまるコマリコさん、うん、手ぶらならいいよ。


『…………』


 なに? ソニアの奴があちゃーって額に手をやってる。


「ねえ、まだダンジョンには行かないのかしら? え? 何これ? ――ちょっとあんたは鼻血止めなさいよ、たくっ、これだから男ってのは!」


 うおっ! コマリコさんに集中しすぎて気づかなかった!


 胸元が大きく開いた赤紫のドレスローブ、水晶が先端にはめられた短めの杖を持つ魔法使いのお姉さん、少しきつめの顔をしているが美人だ。


 だが――


『今はチェンジで』


『マスター、どうしてですか? 胸元が開いてコマリコさんよりずっと見やすいですよ』


『そうだな、難しいところだ。色々と持論を話すと長くなるがいいか?』


『ごめんなさい、心底どうでもいいので質問を取り下げます』


 おい、俺の(おっぱい論)を聞けぇ!!


『俺は、元々チラりずむ系穏健派だったんだが、転生をきっかけにチラりずむ系強硬派に鞍替えしたんだよ。何をやっても俺が犯人だとは誰にも気づかれないからな。だから、最初からオープンのおっぱいも好きだけど、今はコマリコさんを堪能したい気分だ』


 ちなみに、触る場合は大小平等派(いいとこ取り)となる。


『ダンジョン攻略には、ベルトンさんのパーティーとCランク、荷物持ちにDランクの冒険者で編成するみたいですね。緊急依頼はニックさんのパーティーが引き受けました』


 気持ちいいぐらいスルーされた!


『ソニア、ちなみにそのお姉さんがドレスで隠してる太ももについてなんだが――』


『マスター、出発するみたいです。行きますよ!』


 …………。


 こうなったら――


『コマリコよ、私はヨウスフィアです。これだけの人数に隠れ巨乳を知られたのです。もう巨乳を隠さなくて良いのですよ、今後は第二ボタンまで外しなさい。巨乳は世界を救います。いいですね? 神の言葉を信じるのです』


「ひっ!? えっ!? ……うそ、今まで聞こえた言葉もヨウスフィア様が……!?」


 あんまりソニアがスルーするので、とりあえずコマリコさんのフォローを入れておいた。


――また会える日が楽しみだ。

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